地域完結型医療の「指宿モデル」を発信したい

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独立行政法人 国立病院機構 指宿医療センター 院長 田中 康博

1978 鹿児島県立鶴丸高等学校卒 1983 鹿児島大学卒 鹿児島大学医学部附属病院第二内科入局 1991 米国ワシントン大学メディカルセンター留学 1996 鹿児島大学医学部附属病院第二内科助手 2003 鹿児島大学医学部附属病院兼任講師 2007 指宿病院診療部長 2009 同病院長 2013 指宿医療センター病院長

 再建から7年半、2年前には完全黒字化を達成した鹿児島県指宿市の「独立行政法人国立病院機構指宿医療センター」。2016年には新病院建設を予定している。新たな病院の目指すものは、そして黒字運営の現状は...。田中康博院長に聞いた。

―今、目指しているものは

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86歳の患者さんによるちぎり絵の前に座る田中院長。「80歳から始めたそうです。上手ですよね」とほほ笑んだ。

 2016年に、新病院への建て替えを計画しています。今回は救急部と病棟を旧看護学校跡地に建設します。当院は、もともと療養型で、救急など高度医療をするのにあまり適していません。機能的にすることで、私たちももっと力を発揮できると思います。

 これからは地域完結型医療の時代です。田舎だからほどほどでいい、ということは絶対にありません。そのためには核になる病院が絶対に必要で、指宿医療センターは、そこを目指します。

 救急を中心とした医療の核を当院が担い、その周りに医師会を通して一般診療包括ケアシステムができたらと考えています。地域で完結できるものは完結し、できないものは搬送能力を上げて都市型大病院にお願いする形をつくらなければなりません。新しい病院の建設が、単なる田舎の病院の建て替えというだけで終わっては、何もならないと思うんです。これをきっかけに、あらゆる地域医療の問題に対応できるようなシステムをつくりたいと思います。

 指宿の高齢化率は32%。日本の2030年を走っているところです。だから我々がやっているのは、先進医療というより先行医療。鹿児島市から50kmと近すぎない距離ですし、人の流れもつかみやすい。高齢化社会を迎える日本の先行医療の形として「指宿モデル」をつくりませんかと、県や市、医師会の先生たちにも投げかけているところです。

 地域の中核病院をどんな病院にするかということは、ひとつの病院だけで決められる問題ではありません。地域できちっと方針を立てなければ、中途半端な病院をつくり、中途半端な投資をするということになり、何も変わらないと思っています。私たち医療者や行政側は、患者さん本位の視点に立たなければなりませんし、住民の側も、自分たちの健康を守るためにどうしていくかを真剣に考える必要があります。効率のいいコンパクトなまちづくり、健康が維持できるシステムをつくらなければなりません。そんなメッセージを発信していきたいと思っています。

―就任から5年半。2年前には黒字化も達成しました

 再建を始めたころは、職員の中にも、このまま廃院になるのかなという失望感がありました。でも、みんなの気持ちが同じ方向を向くと、ものすごいポテンシャルを見せてくれました。感動しますよね。つぶれるという危機感はなくなり、役に立つ病院になってきたという実感はあります。

―具体的には

 救急を中心に再建を進めてきたこともあって、2007年度の救急車受け入れ数は年間452件だったのが、去年2013年度は850件とかなり上がってきました。救急車出動件数の何%が当院に来ているかという割合は、07年度は25.6%だったのが44.5%にまで増えています。死亡退院数も115人から216人と倍近くになり、それだけ重症な患者さんをみているということがわかると思います。

 救急車が出動して、5回以上連絡しても搬送先が決まらなかった、いわゆる、たらい回しが、指宿地区では2011年度は3件。それに要した時間が平均37分。周辺では30件以上あり、その時60分以上かかっている地区もあります。そういった意味で救急は指宿でありながらいい形ができたかな、と思っています。ドクターヘリの運用で地域でも昼間の救急医療は充実してきました。しかし夜間救急にまったく対応できていない地域も出現しているようです。常時、指宿でもある程度救急ができる形が取れるのが理想的です。

―地域の医療機関との連携は

 当院の二次救急が増えている一方で、一次救急が減っています。それは、医師会の方との分担が非常によくできているからだと思いますね。指宿の医師会は「かかりつけ医が最初にみましょう」という考えが基本になっていて、医師会の先生方がすごくよく診てくれています。当院の時間外患者数の推移を見ても、減ってきています。

 今は夜間急病センターをつくって、人を雇って、という形も増えていますが、田舎ではそれすらできないのが現状で、皆さんが少しずつ協力しないと成り立っていきません。医師会の輪番制度には原則「救急に対応できる」という条件がついているのですが、救急対応が難しい施設も当院が必ずバックアップする体制をとることで、多くの先生に参加してもらえば、1人1人の負担が減りますよね。そういう意味でもいい形だと思います。

―重要なのが人材確保です

 いい人材に来てもらうためには、きっちりと当院で教育をすべきだと思っています。私は、教育のできる病院というのが最終目標。若い人たちが集まってくれる病院になって初めて、本当に病院らしくなったね、と思えるんです。

 地域の医療が都市部と比べて劣っているということは全然ないと思います。扱っている分野が広くなるので、非常にバランスのいい感覚と医療の勘を養うことができます。当病院の研修医は、5年前が1〜2人。今年は11人に増えました。地域に若い人たちが勉強に来てくれるというのはありがたいと思いますし、機能的な病院になれば、より多くの若い人が集まってくれると考えています。

―今後への意気込みは

 地域によって事情は違いますが、「指宿モデル」ができれば、地域完結型のひとつのモデルとなると考えています。自分の病院だけを、どうにかしようということではありません。鹿児島県、そして日本各地でも参考にしてもらえるのではと思います。

 だれかがするかな、と思っていたら何も進まないし、あっという間に時間がたってしまいます。皆さんの協力をいただきながら、医療も地域からいろいろと面白いことを発信できると思います。難問もたくさんありますし、うまくいくかはわからないですが、見ていてもらいたいですね。


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