我々は見捨てない

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徳島県立三好病院 院長 住友 正幸

1981 徳島大学医学部医学科卒業 徳島大学医学部附属病院医員 1983 徳島市民病院医員 1989 徳島大学大学院医学研究科修了 国立療養所東徳島病院医長 1990 徳島大学医学部附属病院医員1995 徳島県立中央病院外科医長 2005 同外科部長 2010 同医療局次長、開院推進戦略室長 2012 同医療局長、徳島県ドクターヘリ隊員 2013 同副院長(経営企画担当) 2014 徳島県立三好病院院長 ■診療情報管理士、日本胸部外科学会認定医、日本呼吸器外科学会専門医、日本呼吸器内視鏡学会指導医

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4月から院長に就任した住友院長。DMAT隊の制服の隣で撮影。愛読書は「古事記」で、大宜津比売神(オオゲツヒメ)の研究をするのが趣味。

 ― 新病棟はがん医療が充実するそうですね。

 8月24日の新病棟オープンに伴い、「がん医療支援センター」(仮称)を開設します。低侵襲な内視鏡手術から集学的治療を経て、リニアック導入による放射線治療、緩和ケアを加えたフルセットのがん医療が提供できるようになります。

 支援センターに赴任する医師もそれぞれのスペシャリストです。がんと診断されたその日から、故郷の山川を見ながら治療、そして緩和までできる環境が整います。

 現在、地域がん診療連携推進病院に指定されていますが、今後は今年4月に制定された地域がん診療病院の指定を目指します。超えるべきハードルはありますが、是が非でも、地域がん診療病院にならなければならないと考えています。地域で完結できる医療を行なうことは、市民にとって理想的ではないでしょうか。

 当院がある三好市池田町は1400年代は御政所で、昭和天皇が、ご宿泊したホテルもありました。かつてはバスやタクシーの台数も多く、徳島市の歓楽街、秋田町をしのぐ勢いでした。

 徳島は、江戸時代から明治初期にかけて全国10大都市でした。阿波の藍(あい)商人の存在が大きかったのでしょう。

 徐々に衰退していった要因は、たばこ産業の衰退と鉄道の土讃(どさん)線の開通だと言われています。土讃線の開通のため、この町の人たちが一生懸命、道を造り、開通させました。その結果、宿場町の機能が失われてしまい、人口も減少していき、医療需要も減ってしまいました。

 林芙美子は「放浪記」を池田で執筆し、「日本のスイス」と評しました。素晴らしい自然のもとで、地域住民が生まれて死んでいく、その環境を提供するのが我々の使命だと感じています。

 新病棟オープンにあたり、フルセットのがん医療、緩和病棟とリニアック装置を県が導入してくれたのは、慧眼だと思っています。

 これからは地域での啓発活動に力を入れなければなりません。

 ご存知のように、喫煙は発がん、心筋梗塞発症のリスクを高めます。この地域は都市部に比べ喫煙者が多く、健康に対しての意識が低いのが現状です。医療従事者にも喫煙者が少なからず存在するので、我々が率先して喫煙による健康リスクを周知徹底させなければなりません。

 ― 救急医療にも力を入れているそうですね。

 平成17年に救命救急センターを開設し、二次救急だけでなく、三次救急にも対応できるよう、救急医療の拡充強化を図るなど、地域の中核病院として、地域医療の一層の向上のために努力を重ねています。

 「断らない救急」をスローガンにしています。

 そのためには人員の確保が必要です。救急医療の再構築が急務となり、徳島県立中央病院の救命救急センターから奥村澄枝医師に来てもらいました。奥村医師は、徳島県で唯一の日本航空医療学会が定める、ドクターヘリの認定指導者です。

 以前は救急搬送による平面の医療でしたが、ドクターヘリの運用で縦軸での医療展開が可能になりました。縦軸でのヘリ搬送、災害時にはシームレスに対応できる救急を目指しています。

 もう一つはウォーク・インの総合診療の充実を考えています。救急といえば、ヘリや救急車での救急措置を想像しがちですが、目まいがする、気分が悪いが、どこの科にいけばいいか分からない。そういった患者さんも大事にする、強くて信頼される救急医療、病院をつくることが理想です。

 道は人を幸せにしません。新しい道路が出来ると住民の移動がある。ドクターヘリと救急車の最大の違いは地域の人口を動かすかどうかです。ドクターヘリは地域の人口を動かしません。「道路が出来たので病院に行きなさい」、このシステムだと住民の移動があり、そのうち町は廃れていく。それでも住民はゼロにはなりません。その人たちをどうするか、たとえ国が見捨てたとしても、我々は見捨てませんし、彼らを守る義務があります。

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オープンを控えた新病棟。

 ― 今後の取り組みについて教えてください。

 魅力がなければ異性にもてないのと同じで、病院に魅力がないと医師は集まりません。「医師が足りないから増やしてほしい」と言うのはナンセンスで、自分たちの力で魅力を作らなければなりません。大学も大事に育てた医師を魅力がない病院に派遣しようとは思わないでしょう。

 新病棟ができ、新しい機械も導入しましたが、ハード面だけの魅力はいずれ薄れていきます。本当の魅力とは、患者さんに信頼されるかどうかだと思っています。そのために患者さんの個別性に合わせた医療を提供することが必要です。

 当院では定期的に臨床倫理勉強会を行なっていて、毎回60人ほどの職員が参加しています。近い将来、臨床倫理委員会の設立を考えています。アメリカではほとんどの病院にありますが、日本では、まだ立ち遅れているのが現状です。がんや終末期を扱う病院には必要不可欠だと思うので、設立に向けての準備を進めているところです。

 尊厳とは何か、自律尊重とは何か。西洋の考え方が必ずしも正しいとは思いません。いずれ日本人にあった独自の倫理観を作らなければなりません。新たな考え方を提唱できるようにしていきたいですね。

 院長としての行動規範は「それぞれの思いをおもんばかる」です。職員一人一人、それぞれの考え方があるはずです。職員全員を信頼していて、みなさんベストの力を出してくれると思っています。院長一人では何もできません。職員あっての病院です。いかにサポートができるかをいつも考えています。


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