独立行政法人国立病院機構 徳島病院・四国神経筋センター院長 足立 克仁
徳島病院は昭和14年に傷痍軍人徳島療養所として開設。75年の歴史がある。
昨年9月には5階建ての病棟を新設。病床数は300床。診療機能は一般医療(内科、消化器内科、神経内科、外科、整形外科・リハ科、放射線科)、四国神経筋センター、パーキンソン病センター、スポーツ医学センター、消化器病センター、総合リハビリテーションセンター、臨床研究部を持つ。
5階建ての新病棟を建設しました。1階から4階までが病棟で、ゆったりした安心安全で、きれいな病室です。
最上階の5階には、エレベーター4台を配し、総合リハビリテーションセンターをつくりました。見晴らしのよい広々とした部屋でリハビリテーションができます。広いセンターなので、これまで以上に多くの患者さんに利用してほしいと思っています。
昨年、厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会から難病対策の改革に向けた取り組みが発表されました。この改革の柱に「新・難病医療拠点病院」の指定が盛り込まれていて、果たすべき役割は「難病患者の診療のための十分な診療体制の整備」「地域の医療機関の医師などに対する研修の実施」「難病医療に関する情報の提供」「難病に関する研究の実施」「他の病院及び診療所、都道府県、保健所などとの連携対策の構築」とされています。これらは当院が取り組んできた事項でもあり、今後も病院を挙げて、さらに充実させたいと考えています。新病棟の建設は十分な診療体制につながるものです。
平成12年度に徳島県難病医療拠点病院に指定され、来年1月には新・難病医療拠点病院の指定も受ける予定です。これまで政策医療である神経・筋疾患の四国の基幹医療施設として四国神経筋センターのサブタイトルを付け、筋ジストロフィーをはじめとした難病医療に取り組んできた成果だと考えています。
今後も四国4県を視野に入れ、四国神経筋センターとして、また新難病医療拠点病院として、難病医療に取り組んでいきたいと思っています。
当院は難病医療のほかに、内科、消化器内科、神経内科、外科、整形外科など地域医療に根差した一般医療、スポーツによる運動器障害全般に対応するスポーツ医学センター、内視鏡・肝臓病治療を行なう消化器病センターなど、数多くの診療機能を持っています。スポーツ医学センターにはサッカーJ1リーグに所属する徳島ヴォルティスの選手が来院することもあります。
筋ジストロフィーとは、骨格筋に筋力低下と筋委縮を認める進行性の遺伝性疾患です。筋肉をつくる遺伝子配列に異常があり、筋細胞が壊れやすくなって、やがて壊死、融解してしまう病気です。筋ジストロフィーで代表的なものがデュシェンヌ型です。日本の患者数は約4千人と推定されています。新生男児3千5百人に1人の割合で発症するといわれ、2、3歳前後から筋力低下がみられ、10年後に歩行ができなくなって車いすが必要になります。やがて呼吸もできなくなり、30歳前後までしか生きられないことが多い、難病中の難病といわれています。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは以前は20歳前後までしか生きられない病気でしたが、人工呼吸器が適応されて、現在では10年くらい寿命が延長しています。また、これまでの気管切開した後の人工呼吸器療法では、ベッド上で寝たきりの状態を余儀なくされていましたが、16年前から鼻マスクやマウスピースを使用した人工呼吸器が導入され、患者さんの行動範囲が広くなり、QOLが向上しています。さらに、鼻マスク人工呼吸器の導入で在宅療養も可能となりました。
当院外来では現在、四国4県で人工呼吸器を使うデュシェンヌ型の筋ジストロフィー患者さん10数人への在宅支援も行なっています。安心して在宅療養ができるよう、専門の医師が経過観察し、加えて人工呼吸器を専門に取り扱う臨床工学士が2人体制で対応しています。
デュシェンヌ型の患者さんは徐々にではありますが減少しています。少子化の影響や、健常者とともに暮らしていくノーマライゼーション理念の普及、また在宅医療、特に在宅人工呼吸器療法の推進などによるものだと考えられます。
当院では鼻マスクやマウスピースの人工呼吸器を付けて電動車いすサッカーを楽しむ患者さんたちが「FCレヴォリューション徳島」というチームで活動しています。昨年の四国ブロック大会で3連覇を果たし、病院中が彼らの頑張る姿に勇気をもらいました。
患者さんの生きがいづくりの取り組みで、平成17年度より年1回俳句を募集し、その作品を毎年秋の筋ジス文化祭に展示し、さらに徳島病院句集「野梅」として発行しています。俳句をつくることは精神活動の向上につながり、知的リハビリテーションの面から有意義なことだと考えられます。また、患者さんは往々にして閉じこもる傾向があるので、外に目を向けることも重要です。俳句活動が社会的活動の向上につながることを願っています。