臨床心理士の想い21 坂梨 圭

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患者になる⑧

 5年前に私の母が入院した時のことである。

 ベッドから転倒して腕を骨折し、手術と治療のため1か月入院することになった。診察のあと医師から、高齢なので手術をして鉄で補強した方が早く治ると勧められ、手術に踏み切った。

 手術の前日、執刀医から説明を懇切丁寧に受けた。インフォームドコンセントである。

 レントゲン写真を見せながらとても親切だった。私たち臨床心理が面接する際こんなに丁寧に説明をするだろうかと考え直させられる時間だった。

 もう一つ脳裏に浮かんだのは、説明の時間を半分にして、ほかの仕事をした方が効率的ではないかという思いだった。今は訴訟リスクも高いので、病院の方針なのだろう。

 入院前には「完全看護なので、ご家族の方は洗濯物を持って帰ってもらうだけでいいですよ」と説明を受けて安心した。そして私と妻、子どもたちと交代で病院に行き、母と会話をして洗濯物を持って帰るという生活が1か月続いた。

 担当の看護師さんが3名いた。20代から30代であろう。私が病室にいた時、母がある看護師さんをナースコールで呼んだ。そしてその看護師がドアを開けた瞬間、明らかに不機嫌な表情であることがわかった。

 母が「起き上がれないので...」という間もなく、「さっきも同じことで呼ばれて。私たちは忙しいんですよ」と怒られた。私もそばにいて、怒られたような感情になった。

 「その言い方はないのではないか。完全看護、しかも相手は高齢者で手が使えないから看護師さんを呼んだのに、その言い方はないのではないか」と反論したくなった。しかし母の申し訳なさそうな「すみません、忙しいのに」という言葉を聞いて、私はひたすら看護が終わるのを待った。

 あとで母に聴くと「あの看護師さんはいつもあんな感じ。ほかの2人はとても親切なのに」と愚痴をこぼした。まさかナースコールで指名するわけにもいかないので、母もあきらめていたようだ。何を言ってもあの態度は変わらないだろうと思っているからである。

 人は「よい印象よりも悪い印象の方が強く記憶に残る」。だから噂話は、ほとんどがゴシップか悪口で、よい噂はなかなか広がらない。そして、一部が全体の印象に影響を与える。病院の施設・医師の力量・看護師のホスピタリティのトータルで、その病院のイメージが決まってしまう傾向にある。

 イメージが悪ければ、患者はそのことを誰かに話すだろう。そしてそのことが、その病院の評価

 組織はハード面だけではなく、一人一人のホスピタリティやイメージで決まってしまうことを実感したエピソードである。

 私も私自身だけではなく、スタッフの対応も含めて考えていこうと思う。


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