学校法人銀杏学園 熊本保健科学大学 学長 小野 友道
熊本保健科学大学の前身、化血研衛生検査技師養成所は、厚生省指定の衛生検査技師養成所として1959年に全国で初めて創設された6施設のうちの1つ。その後短期大学への改組を経て、2003年に4年制大学として新たにスタートし、現在に至る。現在までに6600人あまりの卒業生を輩出、とりわけ臨床検査技師の養成数では九州圏内で最大の規模を誇っている。
開学以来、保健医療分野に特化し、臨床検査技師、看護師、理学療法士など数多くの医療人材を輩出してきました。特筆すべきは国家試験合格率の高さで、毎年95%から100%を維持、就職率は100%です。
保健医療分野の4年制大学ではどこにも負けない質の高い教育と研究を提供していると自負しており、経済誌の大学特集などで示されるランキングでは、毎年九州でトップクラスの評価を得ています。昨年も週刊東洋経済11月2日号のランキングで、九州の全私大で2位という結果を得ました。近年、九州内においても保健医療分野、とりわけ看護系の大学が急増し、これからも、し烈な競争にさらされますが、今後も実績や評価を高めていかなければなりません。
先日、オープンキャンパスを行ないましたが、過去最高の1千名を超える参加がありました。8月31日にも開催するので、多くの人が参加してくれることを願っています。
最近は本学を受験する高校生のレベルが上がり、県内の進学校からの受験が増えています。それに伴って学生の質も向上し、これが先に述べたような国家試験の合格率の高さに繋がっているのではないでしょうか。
本学の特色の1つに認定看護師教育課程があります。慢性心不全看護や脳卒中リハビリテーション看護など特定の看護分野で、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護を実践できる人材を社会に送り出し、看護現場における看護ケアと質の向上が目的です。
毎年発行している熊本保健科学大学ブックレットは、小野学長や岡部副学長が中心となって編集している。
キャンパスの屋上には大量の太陽光発電装置が設置されていて、太陽光モジュール2672枚、発電出力は480Kwの規模で、年間発電量は約49万kwhあるそうだ。
夢はこの地域に病院を作ることです。当学で育て、充実した実習が受けられる病院、その実現のためにはいろいろ高いハードルがあり、具体的な計画はまだですが、いつの日か実現させたいと考えています。
これからの50年に向けて我々が目指すのは、大きな豪華客船ではなく、少数精鋭の「小さな高速艇」です。小規模の大学ですが、保健医療に特化して、優れた人材を輩出し続けることが、当学が目指すべき道ですね。
人材の輩出だけではなく、地域貢献も重要視しています。熊本市が平成24年に政令指定都市になって、私は熊本市北区まちづくり懇話会の会長を務めています。昨年は、熊本市・阿蘇市と「災害時における包括的連携に関する基本協定」を締結しました。この協定は、熊本市・阿蘇市と保健医療の教育機関である本学が連携し、被災者の支援、人的支援などを実施することを目的としています。学生たちは毎月、最寄りのJR西里駅の清掃活動をしていて、毎回学友会役員の呼びかけにより、多くの部・クラブが積極的に参加しています。そのかいあってか、今年3月のダイヤ改正で、無人駅にもかかわらず快速列車が停車するようになりました。
ここから500mほど南にフードパル熊本という熊本の食文化を発信する食品交流施設があります。そこで毎月開催されるフードパルフェスタに多くの学生がボランティアに行っています。ブースを設けて、健康測定、華道部による生け花展、吹奏楽部によるステージ演奏などを実施し、好評を得ています。
北里柴三郎は藩校の時習館が廃校になったとき、両親に大阪の陸軍学校への入学を申し出たそうですが反対され、不本意ながら熊本医学校に入学したそうです。そこでオランダ人教師マンスフェルトと出会い、医学にのめり込みました。
人の才能は、人との出会いなど、ちょっとしたきっかけで開花するものです。高校生のころは将来のビジョンがはっきりしなくてもいいと思います。進学の動機は「学校のマドンナが入学する」、「楽しそう」など何でもいいので、まずはオープンキャンパスで本学を見学して、「いいな」と思ったら入学してください。ただし、その後には厳しいカリキュラムが待っているので、ある程度の覚悟を持って入学してほしいですね。
就職して1年たってから「久しぶり元気会」という同窓会を行なっています。卒業生は学生時代とは顔つきがガラリと変わっていて、立派になった姿を見ると感慨深いものがありますね。
著書『いれずみの文化誌』
皮膚科の権威である著者の、世界のいれずみをめぐる30の物語。
日本でのいれずみは、本来隠され、覆われていなければならないものだとされているが、欧米ではカルチャーとしてのいれずみ(タトゥー)が定着している。政治家でもヤルタ会談の主役の3人、チャーチル、スターリン、ルーズベルトの体にはいれずみがあったという。日本でいれずみをいれて大臣まで出世したのは小泉又次郎(小泉純一郎元首相の祖父)くらいのものだそうだ。
2020年東京オリンピックではタトゥーを入れた選手たちを街で見かける機会も増えるだろう。眉をひそめて遠巻きに眺めるか、異文化として受容するのか、日本国民の度量が問われるのではないだろうか。
小野友道著 河出書房新社 1,800円+税。
記者の目
熊本保健科学大学では「コ・メディカル」の呼称を「メディカルスタッフ」に変更したと、小野友道学長から聞いた。
学長によるとコ・メディカルという言葉は和製英語であるという。
この言葉の響きからはどうしても、医師の指示に従う者との印象が付きまとう。チーム医療の概念が浸透してきている昨今、この呼称に違和感を覚える医療者は多いだろう。
このことから弊紙では、「コ・メディカル」と表記する理由が特にない場合には「メディカルスタッフ」に変更したい。(新貝)