大学病院で医者をやること

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

大分大学医学部内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座 教授 柴田洋孝

1988 慶應義塾大学医学部卒業1993 慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了「副腎皮質におけるアルドステロン合成チトクロームP-450 の発現調節」1992 国立小児病院小児医療研究センター研究員1993 慶應義塾大学伊勢慶應病院内科 1993 慶應義塾大学助手(医学部内科学) 1994 BaylorCollege of Medicine, Postdoctoral Research Fellow (Bert W.O' Malley 教授)1997 社会保険埼玉中央病院内科医長1998 慶應義塾大学助手(保健管理センター)2000 慶應義塾大学専任講師(保健管理センタ-)兼担講師(医学部内科学)2005 日本大学医学部生化学非常勤講師2007 慶應義塾大学専任講師(医学部内科学)2013 大分大学医学部内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座教授2013 大分大学医学部学部長補佐(東九州メディカルバレー構想担当)2014 大分大学医学部附属病院血液浄化センター副センター長
■受賞歴1997 Travel Grant Award, The 79th Annual Meeting of the Endocrine Society1999 Travel Grant Award, The 81st Annual Meeting of the Endocrine Society2000 Travel Grant Award, The 11th International Society of Endocrinology2002 第12 回臨床内分泌代謝Update 優秀演題2003 Travel Grant Award, The 85th Annual Meeting of the Endocrine Society2004 日本内分泌学会研究奨励賞「副腎皮質および副腎皮質腺腫におけるステロイド産生機構:核内受容体および転写共役因子からの検討」2005 第5回東京アルドステロンフォーラムTOKYO ALDOSTERONE AWARD「 核内受容体 COUP-TFIによるアルドステロン産生調節機構に関する検討」2006 第43 回全国大学保健管理研究集会 一般研究発表部門優秀演題 「踵骨超音波骨量測定法を用いたスクリーニング、ビスフォスフォネート治療効果について」
■研究分野1原発性アルドステロン症の新たな病型診断法の確立と予後調査2治療抵抗性高血圧におけるミネラルコルチコイド受容体活性化機構の解明3高血圧患者における選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が有効な生体マーカーの臨床研究4肥満症の病態におけるアディポサイトカインとミネラルコルチコイド受容体活性化機構の解明5摂食と中枢神経系におけるミネラルコルチコイド受容体活性の関連の解明

 慶應義塾を創立した福澤諭吉は、儀礼的な慣習や常識にとらわれることを嫌い、飾らず気さくで、行動する人物であった。中学から慶應で学び、卒業後も長く勤務した柴田洋孝教授も内にその慶應スピリッツを確実に受け継いでいる印象を持った。

―講座の特徴を教えてください。

k8-1.jpg

 昨年6月に私が教授に就任する以前、大分大学医学部は番号制で、当講座は第一内科という名称でした。

 講座再編とともに5分野あった診療科は3分野の内分泌代謝・膠原病・腎臓内科という形式になり、その他の消化器内科、循環器の2分野はそれぞれ単科として独立しました。

 大分県は人口10万人あたりの人工透析の割合がワーストワンなのです。長寿だと割合が増えるのですが、特にそういうわけでもありません。

 ただ、この3分野の病気がそれぞれ併発して人工透析が必要になるケースは多いです。そのため私の講座では臨床の症例は特に専門分けをせずに、常に3分野あわせて全て共有して合同でカンファレンスをしています。

 つまり常にカンファレンスの3分の2は専門外の人がいるようなやり方です。そうすることが刺激になって発見や興味も広がります。

 来年の4月から日本内科学会の内科専門医の制度変更で、これまでの内科認定医から内科専門医へという二段階の資格が一本化されます。これは誰でも取らなくてはならない資格なので、この内科専門医が、医師としてクリアしなければならない大きな目標となります。

 私が危惧するのは、資格重視の現代では特に、資格取得後の医師の目的、向上心、研究意欲が削がれてしまうのではないか、ということです。

 早い段階で研究活動を行なう、研究者として成果をあげるため、努力をする期間を持つ、ということは医師の成熟という点で見れば重要な訓練です。

 研究者として成果をあげるには多くの時間を要します。

 仮説を立て、基礎研究を経て原因を究明し、論文発表に至るまでに匿名の査読者数名の批判に対して説得し、証明しなくてはならない妥協のないプロセスですから、その過程で自信と経験が得られる場合が多く、医師としての成熟に非常に有益です。

 研究の期間を経験した医師は我慢強く、患者に対する治療説明の仕方もわかりやすい。医師として常にニュートラルな気持ちをコントロールする力も身につきます。

―ご自身も研究留学のご経験があるそうですね。

k8-2.jpg

慶應義塾と同じ時を刻む柱時計の前で。

 10通手紙を書き送ったなかで1通だけ、アメリカのヒューストンにあるベイラー医科大学のBertW.O' Malley 教授からすぐにPostdoctoral Fellowとして雇ってくれるという返事がもらえました。

 2年半の研究留学は成果だけを求められる究極の結果主義でした。何も持たず、何もわからず、医療界最前線の研究室に飛び込みましたが、あのような研究室で働く研究者は一生走り続けなくてはなりません。

 そのようなシビアな現場で競争に打ち勝って結果を出さなくてはならない重圧は人を鍛えますし、あきらめず求め続ける状況に身を置き続けることで、医師と患者の人間関係の組み立て方も大きく変わります。

 研究者としてベイラー大学で働いた期間の9割は苦しい毎日でした。

 留学期間を乗り越えられたモチベーションは、現在では常識になっているアルドステロンというホルモンへの思い入れです。アルドステロンは脳梗塞に深く関わるホルモンで、このホルモンが多く作られると脳梗塞や、くも膜下出血の発症率がとても高くなります。

 私はアルドステロンが多くつくられて高血圧になる原発性アルドステロン症の患者さんの副腎腫瘍からアルドステロンをつくる酵素のたんぱく質を初めて単離することに成功して、その酵素の調節についての検討を行ない論文を発表しました。ベイラー大学では滞在期間最後に、これがうまくいかなければ期間満了でそのまま帰国という状況で始めたプロジェクトで遺伝子の情報が読み込まれるのを抑制する因子を明らかにした論文と、非常に注目されていたその領域についての総説論文を発表できました。

―柴田教室に集まる若い人たちに望むことは。

 専門性、得意な分野を定めて、この大分大学でしかできない研究課題を見つけ、そこに価値を見出して、思い入れを持って大分大学に残って研究活動をしたい、と思ってチャレンジしてもらいたいです。

 大分大学の私の講座は伝統的に肥満症に関しての研究成果が多い大学です。肥満は見た目、不必要な脂肪がついているという状態ですが、脂肪からさまざまな物質が出て、それが原因で炎症が起こり、分泌されるホルモンが変わるという病気です。肥満に関しても、この講座でさらに深く歴史を刻んでいきたいと考えています。

 私のもとに来る研修医それぞれが将来どうなりたいのか、情熱を注げる専門の病気を見つけて長く探求していけるよう、提案できる限りの扉を開いて励まし、見守っていきたいです。

―趣味はなんですか。

 ランニングです。東京では新宿シティハーフマラソンで10キロを走っていました。大分大学では陸上競技部の顧問を前教授から引き継ぎました。九州の温泉巡りも楽しみです。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る