新任院長を迎え高度急性期医療の重点化へ
海沿いの病院で埋め立て地に建っている。津波対策で前面の道路より2mほど高く、緊急時は池になる芝生の公園を備える。免震構造の11 階建てで、病床数は旧病院より100 床少ない531 床。だが延べ床面積は4万5千㎡と、旧病院の1・2倍以上の広さ。南側にある外来部門は特に採光や階高、見通し、内装などに気を配っており、開放的だという感想が多い。「外来中庭や病院周囲の木が今後育つのが楽しみ」と院長。
高松市の香川県立病院は今年3月、県庁前から高松港沿いに移転をした。瀬戸大橋通り(香川県道157号線高松東港線)と呼称される広い道路に面し、四国ドック㈱や香川県社会保険診療報酬支払基金、高松競輪場などに囲まれた地区だ。県の基幹病院としての役割を期待されて市街地から離れたが、病院の役割は大きく変わらないと、今年4月に就任した太田吉夫院長は話す。
「今までと同じように、まだ町の病院と同じ感覚で市民が訪れています。今後は県立病院として、もっと紹介状を持った方を増やすようにしなければなりません。外来では、かかりつけ医を作るよう積極的にPRしています。今後はより病病連携や病診連携を推し進め、高度急性期医療を充実させます。近隣医療機関との関係を大切にしたいと考えています」
太田院長が副院長として赴任したのは昨年。本来新病院が竣工している予定だったが、東北の震災の影響で工事が1年遅れた。しかし旧病院の機能を知った分、新しい病院の向かうべき方向がよく分かるという。
「移転時の種々の困難な業務は、塩田邦彦前院長が行なってくださいましたのであまり苦労はありませんでした」
太田院長は岡山大学病院医療情報部の教授だった。その院長の目から見ても、病院情報システムに不足はないという。そのほか、移転を機に医療機器も一新し、高度な医療に対応できるようにした。特にノバリスTx(ブレインラボ社の高精度放射線治療システム)は県内初導入で、本格稼働が待ち望まれる。
手術室は9室から12室に増やし、血管造影のできるハイブリッド手術室も備えた。手術の様子は、すべてフルハイビジョンで記録できる。さらにICUを8から10に増床したほか、HCUを新設している。
がん検診センターの機能を統合し、治療へ迅速に移る体制も整えた。また以前と変わらず、循環器や脳卒中、がんの診療には力を注いでいる。平成24年から心房細動に対するカテーテルアブレーション治療を行なっており、四国では最高レベルだと太田院長は言う。
「救急医療にも力を入れており、新病院になって屋上にヘリポートも設けました。小豆島(小豆郡)からすでに、県の危機管理課所属のヘリコプターが数回、患者さんを運んできています。当院から医師が乗り、現地に急行する計画もあります」
太田院長で13代目。病院へは岡山市内から通えるが、現在は高松市内に住んでいる。「生まれも育ちも岡山ですが、香川県民になるつもりで妻と引っ越してきました。岡山から腰掛で、という気持ちではこの規模の病院の院長は務まらないと思います。職員の士気にも影響があるのではないでしょうか。1年経って、良い土地に来たと感じています。小さな県ですから、香川県民は連帯感があるようです。医療連携はまだ遅れていますが、本格的にすすめば、堅固になるだろうと予想しています。そのためには県が動くべきですし、その方針に従い県立の当院が大いに頑張るべきだと考えています」
趣味は登山。毎年夏に休暇をとるという。「よく行くのは大日平(富山県中新川郡)。30年ぐらい通っている小屋があります。三俣診療班(岡山大学と香川大学が運営する、北アルプス三俣山荘内の診療所)のボランティアにも3回参加していますよ」