社会福祉法人 済生会 支部岡山県済生会 岡山済生会総合病院 院長 大原 利憲
―院長室にファジアーノ岡山FCのポスターが貼ってあり、驚きました。
昨年度からクラブスポンサーになり、病院全体で応援しています。スポンサーといっても病院の宣伝が目的ではなく、地元のチームを応援しているというのが実情です。チームを応援することで岡山市周辺が活性化するならば、それは当院や職員にとってよいことだと思います。今年4月にVリーグで岡山シーガルズが準優勝して盛り上がりましたが、ファジアーノにも活躍を期待しています。
当院の職員は約2千人おり、特にサッカーが好きだという人が何人もいます。私も、妻と応援に行くんですよ。自宅はkankoスタジアム(岡山県総合グラウンド陸上競技場=岡山市北区)の近所なので、歩いて行けます。昨年度は10回ほど応援に行き、今期はもう5回くらい行っています。個人的に年間パスを買いました。
4月から12人の研修医が来ていますが、5月6日のアビスパ福岡戦には日直を除く10人を連れて観戦に行きました。ほかに医師や技師、事務の人なども行ったので、総勢50人ですごく楽しかったです。毎年の恒例行事にしたいですね。
私は高校時代から弓道部で、弓道場やkankoスタジアムがある岡山県総合グラウンドには馴染みがありました。私の弓道の流派は日置流(へきりゅう)という、池田藩(岡山藩)から継承される、実戦的な引き方です。
―岡山の出身ですね。
今年2月に着工した新病院は、鉄骨鉄筋コンクリート造の10階建て。屋上にはヘリポートを備える。免震構造を採用し、平成28年1月のオープンを予定。建築面積はおよそ8,841㎡。延べ床面積は45,210㎡ほどで、建物高さは44m。病床数は553床で、個室の割合を半分ほどに増やす。
伊島小学校(岡山市北区)の出身で、中学高校大学と岡山市で過ごしました。中学校は岡山大学教育学部の附属、高校は県立岡山操山高校です。ここの前を通るので、小学校のころから外観を知っていましたが、病院とは知りませんでした。当時は天使の絵が描いてあったので、教会だと勘違いしていました。
出身地ということもあり、岡山市の医療に貢献したいという思いは強くあります。
当院には、弓道部の先輩が外科にいたので誘われ、大学を出てすぐに就職しました。外科医が足りないので手伝ううちに、その魅力に触れて外科医になりました。自宅の近所の人を診ることが当時から多かったのですが、最近では同級生を診ることも増えました。
済生会の外科医は、年間200例ぐらいの手術に立ち会います。患者さんが多ければ、胃癌を年間200例、食道癌を200例と一本立ちできますが、そうでない場合はいろいろな手術に関わらなければなりません。
私は胸部外科で、国立がんセンター(現国立がん研究センター)に行き、特に肺癌の手術を勉強しました。入局した第一外科は消化器外科ですから、胃癌や大腸癌、肝胆膵の手術も得意です。博士号を取るときは、膵炎の研究をしました。
第一外科は刑務所と少年院に医師を派遣しており、私は少年院で医師をしたこともあります。手術が必要なときは、当院に連れて来ていました。
一人で外科的な疾患以外も診ますから大変です。講演をしたこともありますよ。
その後当院に帰ってくるわけですが、今治の済生会にいたときを合わせると、もう40年くらい済生会にいます。
―新病院についてお聞かせください。
今の病棟がある西館は、私が大学を卒業したころにできました。当時としては最新の設計思想で作られた建物ですが、今となっては古く、また耐震ではありません。当院は災害拠点病院でもあるので、耐震化は絶対に必要です。それで新築移転をすることにしました。新病院には駐車場棟も作るので、車でも来やすくなります。
現病院の外来棟は耐震化しているので、外来機能は残します。新病院には入院や手術、検査の機能、救急センター、事務機能のほか、院長室や医局、会議を行なうホールなども移ります。現病院は無床クリニックになり、外来に特化した医師が主に入る予定です。手術室は一部残るので、デイサージャリーも現病院で行なう予定です。夜間診療は新病院で行ないますので、現病院は夕方にはみんな帰宅して暗くなると思います。入院と外来の分離は不利な部分もあるので、うまく運用するための調整を現在行なっています。看護師は現在500人ほどいますが、足りなくなる計算です。
現病院の近くに建てるので、岡山駅から近いという利点はそのままです。30年ほど前に、郊外に移転する計画もありましたが、市街地にあった方がよいということになりました。現在でも、当院にとっては今の位置がベストだと思います。遠くに移れば、市街地が手薄になってしまい、地域にとってもよくないことになるのです。
病院の隣が老人ホームや訪問看護ステーション、ケアハウスなどの複合施設になります。院内の施設ではありませんが、連携をとってよい医療を提供します。
岡山市は急性期を担う大病院が多い地区で、戦略なくして経営はできません。新築の機会に、強い部門は強化し、縮小するべきところは縮小します。
―島しょ部の診療に力を入れていますね。
当院の柱は、がん診療、救急医療、へき地医療です。
昭和37年の済生会創立50周年記念事業として、瀬戸内海の離島を回る巡回診療船済生丸が運用され始めました。日本で唯一の診療船です。平成23度からは本部の直轄事業ではなくなり、岡山、広島、香川、愛媛の4県の済生会が共同事業として実施しています。船の管理事務所は香川県済生会病院内にあり、当院に事業推進事務所が置かれています。若いころから済生会にいますので、何度も乗船していますよ。昨年も乗って白石島や北木島(ともに笠岡市)に行きました。
岡山済生会看護専門学校の3年生は、必ず済生丸での実習を行なうことになっています。
平成7年の阪神・淡路大震災の際は、翌日に物資を積んで神戸新港に向かい、41日間に渡って支援活動を行ないました。
4代目の済生丸が昨年8月に進水し、艤装を済ませた後、12月に竣工しました。創立百周年の平成23年に建造を決定したことから「済生丸100」という通称で、今年1月から運航しています。航海速力は12.3ノットです。
船をバリアフリーにするのは難しいのですが、4人乗りのエレベータを備えて通路を広くし、段差をなくした設計です。X線装置をすべてデジタル化するなど、機器が新しくなったほか、マンモグラフィなどの新装備で、より充実した検診ができるようになりました。中規模病院程度の診療機能を備えています。180tの船にレントゲン室を作るのも、エレベータを備えるのも難しいことだったようです。
また、今後想定される南海トラフ地震などの際に支援活動を担うことも視野に入っており、災害援助船としても高性能です。
診療機能を高めつつも、広い物資の積載スペースを確保しています。また、海底の状態を知る音響測深器や、海水から1日3tの真水を作る装置を備えているので、災害現場でも力を発揮します。
この事業が続けられるのは、各支部職員の努力あってのことで、皆さんには感謝しています。