緊急時に患者の情報を、病院と診療所が共有
福岡市博多区の博多都ホテルで7月8日、福岡県医師会が診療情報ネットワーク(以下とびうめネット)の発足に関する記者会見を行ない、多くの報道陣がつめかけた。
とびうめネットは、福岡県医師会が今年4月から北九州市若松区と、古賀市を含む糟屋郡一帯で始めたもの。かかりつけ医を通して市民が事前に、病歴や服用中の薬、アレルギーの有無などの医療情報のほか、緊急時希望紹介先病院を登録するもので、緊急時に救急病院や消防・救急隊が閲覧する。また退院時、病院カルテより抽出された患者退院時サマリーを自動的に付加し、かかりつけ医などが参照してその後のケアに利用する。医介連携の推進も目的の一つ。
大規模災害時の運用も想定されており、バックアップの体制は万全だと発表された。システムの構築には平成25年度の地域医療再生基金を使用し、運用は県医師会の予算を使うという。
これは平成18年から糟屋医師会で計画され、平成25年度まで運用されていた医療ネットワークをモデル化したもので、糟屋一帯(1市7町)では現在44の医療機関(うち救急病院7、病院・診療所37)が参加し、2千700人の地域住民が登録している。
後発の若松区では現在52人の地域住民が登録しており、北九州市若松区医師会の金崎幹人会長は「若松区に基幹病院はなく、地域での医療の完結率が低い。今回は区外の6つの救急病院に協力いただき感謝している。また私の医院は耳鼻咽喉科なので不参加だが、65ほどの会員所属医療機関のうち11か所が参加した。すでにこの仕組みを使って1人搬送されており、役立ったようで嬉しい。今後はこのシステムを若松地区として作り上げ、運用することが重要だ」と述べた。
福岡県保健医療介護部医療指導課の刈茅初支課長は「県はこれまで糟屋医師会と救急病院との連携構築を支援してきた。その高齢者救急の体制が県医師会に移管され、地域医療再生基金から3億2千600万円の支援をした。県としても有用だと考え、今後は全県的に発展することを望む」と述べた。
原祐一常任理事は「医師会単位で手上げしてもらい、順次エリアを拡大したい」と展望を語った。
参加医療機関は以下の通り。
北九州市若松区医師会=いまい医院、北崎医院、こが医院、佐藤医院、手島内科医院、二島医院、三好内科循環器内科クリニック、村上外科胃腸科医院、大北内科、大安部外科胃腸科医院。救急病院=産業医科大学病院=八幡西区、戸畑共立病院=戸畑区、健和会大手町病院=小倉北区、北九州市立八幡病院=八幡東区、九州病院=八幡西区、小倉記念病院=小倉北区。
糟屋医師会
▼古賀市=かい外科胃腸科クリニック、植田脳神経外科医院、古賀クリニック、大岩外科医院、福岡内科循環器科クリニック、すなお医院、林眼科病院附属古賀診療所、やの循環器科内科クリニック、堤医院、亀山整形外科医院、いけだ内科クリニック、武市クリニック、福岡聖恵病院、中島医院、内科・小児科ちどり医院、北九州古賀病院、あさの内科クリニック
▼新宮町=やまだ消化器科内科クリニック、原外科医院、竹村医院、新宮町相島診療所、こころのクリニックゆめ、江口内科クリニック、加野病院
▼篠栗町=やまのファミリークリニック、若杉病院
▼須恵町=市來医院、泰平病院
▼糟屋町=尾石内科消化器科医院、松尾医院
▼久山町=大国医院
▼志免町=めぐみ内科クリニック
▼宇美町=中西内科クリニック、おがわクリニック消化器内科・外科・肛門外科
▼福津市=明日花クリニック福津在宅診療所、松岡内科
▼救急病院=福岡東医療センター(古賀市)、福岡青洲会病院(粕屋町)、片井整形外科病院(同)、栄光病院(志免町)、宗像水光会総合病院(福津市)、福岡徳洲会病院(春日市)、福岡和白病院(福岡市東区)。