県立病院になったわけではないんです

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地方独立行政法人 徳島県鳴門病院  院長荒瀬 誠治

荒瀬 誠治(あらせ せいじ) 1974 徳島大学卒 同大学医学部皮膚科入局 1976 同大学医学部附属病院皮膚科助手 大阪大学放射線基礎医学教室長期出張 1978 徳島市民病院皮膚科 1979 徳島大学医学部皮膚科学助手 1980 同講師 1981 高知県立中央病院皮膚科 1983 徳島大学医学部皮膚科学講師 1984 西ドイツ・マンハイム医学校皮膚科学留学 1985 徳島大学医学部皮膚科学講師 1991 同教授 2010 健康保険鳴門病院院長 2013 地方独立法人徳島県鳴門病院院長
■資格 医学博士 皮膚科専門医 ■趣味 サッカー ゴルフ 肉とワインと果物を食べること ■宝物 家族

 社会保険病院・厚生年金病院および船員保険会による船舶病院は、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)に運営を受託した。RFOが管轄した多くの病院は今年4月より、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)に移管がなされている。しかし徳島県鳴門市の社会保険鳴門病院は平成24年12月、看護専門学校とともにRFOから徳島県に売却され、翌年4月から地方独立行政法人になった。その時名称を徳島県鳴門病院に改めている。

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病院屋上から小鳴門橋・大毛島を背景に撮影。荒瀬院長は徳島大学皮膚科学の教授時代、紫外線による発癌の仕組みに大きな興味を持ち、研究したそうだ。

 よく勘違いされるのですが、県立病院になったわけではなく、地方独立行政法人になったんですよ。独立採算制で、県から資金援助を受けているわけではありません。私達は公務員扱いの職員ではありません。徳島県地方公務員とは、給与体系も何もかもが違います。その分、定員法の縛りはありません。

 RFOは不要な施設を廃止・売却する目的で作られていましたから、当院もどうなるか分かりませんでした。病院なので簡単に売ることはできないから、何か受け皿になる組織を作るだろうという予想はありましたよ。しかしできるかどうかも分からない受け皿が、どんな組織かは分かりません。また、すべての病院が受け皿に移行できるのかも分かりませんでした。当院は黒字を多く出している病院ではなかったので、廃止の可能性も当時は心配されていました。そのころ、徳島県から経営母体になりたいという申し入れがあったのです。「病院機能を縮小しないこと」と「雇用は100%守る」ことを条件に、以後不動産と設備全てが徳島県の所属になりました。

 県内を見ると、吉野川の南側は大学を中心に医療が充実していますが、北側には救急をきちんとやるような急性期病院は当院のほかにありません。県北部と県中央部は距離的にはそんなに遠くありませんが、大きな吉野川をはさんで、公共交通機関も十分には整備されておらず、往来は簡単ではありません。

 当院のほかに売却されたのは、東北薬科大が買い取った東北厚生年金病院と、川崎市の医療法人が買った社会保険川崎病院があります。東北薬科大は今度医学部を新設することが決まりましたし、病院の経営も安定していると思います。川崎市の方はDPC対象の高度な急性期病院だったのですが、療養病床中心の病院に方向転換させたようです。急性期病院を運営するのは簡単ではないので仕方ないでしょう。

 現在産科医師は4人で鳴門地方のお産の7割強を担っています。また、2人の小児科医も協力してNICUに準ずる医療も可能です。麻酔科は常勤3人とパートで仕事をしていますが、手いっぱいの状態で、手術が多い病院です。

 私が赴任してすぐに地域医療支援病院の指定を受けましたが、これも当時は高松市内にまで行かなければありませんでした。徳島県北東部の医療の大きな部分を引き受けているだけでなく、香川県南部や兵庫県淡路島の南側からの患者さんも多い。そういうことが県に評価されたのでしょう。仮に廃止ということになったり、妙な組織に売られた場合、県内の医療全体に影響を及ぼしたと思います。

 現在鳴門市は2万6千世帯で人口が6万人。この規模の町で急性期医療を効率的に充実させようと思ったら、当院は大きすぎるかもしれません。しかし市民病院という側面を考えれば、このぐらいでも良いかなと思います。地域医療支援病院なので、低い紹介率では問題ですが、鳴門市の医療基盤で紹介率9割というのは考えられない。外来に人員が必要ですね。初診時選定療養費は、取らないとやっていけないので貰っていますが、県内で一番安いと思います。

 鳴門市は、かつては鳴門競艇からの収入のため、教育や福祉が西日本で1番充実していた町でした。今重賞レースができるように改装中ですから、今後また収入が増え、人口が増えるかも知れません。

 地方独法化の困った点は、他の社会保険病院との連携がなくなったということです。

 これまでは大きな組織に所属していることで、自院の立ち位置が客観的に理解できました。物品も組織で大量に購入して、必要なものを受け取るだけでしたが、今は自分たちで薬価の交渉などをしなければなりません。全国社会保険協会連合会という大きな組織の力を、使えなくなったということがデメリットです。しかしこのデメリットは、職員の努力であまり感じなくなっています。これは職員に感謝すべきところでしょう。

 私が最も気を付けなければいけないのは、職員に「JCHOに移行した方が良かったのではないか」という思いを抱かせることです。当院の職員が貧乏くじを引いたと思うようなことは、絶対に良くありません。だから私には、職場として現病院が働きやすいと思っていただけるための、最大限の努力が求められていると思います。自分の職場環境に不自由がなければ、他院がうまくいっていても関係ないことです。

 病院の経営が比較的うまくいっているので、看護師の募集が多く、時に選定に苦労する事があります。

 附属の看護学校からの就職希望者が多いのですが、だからといって他校からの希望者に門戸を開かないわけにはいきません。

 直接教えた子たちなので、希望者は全員当院で働いてほしいのですが、それでは看護師が増えすぎてしまうので、断腸の思いで断っています。私は校長ですから、なかなかつらいんですよ。


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