明治44年8月22日、帝国海軍は軍艦姉川をロシアに返還するため除籍した。もとは病院船アンガラで、日露戦争時に赤十字社の病院船通知が手違いで届いていなかったことが判明したためである。
現代の病院船の代表は米海軍のマーシー級で、単艦あたりの総病床数は1千。手術室12室、ICU80床を有する。2番艦コンフォートは、湾岸戦争やハイチ地震での医療活動が日本でも報道された。
災害時に役割を持つが、現在国際法の適用を受ける専用病院船の保有国は米中露の3か国しかない。多くの国では輸送艦や揚陸艦に医療設備を備えた代替艦艇を運用している。リハビリテーション医の名を持つ、インドネシアのドクター・スハルソも揚陸艦だ。
日本では平成3年に委員会を設置し、一時は海保に150床の病院機能を持つ船舶を配備する検討をしたらしいが、実現しなかった。平成13年の報告書では、医療機能を持つ艦船の新造は不要と結論される。
しかし内閣府が昨年3月にまとめた「災害時多目的船(病院船)に関する調査・検討報告書」では再度病院船の必要性が検討されている。
今月4日、防衛省は現在保有していない強襲揚陸艦を、海自に初導入する方針を固めた。これはヘリコプターの運用が可能な揚陸艦を意味し、患者の迅速な受け入れが可能になる。災害の備えの一つとして、方針を歓迎したい。