増えている治療法 怖がらずに検診を

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熊本大学大学院医学薬学研究部 乳腺内分泌外科学 臨床教授
熊本市立熊本市民病院 副院長 日本乳癌学会監事   西村 令喜

1976 山口大学医学部医学科卒業、熊本大学第2外科入局 1982 医学博士(熊本大学大学院医学研究科) 1985 熊本市立熊本市民病院外科医長 1993Heidelberg 大学で研修 2005 熊本市民病院乳腺内分泌外科部長、同年熊本大学医学部乳腺内分泌外科臨床教授 2008 熊本市民病院診療部長/乳腺内分泌外科部長 2011 熊本市民病院首席診療部長 2012 崇城大学客員教授(薬学) 2011 ~ 2012 日本乳癌学会会長などを歴任。

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前列中央が西村令喜副院長。
前列左から中野乳腺外科医師、緒方相談支援センター師長、西村副院長、田嶋外科医師、藤本外科外来看護師。後列左から西山乳腺外科医長、大佐古部長、奥村医長、片山主任、村山看護師、そして藤本MSW。

 紙面をお借りして、あるいはネットで読まれる方にお伝えしたいことがいくつかあります。

■乳がんは増えている

 まず、乳がんの患者が増えていることです。罹患率が増加し、死亡率も上昇しています。

 男性も女性も2人に1人はがんになることはよく知られています。その内訳を見ますと、女性の乳がんは12人に1人と、かなり多いです。

 厚労省は、今年86,700人の女性が乳がんになると予想しています。数年前まで4万人とか5万人とかでしたから、増えていることが特徴のひとつです。

 検診率が上昇したとはいえ20%ちょっとですから、米国なみの6割7割にはほど遠く、もっと上がれば患者数がもっと増えるのかなと思いますが、検診に行けば早期発見ができます。

 どんな年代に乳がんが多いかというと40代、50代です。

 乳がん増加の原因はいろいろ言われていますが、若い時に結婚して子供さんが多い人は乳がんのリスクが下がります。晩婚で高齢出産というのは、かなりリスクがあります。女性の登用がいろいろ言われていますが、子育てをしながら働ける社会づくりとも関わってくるでしょう。また、閉経後の肥満も乳がんになりやすいことも分かってきています。

■遺伝性乳がんの現状

 最近は、昨年女優のアンジェリーナジョリーさんが乳がんになる前に乳房を取った、遺伝性乳がんが話題になっています。日本では、遺伝性乳がんに関する遺伝子検査自体も保険で認められていないので高額になります。乳がんの患者さんの5%〜10%くらいが遺伝性乳がんだと言われていて、たちの悪いものが30代くらいに急激に出てきた人は遺伝性かもしれないと、そういったことが今、分かってきているところで、それを私たちは伝えていかなければなりません。でも検査やカウンセリングの体制がまだ整っていないので、これからの課題です。

■治療法はたくさんある

 そのことに関連して、昨年の7月から乳房再建に保険が使えるようになりました。遺伝性の方も含めて、乳がん治療の選択肢が増えたことを皆さんに知ってほしいと思います。以上のようなことが、乳がん治療を取り巻く環境として、この1年で大きく変わったところです。

 さらには、治療が最近はかなり変わってきました。タイプ別に乳がんを分けて、タイプに応じた治療をすることは知られていると思います。ホルモン感受性があるような時にはホルモン治療をするし、HER2(ハーツー)陽性なら抗HER2療法、ハーセプチンの治療をします。

 そして活発な癌には抗がん剤を使うということなどがだいたい決まってきています。そこを手術前に見極めて、予後や再発まで考慮できるようになりました。

 また最近は分子標的治療薬がどんどん出てきています。特に昨年の夏ごろから、ペルツズマブ、T-DM1(カドサイラ)、あるいはアフィニトール、ベバシズマブ(アバスチン)などいろんな薬が出てきています。今までは抗がん剤による重爆撃のような治療しかなかったのが、ある程度狙い撃ちできるようになってきたのは、患者さんにとってはいいことです。

 このように、いろんな治療ができるようになって、手術後の成績、生存率が改善しています。

 まずはがんを消滅させるための治療、再発しても共存して、10年20年を過ごしておられる方は多いですし、再発自体もかなり減少しています。

■まずは自己検診から

 早期発見すればそんなに怖くないといわれているのに検診率が上がらないのは、やはり癌が怖いのが大きな理由だと思います。だから、治療法がいくつもあって治るようになってきたけれども、進行しているものまで全部が治るということではなく、早期発見なら以前

よりもいろんな手が打てるようになってきました。

 だからあまり恐れずに検診を受けてほしいのですが、無料クーポン券を配っても検診率が上がらない。それは、自分はがんと関係ないところにいるとみんな思っているし、でも友達や家族がなると、検診に病院に来られます。やはり、がんを自分のこととして身近にとらえるかどうかが重要です。現に検診を常に受けている人の乳がん発生率、特に進行した人は少ないです。

 検診に行かなくとも自己検診をしてたえず意識を持ち、乳がんについての知識を正しく得ることが「こわい、こわい」ではないことにつながるはずです。

■明るく前向きに

 患者さんの中には治療にとても前向きな人がいる反面、乳がんになってもいないのにひどく心配している人もいます。

 なかなか難しいことですが、よく笑い、打ち込めることを見つけ、いろんな楽しみを持つことは大切です。

 患者さんは、まわりの誰よりも自分は不幸だと思っているわけです。でも、つらいのは自分だけじゃない。今はチーム医療として、いろんな職種で患者さんを支えようとしています。みんなも自分のことを心配してくれていると分かってもらえたら、少しは不安が和らぐと思います。

 患者会やピアサポートの会など、治療以外の支援体制も最近は整ってきました。熊本市民病院でも、患者さんがほかの患者さんの悩みを聞く集いを月に1度開いています。

■自分に返ってくる

 日本人の2人に1人はがんになる時代です。両親のどちらかがなるわけですから、乳がんについて正しい知識を持ったり、誰かのためにと考えてサポートしていたら、いずれどこかで自分に返ってきます。ああそうか、自分のため、大切な人のためだったと。その意味から「2人に1人」という言葉は、「もうみんな、なるっちゃもんね」。それくらいのところに来ていると思います。

 人は、人生も含めて変えられない部分が大半だと思います。努力で変えられる部分はほんの少しかもしれません。でも、みんなそこをやり繰りして頑張っているわけです。そのお手伝いが少しでもできたらと思います。


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