今後も維持する必要がある

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地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市立舟入市民病院  院長  柳田 実郎

1972 広島大学教育学部附属高等学校卒 1979 山口大学卒 広島大学医学部附属病院内科研修医 1981 国家公務員共済忠海病院内科 1986 医学博士 米国ヴァージニア・メイソン研究所研究員 1988 米国パシフィック・ノースウエスト研究所研究員 1989 広島大学医学部第2内科医局員 1990 広島鉄道病院呼吸器内科部長 2002 同診療部長 2010 安芸市民病院副院長 2013 広島市立舟入病院副院長 2014 広島市立舟入市民病院院長広島県社会保険診療報酬請求書審査委員会審査委員 厚労省毒ガス障害者認定検討会委員 広島県感染症予防研究調査会委員 広島大学医学部・総合科学部非常勤講師

 今年4月、広島市立の4病院は、広島市の病院事業局から独立行政法人に移管された。広島市は病院事業局を廃止し、延べ3千人を超える大規模な人事異動を行なっている。法人理事長には病院事業管理者の影本正之氏が就任した。独法化に伴い広島市立舟入病院は、広島市立舟入市民病院と名称を改めるとともに、柳田実郎副院長を院長に昇格させた。

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柳田院長は今年5月まで県医師会の常任理事だった。また同月まで安田女子短期大学の非常勤講師や、広島県在外被爆者医療審査会委員も務めた。平成23 年から広島大学医学部第2内科同門会副会長。広島県留置施設視察委員会の委員だったこともある。

―良い場所ですね。

 ここは明治28年の移転の際、大地主の古川久吉さんが寄附された土地です。当院は明治12年に開設された赤痢や腸チフスの隔離施設で、当時拡張するために土地を探したのですが、近隣住民の反対にあい、なかなか決まらなかったそうです。それで篤志家の古川さんが自宅の隣の土地を寄附して下さり、市街地の病院になりました。

 現在も第2種感染症指定医療機関です。特定感染症や2類感染症、SARS、MERSなどに備えています。中国から帰ってきた人が熱を出し、インフルエンザAが陽性という場合、H7N9の可能性があるので、保健所から私にすぐ連絡が入ります。総師長に連絡して収容の準備をすぐに整えますが、もちろん実際に来たことはありません。3時間後くらいに「H1でした」のような連絡が入ります。

―第2種感染症指定医療機関の感染症病床数は日本一です。

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病院は市役所にほど近く、路面電車の駅にも近い。病院の裏側は川沿いで、市民のためのウォーキングコース

 総病床数は190。うち感染症病床は50床です。当院は7階建てで、4階から6階までが外科、小児科、内科などの病棟。7階に感染症病棟があります。しかし7階の50床が使われることはほとんどありません。

 この病棟は普段使わないので、いざ1人でも入院すると、医師や看護師の数が足りずに大変なことになります。平成21年に起きたH1N1のパンデミックの際は、米国の学会に出席して感染した大学の教員1人が入院しました。私の前任者の山木戸英人副院長(当時)が1週間、宇宙服みたいな防護服を着て7階に泊まったそうです。看護師も2人で3交代を回すと10人ぐらい必要なので、足りなくなります。内科病棟の患者さんは退院してもらうか、他の階で看たそうで、実際に50床が必要になったら、平常の病院機能をほとんど止めることになると思います。

 感染性の腸炎は一気に感染者が増えますから、それを想定して50床で設計されました。しかし現代ではあまりそういう病気が流行することが考えられないので、多すぎる数だと思います。

 経営のことを考えれば減らすべきで、事実ほとんどの第2種感染症指定医療機関の感染症病床数は1ケタです(広島県内にはほかに、福山市民病院6床と東広島医療センター4床がある)。

 16床ほどに減らし、ほかは別の病棟にしようかという計画もあります。しかし仮に病床改変をしても、設備だけは維持し、いざという時に備えることができるようにしたいと考えています。感染症病床は利益にはつながりませんが、必要な物ではあります。当院は公的病院として、今後もこれを維持する役目があるでしょう。

 私自身、昨年3月まで県医師会の感染症担当常任理事でした。

―その他の役割は。

 常に感染症に備えていますが、ニーズは少ないので、現在は小児の一次救急の役割も担っています。また現在、外来患者の半分以上は子供です。小児科のほか、小児外科、小児心療科、小児皮膚科を標榜しています。

 公立病院は時代に合わせて役割を柔軟に変えるべきです。戦後当院では、感染症よりも被ばく医療に力を入れていたそうです。感染症は常に流行しているわけではありませんし、市内にいた人の多くは被ばく者でしたから当然ですよね。

 もっとも、被ばく者の病気に特別なことは何もありません。特有の病気は急性放射線障害ぐらいで、あとは普通の病気です。癌などの病気になる割合が高いことが問題なのです。

―被ばく医療に熱心に関わられていますね。

 県医師会の常任理事を12年やっていたのも、感染症の担当が主目的だったわけではなく、被ばく関係を担当するためでした。IPPNW(核戦争防止国際医師会議)の日本支部は広島県医師会内にあり、今年5月までそれの国際副評議員でした。県医師会では年に一回、北米と南米の在外被ばく者検診を交互に実施していますが、これも担当していました。県市だけでなく国からも補助金が出て、今世紀初頭から国の事業になっていますが、北米検診は当初県医師会が昭和52年、独自に始めたものです。広島県人は開拓者の気質なので、海外にも被ばく者は多いんですよ。

 今年5月までHICARE(放射線被曝者医療国際協力推進協議会)の代表幹事でした。放影研(放射線影響研究所)や原医研(広島大学原爆放射線医科学研究所)、日本赤十字社、原対協(広島原爆障害対策協議会)などと協力して、人体に対する放射線被ばくのデータを世界の被ばく者に役立てるのが目的の団体です。セミパラチンスクの実験や、チェルノブイリ、東海村、福島など、世界中で被ばくは起こっています。起きた時、どう評価し、どう対応するかのノウハウを提供します。また20年以上、在外で被ばく者に関わる医療人を呼んで研修を受けてもらったりしています。

 私はそのほか、広島市原爆被爆者健康管理手当等支給要件認定審査会委員などもしています。


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