独立行政法人地域医療機能推進機構 JCHO徳山中央病院病院長 井上 裕二
独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO:ジェイコー)が本年4月に開設され、全国社会保険協会連合会、厚生年金事業振興団、船員保険会の3者で運営されてきた57病院を含む施設の経営が引き継がれた。徳山中央病院も全国社会保険協会連合会の所属から同機構の所属に変わった。同院は今年度から新病院長を迎え、この難局の舵取りを一任した。
―病院の特徴を教えてください。
山口県東部に位置する周南医療圏(周南市、下松市、光市)の基幹病院です。
山口大学の教育関連病院の一つで、大学病院との関連も密接ですから学生にも人気があり、研修先として希望されることが多い病院です。24時間365日の救急医療体制がとられていて、周産期母子医療センター、がん診療拠点病院、地域医療支援病院、等の機能を有し幅広い診療に対応しています。
救急搬送の患者が多くて病床稼働率が100%を越えることが常態化したことから、平成25年には25床の増床が認められ、総病床数は519床です。 一般の急性期病院の純増が認められることはまれですから、当院の医療圏での位置づけを表していると思います。
伝統的に効率性の高い診療態勢が組まれており、収益性ではJCHOの中でもトップクラスの病院です。
子供の一次救急から三次救急まで対応する診療体制は特徴的で、先日も神奈川県逗子市の市議会議員の方々が本院の体制を見学に来られました。地域の求めに応じて「断らない医療」を実践してきた結果であり、そういう地域中核病院です。
―大変な時期に病院長になりましたね。
社会保険病院からJCHOの管轄になりましたが、これは想像以上に大変なことでした。院外からは「大量の退職者がでて立ち行かなくなる」と いう風評もあがりました。移行時のトラブルや移行したことで診療機能が落ちるとは思いませんが、私が赴任したのはそれを回避するためといっても良いくらいでした。
これまでは公設民営の組織であったのが、移行によって公設公営の経営体に変わっています。現代は国立・公立の組織を独法化して、民間の経営手法を導入することがすすめられている時代ですので、民営の発想で診療に取り組んできた職員の戸惑いは大きなものでした。
病院が独自に手当の額を決められなくなり、給与の減額を余儀なくされ、勤務体系の不安も加わり辞める人も出ました。また移行後を不安視する風評被害もあり、昨年の就職希望者が少なかったのも事実です。
しかし移行しても本院がやるべき医療はかわりません。それを理解している職員はこの地域を守るんだという気持ちで団結できましたから、機能を落とさずに大過なく移行できたと思っています。職員みんなに感謝しています。
私は3月まで山口大学の教授をしていて、経緯がわからぬまま着任しましたので、何をしたのかと問われると答が難しいですね。
―今年度の目標は。
病院の実態はよく知っていたつもりでしたが、想像をはるかに超えて忙しい病院でした。
救急は絶対に断らないので、そこにマンパワーを集中しています。24時間手術室が稼働できる状態を保ち、緊急処置にも対応します。地域の信頼もあり、この機能をなくすわけにはいきません。
時間外の診療を通常勤務態勢で対応するには、すべての人員が足りないという現状です。
ベッドの増床にみあう看護師の増員ができていないのが響いています。要員を確保できるまで、モチベーションを維持してこの1年間を乗りきることが最大の課題です。今は使命感に支えられて運営している状態です。
―今年からDPCⅡ群病院ですね。
Ⅱ群病院がⅢ群病院よりも優れているとは思っていません。素晴らしい仕事をしているⅢ群病院はたくさんあります。
病院の位置する地域でそれぞれの病院にはそれぞれの役割があり、地域の方々のニーズも多様です。
今までやってきたことが、結果Ⅱ群病院に相当したというだけで、Ⅱ群病院であり続けることを目標に病院を運営することはありません。そうやって縛られることよりも、当院の持ち味を発揮することのほうが重要です。
―求職者にアピールを。
当病院職員は、地域で一番信頼される病院、最後の砦であることを自負しています。自分が生まれ育った地域で頼りにされる病院で働くことは、医療に携わる者にとっては名誉なことです。
また、超急性期から緩和ケアまで幅の広い医療に対応し、先進的で高度な医療を提供できる病院です。意欲ある人には働きがいのある魅力的な病院だと思います。