充実した医療を継続させるために

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北九州市医師会 会長 下河邉 智久

しもこうべ・ともひさ=1972 久留米大学医学部卒業 第2 外科教室医局入局 1980 北九州中央病院外科部長 1982 久留米大学医学部第2 外科教室医局長 1988 医療法人共愛会共立病院院長 1996 北九州市医師会理事 1998 医療法人共愛会理事長 2000 福岡県医師会理事 2002 北九州市戸畑区医師会会長 北九州市戸畑看護専門学校校長 2006 北九州市医師会副会長 2010 社会医療法人共愛会理事長(現在) 2014 北九州市医師会会長(現在)
■救急医療関係功労者知事表彰 福岡県公衆衛生事業功労者表彰 福岡県労働衛生事業功労者知事表彰(福岡県)  福岡県産業医学協議会産業保健事業功労者表彰(福岡県産業医学協議会) 公衆衛生事業功労者厚生労働大臣表彰(厚生労働省)

新執行部体制の船出に期待します。

 北九州市医師会は今年6月26日に第94回定時代議員会を開き、新執行部を選んだ。

 下河邉智久新会長に、北九州市医師会の特色を生かしながら地域医療をどう守っていくかを聞いた。

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北九州市医師会 会長 下河邉 智久

Q.現在の医療を取り巻く現状をどう考えますか。

 現在の日本の社会保障制度は、国民皆保険をはじめとして、その多くが経済や人口とも右肩上がりだった高度経済成長期に作られたものであり、少子高齢化がこれだけ進行し、また低成長経済が常態化した現代社会にはなじまないものとなっています。

 費用と負担の関係や給付内容等、現代社会にふさわしい21世紀型の社会保障制度への転換を急がなければならないと思います。

 医師会というと国民の方々からは、改革には何でも反対というイメージがあるのかも知れませんが、先日2期目を迎えた日本医師会の横倉会長は、就任挨拶の中で3つの方針を掲げられ、そのうちのひとつとして、「将来の医療を責任ある立場から考える」と述べられました。

 国の債務が1千兆円を超え、財政再建が国際公約となっている今、我々医療の提供側も必要であるならば、時に痛みを伴う改革を自ら提言し、実現していかなければならない時代であると思っています。

 ただ、現在、政府が社会保障制度改革の検討を行うためのベースとなっている「経済財政諮問会議」や「財政制度等審議会」「規制改革会議」「産業競争力会議」といった審議会等は、財界や経済学者らが中心となったものであり、財政至上のみの観点からことを進めようとすると社会保障の本質を見誤ることになると思います。

 また、よく地域ごとの医療費が比べられ、本市は他地区に比べて高いといったことが問題になりますが、受診者の側に立てば、それだけ充実した医療が受けられており、もしかしたら他地区では助からなかった命やハンデを負ったようなケースが健康でいられたということもあります。

 命や健康の問題は単純にモノ・カネだけでは計れない問題であり、大きな改革の際には国民的議論にまで高めて充分な議論が尽くされる必要があると思っています。

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6月26日の第94回定時代議員会で選出された新執行部21名。任期は平成28年の定時代議員会まで。

Q.それを踏まえて、どのような改革が必要ですか。

 昨年の8月に、社会保障制度改革国民会議が税と社会保障の一体改革という観点から報告書を取りまとめ、12月にその改革スケジュールを示したプログラム法案が可決しました。

 そして、今、その国民会議を継承する形で報告書案を具体化するために新たに設置された社会保障制度改革推進会議での議論がはじまったところです。

 改革メニューの中には、これまで高齢社会対策に重きをおいて来たものを全世代型への対応にシフトすることや医療連携をコアに様々な形での連携を通して、地域で完結する医療を進めようといった内容など、我々と考えを同じくする施策も多く見られます。

 また、病院を経営している立場から、1つの地域で多くの病院が同じような医療を競合して提供している現状はムダが多く、病院をホールディングス化して複数の病院の医療提供内容を効率的に整理しようという提案は面白いと思いました。

 公立病院は自治体の負担も大きく、その一方で、提供されている医療内容は多くが民間病院と重複して、がん治療ひとつをとっても、高額な医療機器への設備投資等をそれぞれの病院が行なっているというのは何ともムダな話です。反面、周産期や精神科救急、難病、へき地医療といったいわゆる政策医療はまだまだ充分とは言えません。

 簡単なことではありませんが首長の強力なリーダーシップにより、病院の医療提供体制の大きな画が描ければ、市民にも行政にもメリットのあるものになると考えています。

Q.医師会長にとして取り組みたい課題や抱負を聞かせてください。

 日本は当面、少子高齢化による生産性人口の減少や新興国の台頭による国際間競争の激化により、大幅な税収増は望めませんから、社会保障を含めたすべての分野において効率的な運営が求められます。

 医療・介護においては、消費税の引き上げによる財源の確保とともに、総合確保推進法案が成立し、今後具体的な作業が進められていくなど、この1、2年が勝負の時になると思います。

 医師会として対応すべき課題は、少子高齢社会対策から健診受診率の向上や予防に重きをおいた市民の健康保持・増進、会員への学術支援、医療の安全対策も必要です。

 かつて医師会の業務は医療だけでしたが、予防の観点から保健事業にも取り組むようになり、近年は介護を中心とした福祉事業にも携わるようになって、対応策を挙げれば枚挙に暇(いとま)がありません。現在、それぞれの担当理事が地区医師会の役員との合議の場である委員会活動を通したり、あるいは行政や関係機関と一体となって地域医療を充実させていくための活動に奔走しています。そして、その報告や提案が理事会にあがって来て、そこで医師会としての方針や方向性を示すようにしています。

 このように医師会活動は多岐にわたっており、またそのどれもが複雑化していますので、大変なことも多いのですが、1つの例を挙げますと、2025年問題と言われる高齢化のピークを前に、国が施設から在宅へとシフトを進める中で、より効率的に対応していくためには、多職種間における連携体制を構築するとともに、それをコーディネートする在宅医療連携拠点いった基盤の整備が必要となって来ます。

 その機能を担えるのは、医療・介護に精通し、豊富なネットワークを有する医師会しかないと我々は考えています。

 そのため現在、行政と共同で勉強会を立ち上げ、さまざまな角度から、この問題の検討を行っていますが、行政側も地域包括ケアシステムの構築という一点から、仕事を終えた夜に課を横断的に超えて集まってくれ、大変実りある勉強会となっています。

 1つの医師会だけでできることは限られていますから、このように行政と情報を共有しながら、会員と直結した地区医師会とも連携を密にしながら、地域医療の充実に努めたいと考えています。

 それから、安倍総理が潜在能力のある女性の力を積極的に活用し、女性が輝く社会を作りたいとして、さまざまな取り組みを始められたところですが、医療界においてもまったく同じことが言えると思います。

 現在、医学部の学生の3、4割は女性で、今後もこの傾向は続くとされていますが、実際に医療現場で活躍されている女性医師となると、その比率はぐっと下がってしまいます。中には実労働が5〜6年で、結婚を機会に医師を辞めてしまったという例も少なくありません。ちなみに本会の全会員に占める女性会員の割合も1割程度です。

 かつての日本では結婚や出産を経験した女性がそのまま働くことは極めて稀なことでしたが、今では当たり前のように多くの女性が社会で活躍されているわけですから、いずれ女性医師の世界でもこのような時代が来るのだと思います。そのためにはやはり家庭や職場をはじめとした社会全体での総合的な支援が必要です。

 ただ、言葉で言うのは簡単ですが、そんなに簡単なことではないと思っています。

 私たちの中でも、この問題は社会全体で取り組むべき課題であるという認識の下に、先ずは医師会員や医師会未入会会員といった区別なく、より多くの若手女性医師に集まっていただきたいということで、声をおかけし、子育てを経験した先輩女性医師からいろいろと教えていただこうと言う会を催しました。

 参加された若手女性医師からは概ね好評をいただきました。

 今年もより多くの若手女性医師に声をかけ、お互いに苦労や要望、問題点などを出し合っていただく会を考えています。ある問題提起が実は隣の病院でやっていることに解決策があったなどということもあります。

 この問題は、孤立し、1人で悩んでしまうことが最大のデメリットだと考えていますので、なんとか医師会が中心となった女性医師のネットワーク作りが出来ればと考えています。

第94回定時代議員会で選ばれた新執行部

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北九州市医師会 会長 下河邉 智久

 上の写真は6月26日の第94回定時代議員会で選出された新執行部21名。任期は平成28年の定時代議員会まで。

 前列左から、田中正章理事(小倉=田中こどもクリニック)、有留秀泰理事(小倉=ありどめ内科クリニック)、穴井堅能専務理事(八幡=引野口循環器クリニック)、有馬透副会長(小倉=北九州市立医療センター総括副院長)、下河邉智久会長(戸畑=社会医療法人共愛会理事長)、村上吉博副会長(若松=村上外科胃腸科医院)、太﨑博美監事(八幡=北九州市立八幡病院副院長)、福井準監事(門司=福井医院)、古賀雅之監事(若松=こが医院)

 後列左から、手島久文理事(若松=手島内科医院)、藤本裕司理事(八幡=ふじもと内科クリニック)、岡本高明理事(門司=岡本クリニック)、安藤文彦理事(門司=安藤内科循環器科医院)、今田和典理事(小倉=小倉記念病院副院長)、久能保則理事(小倉=久能整形外科消化器科医院)、安藤由起子理事(戸畑=安藤ゆきこレディースクリニック)、久能俊昭理事(戸畑=久能医院)、長森健理事(小倉=平尾台病院院長)、福地靖範理事(八幡=福地内科循環器科医院)、西田英一理事(八幡=野田医院)、髙嶋雅樹理事(八幡=高嶋クリニック)。

北九州市医師会のプロフィール

 北九州市医師会は昭和38年2月に旧五市(門司市、小倉市、八幡市、戸畑市、若松市)が対等合併し、政令指定都市「北九州市」が発足するのに伴い、対行政折衝窓口のための新たな組織が必要となったことから、これに先立つ昭和37年12月27日に第1回代議員会を開催し、設立された。

 北九州市医師会の発足と同時に旧五市医師会は、より会員に近い下部組織として、法人格を残したまま活動するという全国的にも特徴ある医師会組織となっている。

 平成に入り、当時の北九州市長がこれからの高齢社会に対応する機能を集約した拠点として、北九州市総合保健福祉センターを建設するにあたり、保健・医療・福祉関係団体にも呼びかけがあり、北九州市医師会もこれに応じる形で、現在、急患センターや保健所、障害福祉センター、精神保健福祉センター、歯科医師会等々とともに、平成11年10月の同センター開設当初から入居し、その役割を担っている。

 平成25年に創立50周年を迎え、今年4月より公益社団法人へ移行した。現在の会員数は1千814名。


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