高松市民病院 院長 和田 大助
高松市民病院は、地域の中核病院として昭和27年に開設。急性期病院でありながら、感染症病棟、精神科病棟も設置。高松市の保健・福祉・医療の一翼を担っている。診療科は20科。病床数は一般病床341床、精神科病床70床、感染症病床6床。
理想の医療を提供するため、職員一丸となって、業務にまい進している。
当院は平成23年4月から地方公営企業法の全適用となりました。当院、塩江分院、香川診療所を加え、高松市の病院事業として病院事業管理者を迎えて運営することになり、私も同時に院長に就任しました。
就任して最初に電子カルテの導入、基本理念の策定、地域医療支援病院の承認、7対1看護基準の取得、医師確保を目標に掲げました。電子カルテの導入と基本理念の策定、7対1看護基準の取得は早期に達成できましたが、一番大きな目標だった地域医療支援病院の承認は、平成25年度に承認基準の紹介率40%、逆紹介率60%の基準を達成したのですが、医療法の改正で達成率が上がってしまい、当初の基準に達したにも関わらず、承認には至っていません。
目標の達成のために基本理念「生きる力を応援します」を新たに策定しました。「生きる力」とは病院での医療はもちろん、高齢化社会で、地域社会、介護、在宅までサポートし、最後まで応援し、見守っていく強い気持ちを込めています。
そして基本理念の実現のために3つの基本方針を掲げました。
- 「リーディングホスピタル」として、高松市医療全体の最適化をめざします。
- 「理想的な医療」をファインチームワークで提供します。
- 「まごころのある医療人」を全力で育成します。
この3つの基本方針に沿って我々は行動しています。
職員の合言葉に「ファインチームワーク」を掲げています。職種を超え、一人の患者さんに向かい合っていくことを目指しています。医師、看護師、放射線技師、臨床検査技師、薬剤師、リハビリ、すべての職種が協力して、病院をよくしていこうと努力しています。
チームワーク向上のための取り組みで、月に2回、職員全員で病院周辺の掃除を行なっています。
また高松市立病院学会を立ち上げ、当院、塩江分院、香川診療所、3病院合同で、年に1回、各職種が発表を行ない、意見交換もしています。病院内でも単独で年度目標の発表を行なっています。
経営面では一昨年度に13年ぶりの黒字化を達成しました。昨年度の決算でも黒字化と2年連続の黒字化を達成し、職員のモチベーションはとても上がっています。自治体病院なので、公共性は当然、大事にしなければなりません。不採算部分も担わなければならないので、公共性と経済性のバランスが取れた経営を行なうことが必要だと考えています。
ここから南へ8㎞先の仏生山地区に、病院の新築・移転をする計画があります。高松医療圏の中心にあたる場所で、高松市民全体を診ることができ、基本方針の「リーディングホスピタル」になる目標も叶えることができると考えています。
医療から介護、病院施設から地域・在宅への流れになっています。新病院建設に向けて地域包括ケアシステムの態勢を構築していきたいと思っています。
私は「患者さんのために」と大きな志を持って医師になりました。若い医師に望むのは、「まごころのある医療人」です。患者さんに温かく、誠意を持って接してほしいと思っています。
私は外科医ですが、医師になった当初は、徒弟制度に近く、先輩に言われたことに素直に従っていました。なかなか手術もさせてもらえず、先輩の後ろ姿を見て技術を学んだものです。現在は若手医師育成のため、たくさんの手術経験が積めるので、恵まれた環境だと感じます。
患者さんを診る時に心がけているのは、自分の家族だと思うことです。家族だったらどう治療するかを考えると、すぐに答えが出ます。
院長になって手術件数が減りましたが、主治医でありたいとの思いは常に持っています。特に肝胆膵の手術は時間も長く、食事もできない時もありますが、手術が成功した時の達成感は非常に大きいです。
近年、外科医不足が叫ばれて久しいですが、その解決のために我々も含め、地道に魅力を発信していくことが重要です。
昔は外科医が光輝いていました。これから医師を目指す人は志を高く持ち、一人でも多くの人に外科の門を叩いてほしいと願っています。
40歳からジョギングを始めて、現在まで20年間続けています。これまでフルマラソンに28回参加しています。東京マラソンに3回、大阪マラソンにも1回出場しました。最近はマラソンブームなので、エントリーをするだけでも大変になりましたね。
フルマラソンには35㎞の壁があって、途端に足が進まなくなることがありますが、これまで一度も棄権をしたことがありません。
走り終えた後は手術が成功した後に似た達成感を感じることができます。