宮崎県立延岡病院 病院長 栁邊 安秀
今年4月に院長に就任して約2か月、この病院に来てから12年の歳月がたちました。
当院の役割は、県北地域の他の病院では担えない高度医療、2次、3次救急医療の提供。また研修病院として宮崎大学、熊本大学から研修医を受け入れています。
感染症指定病院なので、新型インフルエンザなどへの対応や、想定される南海トラフ地震の災害拠点病院としての役割を持ち、昨年3月には屋上にヘリポートを併設した救命救急センターを新設、ヘリの運用はヘリポート設置前と比べて3倍に増加しました。
病院経営はかなり改善し、地域医療支援病院として、開業医の先生たちとの連携もいい方向に進んでいます。
今後はこれまでの路線を踏襲しつつも、さらなる発展を図っていかなければなりません。
課題は医師・看護師の確保です。看護師は現在7対1ですが、これを維持するために夜勤回数を減らすなど、医療スタッフのQOLの向上を図っており、業務の効率化のために医療秘書を導入、看護師の負担軽減のためにヘルパーを採用、小児科病棟では保育士を採用して、これまで医師、看護師が行なっていた業務を分散化しました。
医師、看護師が本来行なうべき業務に集中できる環境を作ることで、より良い医療の提供につながります。保育所も敷地内に作って子育て支援にも取り組んでいるところです。
南海トラフ地震などの大災害への対策で備蓄倉庫を設置し、ライフラインを確保するため井戸も掘り、ソーラーパネルは今年度設置予定です。当院には津波の到達はないと予想されていますが、地下に水が流れ込む危険性はあるので、地下の非常用電源を屋上に移設しました。
大災害時にも災害拠点病院として機能するため、マニュアルも改訂する予定です。
日向市にも災害拠点病院はありますが、海に近い場所にあるため、大津波などがあった時に当院が果たす役割は大きいでしょう。
―県立延岡病院学会について話してください。
私が副院長の時から県立延岡病院学会を年2回開催しています。
医師、看護師などはいろいろな学会に参加をしていますが、職種を超えて得た情報を共有することはありませんでした。
チーム医療をしていく中で他の職種がどういうことをしているのか、学会でどういう発表をしているのか情報を共有したり、新しく研究をすることで業務を見直したりできるので、病院内部でプレゼンをしています。
―職員に心がけてほしいことは。
当院は宮崎大学、熊本大学から派遣されている医師が多数在籍していて、看護師、コメディカルは県北以外の出身者が多く、宮崎市から通勤する人も少なくありません。
病院でも会社でも帰属意識を持つことが必要で、それが患者さんや職場のためだと感じています。
私は職員に「三つの愛」を持ちなさいと言っていています。一つは「地域を愛してください」、二つ目は「病院を愛してください」、三つ目が「患者さんを愛してください」です。
大学から派遣された医師は勤務年数も短く、転勤もありますので病院愛が育ちにくいでしょう。でも縁あって延岡病院で働くのだから病院を愛してもらいたいと思いますし、宮崎市内から通勤している看護師、コメディカルの人たちも、延岡は不便だと思うのではなく、気候の良さや住環境の良さなど、いい面に目を向け、この地域を愛してほしい。そして病院は、そのような職員を大事にしたいと思っています。
時代は変わっても、医師には単なる仕事を越えて、一種の使命感が必要です。病院の機能として救急も大事ですから、時間外オンコールも含めて、私生活が犠牲になることもあり、それを負担に思うこともあると思いますが、患者さんが治ることでよろこびを感じられるようになるはずです。
医学は常に進歩しているので向上心を持って勉強し、技術を磨き、患者さんへの思いやりを忘れない医師が増えることを願っています。
―一階外来に水彩画を展示していますね。
今は水彩画ですがバードカービング(鳥の彫刻)や貼り絵、書道など、毎回テーマを変えて地域の方の作品を展示しています。病院内に絵や彫刻があると外来の患者さんも癒されるのではないかと考えています。どの作品もレベルが高く、欲しいと思うこともしばしばです。
―趣味を教えてください。
海外のサッカーを観戦するのが趣味なのでワールドカップが楽しみですね。私が大学に入学した1974年の西ドイツの大会から見ています。
当時はヨハン・クライフ(オランダ)やフランツ・ベッケンバウアー(西ドイツ)のプレーに熱狂したものです。ベッケンバウアーが好きだったので、ブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘンのファンでした。今はスペインのFCバルセロナが好きです。ジュゼップ・グァルディオラが監督時代のサッカーは芸術的で面白かったですね。
プロは勝つことも重要ですが、いかに観ている人を楽しませるかが重要だと思います。