急性期のトップランナーであり続けるために

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JCI 取得 世界に認められた病院の仲間入り
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院 院長 副島 秀久

副島 秀久 (そえじま ひでひさ)1975 年熊本大学医学部卒業後、同泌尿器科入局。81 年同大学大学院修了後同泌尿器科助手、86 年米ミシガン大学腎生理学教室留学、88 年熊本大学医学部泌尿器科講師、89 年済生会熊本病院人工透析科医長、91 年同腎泌尿器センター部長、01 年同管理運営部長、02 年TQM センター長・副院長、09 年院長就任。

―病院の特徴を教えてください。

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 病床数400の中規模病院です。総合病院より絞り込んだ診療科で運営しており、方針として重症、救急を中心にした緊急性の高い重要臓器の疾病を中心に、高レベルの診療を行うのが我々の理念です。

 以前は熊本城の近くにありましたが、近見の地に移転してからも同様の診療方針をとっています。

 救急、重症患者が我々の守備範囲です。地域からもそのように認識されていると思います。救急搬送は、全国でもトップレベルで年間約9千台近くの搬送があります。中心になるのが心臓、脳、交通外傷です。これだけの搬送があるとスタッフに大きな負担がかかると思いますが、スタッフ一丸となって頑張ってくれています。

―JCI認証を取得しました。

 医療の質と安全において国際標準を満たすことを示す、国際医療機能評価であるJCIの認証を昨年11月に受けました。

 取得を目指したきっかけは、第三者の目から見て評価してもらうこと。自己満足だけでは病院はよくなりません。第三者から指摘されて初めて気づくこともあります。

 日本の医療機能評価に比べてJCIの取得はハードルが高いのですが、我々も含めた日本の病院が国際標準を目指すべきではないかと思い、スタッフ一丸で取り組んだ結果、認証を受けることができました。準備に約2年を費やし、全スタッフにトレーニングを行ないました。蘇生訓練、患者さんの名前と生年月日の確認など。建物を新築したなど派手なものはありませんが、仕組みががらりと変わりました。JCI認証は世界的に認められた一流病院の仲間入りです。スタッフは大変な思いをし、トレーニング、教育、eラーニングを含め相当な負担があったと思いますが得たものは大きかったのではないでしょうか。

 スタッフを海外視察、研修に出していますが、JCIを取得したことで、自信を持って研修などに臨んでいるようです。

 このような取り組みは精神的にも肉体的にも負担がかかりますが、苦しい思いをしたからこそ得られるものも大きいと考えています。

―TAVI、ダヴィンチなどの先進医療について。

 手術方法は日進月歩で、従来の開腹手術から内視鏡、ロボットへと低侵襲で精密な手術が主流になりつつあります。我々もその流れに乗り遅れまいと導入しました。患者さんの体の負担が少なく、安全で合併症も少なく喜ばれています。

 医療機器導入にあたっては導入の是非を問う検討プロジェクトを立ち上げ、客観的な視点で、本当に地域に必要とされているかどうか、採算を取るためにどれだけの症例数が必要かなどを分析して判断します。導入が決まれば該当する診療科が運用プロジェクトを立ち上げ、運用方法、広報活動の手段などを決定します。

 新しいことに取り組み、明確な方向性を打ち出すことで、病院が向かうべき道を示すことになり、向上心がある人が集まってくれています。それらの人に積極的に学びの場を提供することが我々の役割の一つだと考えています。

―人材育成について心がけていることは。

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 人材育成は最重要視しています。モチベーションの上げ方はいろいろあります。給料を上げる、手当をつけるなどお金に替えると一時的で、効果は低減していきます。それよりも教育に力を注いでいます。その人たちが勉強して戻ってきて新たな知識や技術を病院に還元してくれることで、2倍3倍の価値に増幅します。ですから積極的に海外研修、専門医の取得をバックアップしています。

 病院が大きく変わり始めたのは、平成7年に幹部を全員海外研修に行かせたころからです。目からウロコの思いで皆さん帰ってきて、その後のクリニカルパスの導入など新しい取り組みへとつながり、組織に浸透していきました。以前より人材育成に力を入れてきたので、新しい取り組みを受け入れる素地があったのでしょう。

 明治維新で西洋文明がすんなり受け入れられたのは、江戸時代から日本の教育体制が整備されていたからで、それと似ているとも言えますね。教育は永続性が求められるので、今後も引き続き力を注いでいくつもりです。

 院長に就任して最初に取り組んだのが、保育園の設置です。6名の園児からスタートして、現在は約60名の園児を預かっています。人数が増えて手狭になってきたので増設を予定しています。女性が安心して働ける環境を作ることが、当院だけでなく日本の社会全体で取り組むべき課題でしょう。看護師の復職率が高くなる、女性医師が働きやすい環境になる、子供がいることで病院の雰囲気が明るくなります。保育園では、英会話や水泳を教えるなどして教育的付加価値を付けるように心がけています。

 かつて女性医師は、結婚や出産に伴ってブランクができ、復帰できずにそのまま家庭に入るケースが多かったのですが、子育てをしながらキャリア形成の支援をしないと医療界の損失です。負担はそれぞれの能力に応じて分担する考え方が、これからは重要になるのではないでしょうか。

―医師を志したきっかけは。

 幼いころから身体が弱くて病院に通って、母も病気がちでした。当時は医療側に若干の不信感があったので、それなら自分が医師になって変えてやろうとの思いがありました。医師になると医療者側のいろいろな事情が理解できました。院長になってからは持続可能性のある医療制度を作ることをいつも考えています。

―趣味を教えてください。

 ギターやフルートの演奏をしています。フルートは懇親会の時には自ら出演して演奏することもあります。好きなことをするのが一番のストレス解消になります。

 自宅に暖炉があり、木を切って薪を作る生活を楽しみつつ、苦しんでもいます。体調が悪い時に木を切るのは大変ですよ。「体験し、経験をしないと物事の本質は分からない」と皆さんに言っています。暖炉の前でくつろいでいる住宅雑誌の写真を見るとあこがれるかもしれません。しかし、それは最終的な成果で、そこに至るプロセスと維持管理が大変です。煙突掃除はシーズン3回以上しなければいけない、薪は3年以上乾燥させないといけない。薪割りはものすごくハードワークです。そこまで苦しい思いをするなら暖房器具を買えばいいではないかという人がいますが、それでは世界を理解することにはつながりません。エネルギーを作る大変さが理解できるので、資源を大切にしなければならないと実感します。

 自分を変えるのは一人旅と読書と、病気だと思います。若い人には「書を持って旅に出よ」と言っています。医師は、親も医師であるケースが多く、医療界は狭い社会です。しかしそれだけが世界だと錯覚してしまいます。世界はもっと広く、多様な価値観があります。それを理解しなければなりません。カブトムシについて知りたい時に成虫を買ってくるのでは理解につながりません。幼虫から育て上げるプロセスを理解することが重要ですね。「人格の差は苦労の差」という言葉もあります。順風満帆の人生では人は成長しません。若い人にはできるだけ多くの経験と苦労をしてほしいですね。

―今後の展望は。

 理念に掲げている「救急医療」「高度医療」「地域医療と予防医学」「医療人の育成」は当面変わりませんし、急性期のトップランナーとしての立場を維持できるようにしていかなければなりません。何をやりたいか以上に、社会が何を求めているかを考えないといけません。医療提供体制が日々変化していくなかで、我々の立場も変わっていきます。柔軟に自分の形を変えていく強さが必要と思っています。


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