認知症は人間学です

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大悟病院老年期精神疾患センター長 三山吉夫

1962 山口医科大学卒1963 九州大学医学部大学院(医学博士)1970 広島原爆後遺症研究所1973 九州大学医学部講師1978 米国シカゴ大学神経病理学部客員助教授1993 宮崎医科大学精神医学講座教授2002 宮崎大学副学長2003 宮崎医科大学名誉教授2003 大悟病院老年期精神疾患センター長2011 大悟病院認知症疾患医療センター長■受賞:2003 宮崎日々新聞賞科学賞 2013 厚生労働大臣表彰精神保健功労賞2014 読売認知症ケア賞功労賞■著書:脳と精神病( 星和書店分担) 現代精神医学(新薬書店分担)認知症テキストブック( 中外医学社分担) 老年精神医学講座(ワールドプランニング分担)私の臨床精神医学(創元社分担)

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 九大の大学院時代に認知症を選んだのがきっかけで、以来この病気一筋にやっています。

 1964年のことですから、もう50年になります。その当時は認知症と言うのは精神疾患のなかの一つの分野で精神科の専門領域という捉え方が一般的でした。しかしその時の恩師である武谷止孝先生が「これからますます平均寿命も延びるし、高齢化社会では大きな課題になります。さらに認知症は最後に病理解剖で診断確定ができる脳の病気だ」と言われて興味を持ち、研究をはじめました。もう一人の恩師、高松勇雄先生とともに、お二人とも先見の明があったと思います。

 宮崎県には現在、国の政策によって、日向市財光寺の協和病院、宮崎市恒久の野崎病院、そしてこの三股町の大悟病院の3施設に認知症疾患医療センターがあり、この3施設の共通理念は「選ばない、断らない」です。カンファレンスなどで地域への理解も深め、看護師向けに宮崎県からの支援もいただいて認知症を正しく理解してもらう研修会を定期的におこない、看護師、介護士の皆さんが自分の病院や施設に学んだ理解を持ち帰って実践していただけるように目標を設定しています。

 認知症は相談まで半年、診断まで半年。と言われるように、本当にその人が認知症であるか、どうかは判断しにくいことが少なくありません。

 家族の方は悩んだ末に相談に来られます。「昨日のことも忘れています、今まで出来ていたことが出来なくなりました」と言って連れて来られるのですが、周囲の方にはまず「人間が歳を取ることがどういうことなのか」を理解していただきたいのです。

 最近では認知症に対する世間の認識は様変わりし、行動障害をことさらに取り上げ、危機意識をあおるような理解と報道が多く見受けられます。

 2025年には470万人に達するのではないかという推計が伝えられる認知症患者のなかで、狭い意味での認知症の数は、はっきりしないのが現状です。しかも心配される認知症患者の85%以上が80歳以上の後期高齢者です。ナチュラルエイジングか病気かは歳をとるほど判断がむずかしくなります。

 若年性認知症の場合は生活の様子で、また脳を見れば、加齢のためか病気であるかの違いをはっきり見てとることができます。しかし現在問題になっている後期高齢者の認知症では歳をとればとるほど、認知症かその人の老化かの線引きは難しくなってきます。100歳まで長生きすれば、ほぼ70%の方がアルツハイマー型の脳と同じ状態になります。脳萎縮についても、1000g以下になると病気の可能性がありますが、歳をとればとるほど脳萎縮がみられることは自然現象と捉えるべきです。

 認知症と家族から問題視されると、本人も不安になります。病院に来られるほとんどの方が「人間が歳を取ることがどういうことなのか」を周囲から理解されず、むしろ対応のまずさで、うつ病の症状を併発して問題化している場合が少なくありません。

 今は「もの忘れ外来」が盛んですが、あまり時間をかけずに診断して薬を処方して終わりとされるケースが少なくなく、そうすると診断されて薬をもらっても安心や納得がえられません。信頼関係ができていませんから結局薬を飲みません。

 認知症には決定的な治療薬はありません。せいぜい進行を遅らせる薬だけです。まず歳をとるということ自体が、気力・体力が減退し、おっくうになり、反面、周囲に気を使いながら生活していること、気持ちが落ち込みやすい状態にあることを理解して、お年寄りを受け入れてください。

 歳をとれば体の他の部位の病気もあわせて出てきます。自分で生きるという気力が分かれ目になります。誰もが避けて通れない老化からの症状として理解し、笑顔で対応していただきたいのです。その人が慣れ親しんだ土地で笑顔で生活し、人生をおえることの大切さを知っていただきたい。

 高齢になるということは自然に死ぬことでもあります。健康な老化と軽度の認知症の違いに対する看護師や介護士の理解も啓蒙が必要です。

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信頼関係が確立しているので、「研究のために病理解剖に協力してくれる患者さんは多い」と三山吉夫センター長

 認知症は診断が困難なこと、仮に重度の認知症であったとしても認知症患者イコール「わからない人」という決めつけは良くありません。「わからない人」だから周囲の言うとおりにさせる対処ではなく、わかっている部分を介して身の回りのことを支えてあげる、という対応が望ましい。

 あれもこれもさせなくてはならない、ということはやめましょう。例えば入浴拒否などもタイミングをずらしたり見極めたりしながら、本人が納得するように知恵を使って周囲が合わせていくべきです。

 その人にふさわしい歳のとり方を支えるように対応してあげてほしいです。認知症に関して言えば、地域の人や家族も治療者であることを自覚してください。

 私がここで診断する際には、初診に1時間かけ、生活習慣や家での様子をうかがいながら判断します。再診には、30分話を聞くことにしています。現在、認知症がこれほど話題にされながらも専門医と施設がまだ少ないのです。大悟病院は過去、老人病院の閉鎖病棟でした。その立て直しの依頼が私に来まして、建物も造り変えて認知症に特化した施設にしたのです。

 看護師や介護士の皆さんには、認知症ケア専門士の資格が必要な時代が来ています。みとりの問題では、一番に本人、次に家族、最後に医療従事者が納得できる「納得死」を目標に対応しています。

 私の専門は脳の病理学的研究ですから病理解剖して確かな診断を追究することもしっかりやっていきます。


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