福岡大学筑紫病院 病院長 向野 利寛
「抜群にアクセスが良い」というのが最初の感想だ。国道3号線に近く、九州自動車道の筑紫野ICや鳥栖筑紫野道路も近い。また鹿児島本線天拝山駅と、西鉄の急行停車駅である朝倉街道駅に挟まれており、高度な医療を提供する病院として好立地であることは間違いない。また、地域医療支援病院、救急告示病院、小児救急医療の拠点病院として、地域の医療を支える役割も担っている。
―昨年12月に院長になりました。
それまで当院の眼科部長でした。当院の院長は、各診療科の部長や教授から選挙で選ばれます。眼科の病院長は、熊大の谷原(秀信)先生や九大の石橋(達朗)先生など、最近九州の大学病院では増えてきたようです。
―鳥取大学を卒業ですね。
出身は中国地方ではなく、北九州です。鳥取大学を出たのち、九大の眼科に入局して、産業医大に移りました。だから、県内の眼科の教室には詳しいですよ。久留米大学の方以外は、大体知っている人ばかりです。
福大に来たきっかけは、産業医大にいた時に大島健司前教授から誘われたことです。それで、当院が眼科と耳鼻科と泌尿器科を開設したばかりの年に、助教授で来ました。それからずっと治療に当たっています。専門は硝子体手術で、診療も手術もまだ現役ですよ。火曜日と木曜日に手術しています。今65歳ですが、私の年齢で硝子体手術をしている人は、日本に何人もいないと思います。
以前は硝子体手術が可能な施設が少なかったため、北九州・山口、佐賀、大分などからもたくさんの患者さんが来ていました。今も糖尿病による失明など、難しい手術は広域から来ます。当院のアクセスの良さは、広域からの来院に適していますね。私は産業医大の近所から通勤していますが、車も電車も便利です。
しかし当院には、設計思想や設備が古いという難点がありました。
―病院が新築されました。
立ち行かなくなった個人病院を、昭和60年に福岡大学が引き受けた経緯のある病院です。診療科が増えるとどうしても不具合が出てきますし、手狭で古かった。建て替えてくれという話はずっと以前からしていたんです。経営状態が良くなく、閉院するという話もありましたが、みんなの努力で黒字化し、やっと建て替えができました。
昨年3月に建ちあがり、5月7日から診療を開始しました。病床数は変わりませんが、延べ床面積は1・8倍になりました。
一番変わったのは病棟です。以前は病室も狭く、処置するときは患者さんを廊下に出すこともありました。今は病室でできますし、処置室も各病棟にありますから、全然違います。患者さんも快適になっていますし、喜んでいると思います。
手術室も広くなり、6室から7室に増えました。脳動脈瘤などの血管内手術などは、同フロアの血管造影室で行なうので、実質もっと増室されているような感じです。使ってみると、手術自体もしやすくなっていました。手術件数も病院全体で増えています。医師や看護師が増えれば、もっと手術できる設備が揃っています。マンパワーの増強は、今後の課題ですね。
―救急医療にも力を入れていますね。
地域貢献に救急医療は必要で、黒字化する過程でも大きな要素でした。
今年4月から救急部を救急科に組織変更しました。担当医も増えましたし、今後さらに充実した救急医療が提供できると考えています。
ただ大学病院として、救急以外の難しい症例を受け入れる必要があり、病床の利用の仕方にさらなる工夫が必要だと考えています。
ほかには、地域医療支援に力を入れています。在院日数の関係で亜急性期病院との後方連携は大事です。今後もっと強化していきたいと考えています。
職場環境も改善したいですね。今後は看護師などのワーキングシェアを目指したいのと、産休していた女性医が戻りやすい環境を整えるつもりです。院内保育所を新しく作りましたが、ここで病児保育も出来るようにしたいと考えています。
―周囲に高い建物が少なく、見晴らしがいいですね。
患者さんが喜んでくれていたらうれしいですね。
今は院長室からの眺めも良いですが、立体駐車場を建てているので、今後はそうでもなくなりそうです。
今の駐車場は借り地なんです。また、交通量の多い道路を渡らねばなりません。信号機を当院の前に付けてくれとお願いしたこともありましたが、難しいようです。
敷地内に駐車場を作れば、経費も削減できますし、患者さんもあまり歩かずに済みます。当院が今後発展していくためにも必要な物ですから、こちら側からの眺めは諦めるしかありませんね。