愛媛県立子ども療育センター 愛媛県発達障害者支援センターあい・ゆう所長
森本 武彦
子どもと職員が、それぞれの人生が豊かになるのを目標にしています。(森本 武彦)
■日本小児科学会専門医 日本小児神経学会専門医 日本てんかん学会臨床専門医長
Q.愛媛県立子ども療育センターの歴史と特徴を聞かせてください。
愛媛県では昭和27年、今治に現在の子ども療育センターの前身である愛媛整肢療護園が、肢体不自由児施設として開設されました。
重症心身障がい児者の療育には愛媛病院(現愛媛医療センター)と南愛媛病院(現南愛媛療育センター)がその役を担ってきましたが、平成19年4月、新たに愛媛県立子ども療育センターとして、肢体不自由児施設と重症心身障がい児施設の機能に加え、病弱児の入院できる一般病棟が東温市に開設されました。
在宅支援として、障がいのある子供さんを短期間お預かりする短期入所(ショートステイ)、児童発達支援事業及び放課後の児童デイサービス事業、障がい児等療育相談支援事業が始められました。
また、自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障がい、学習障がいなど発達障がいに対応するために、発達障がい者支援センターが併設されました。
当センターはもともと第一養護学校の運動場だった場所に建てられました。それは、子ども療育センターを学校の近くに建設して総合的な療育支援の場所にしようとする県の意図があったからです。学齢児は、隣接する愛媛県立しげのぶ特別支援学校への通学や愛媛県立みなら特別支援学校の訪問教育を受けています。
当施設は、児童福祉法上の機関であり、医療法で規定される病院でもありますが、重症心身障がい児の入所者には成人した方もいます。今後、成人の疾患に対する対応や成人としての余暇の過ごし方など、課題があります。
診療科は現在、小児科医4名、小児整形外科医1名、精神科は隔週で愛媛大から1名、歯科医も1名同じく愛媛大から派遣を受けて対応しています。
Q.在宅支援部門について聞かせてください。
現在、療育の場として児童発達支援事業及び放課後等児童デイサービスを提供しており、2台のリフト付きバス(宝くじ号)で送迎しています。また、障がい児療育支援事業では、療育相談や療育指導などをしています。
現在の入所施設だけでは、この地域の障がい児のニーズには充分に応えられないため、これらの在宅支援部門の充実は今後の大きな課題です。また、発達障がい者支援法に基づく取り組みとして、愛媛県発達障がい者支援センターが併設されており、相談、普及啓発活動、機関支援等を実施しております。
従来見た目でわからなかった自閉性スペクトラム、注意欠陥多動性障がい、学習障がいなどの脳の機能障がいが法制化され広く社会一般に認識されるようになり、地域の関係機関と連携して対応することが増えています。
Q.センターの理念「みんなで育て、みんなが育つ」について。
障がいをもつ子どもが健康に成長するためには医療だけでなく教育、保健、福祉の協力が重要です。単に弱い所を克服するだけでなく、子ども達各々がもつ様々な個性と能力が発揮できるよう、各分野の専門スタッフが協力していくことが求められています。
当センターでは各部署のスタッフが療育に参加しますが、そのことでスタッフ自身も育っていくことが理想です。子どもと職員が、それぞれの人生が豊かになるセンター を目標としています。開設して7年経ちましたが、当センターの能力だけでは限界があり、今後さらに地域と連携を図り、地域で障がい児者を支える仕組みをつくっていく必要があると感じているところです。
Q.この分野を目指す若い人にメッセージをお願いします。
医療従事者であれば、急性期医療など、様々な分野を経験して障がい児医療に取り組んでいただく方が良いかもしれません。最初から障がい児医療にかかわられる場合は学会や色んな機会を利用して視野を広げるといいと思います。
コミュニケーションはとても重要です。家族や他の専門職種の人々とコミュニケーションをとりながら、相互理解を深め協力して課題を解決していけるスタッフを必要としています。
私は小児神経医学が専門で、病院勤務のころは、診察室中心の医療で疾患の治療をめざす医療モデルの中で仕事をしていましたが、障がいを持ちながら生活していく方たちのQOL(quality of life)をどう支えるかをチームで考え実践していく仕事にやりがいと興味深さを感じてここにいます。
最先端の研究や急性期医療も魅力的ですが、比較的新しいこの分野を開拓していくこともやりがいがあると思います。一人でも多くの方が私たちの仲間に加わっていただければ幸いです。