医療法人博慈会 内田病院 院長 内田 明宏
内田病院は明治35年開院、112年の歴史がある。昨年病棟を増改築し、患者の目線に立った病棟造りをしたという。新病棟と地域への想いを内田院長に聞いた。
―昨年8月に病棟を増改築したそうですね。
患者さんのニーズに応えるため、病室はすべて個室にしました。
全室シャワー・トイレ付きで個室料はかかりません。また今までやっていなかったデイサービス、サービス付き高齢者向け住宅を院内に併設しました。
サ高住は病院の4階部分に16戸の個室を完備し、24時間、職員をフロアに配置し、利用者の安否確認や生活相談、医療・介護の支援をしています。
デイサービスは5階部分にあり、 朝、利用者が到着後、検温、血圧測定、入浴、リハビリ、食事をして過ごしてもらいます。花見や紅葉狩りなどの外出やレクリエーションも企画しています。
退院後のフォローも充分出来るようにし、自宅に戻れない患者さんは可能な限りサ高住に入ってもらう。退院後が不安な人は当院の居宅介護支援サービスを通じてその不安解消に努めております。
病棟内から外が見えるようにクリアボードを多用し、屋上にはエレベーターで行ける庭園を造りました。ゆるやかな傾斜と小さな階段も設置して、簡単なリハビリも出来るよう工夫しています。
患者さんの中には、病院の中では普通に歩けるが、建物の外に出ると精神面の不安から歩けなくなる人がいます。病院内に外の空気を感じられるスペースを設け、患者さんの不安を少しでも取り除きたいと考えています。
また、一階のリハビリ室の前に源泉かけ流しで、天井が吹き抜けの足湯を作りました。リハビリの途中や外来の待ち時間にリラックスしてもらえればと思っています。
屋上庭園や足湯でも音楽を聴けるように、全天候型のスピーカーを採用しました。場所や雰囲気で曲が変わるようにし、音楽セラピーに取り組んでいます。地下にある職員専用のスペースでも、モチベーションが上がる音楽を流しています。
増改築の際に、外来ロビーの柱を丸くしました。ソファも曲線的にして、プライベートスペースを設けるため一席づつひじかけを設置しました。受付の待合室の照明の色も季節に応じて変えることができます。すべては、患者さんの不安を少しでも和らげるためです。
もし自分が入院するならどういう病院がいいか。これが今回の増改築で留意したことです。
―歴史のある病院ですね。
曽祖父の内田初三郎が、大分県立病院で勤務する傍ら、楠銀天街内に夜間診療所の内田診療所を開院しました。その後、現在の場所に移転して内田病院になりました。
曽祖父や祖父の時代は、お金のない患者さんが野菜を持ってきて、それと引き換えに診療していたこともあるそうです。
この地で100年以上やってきたので、私がここに帰った当初、患者さんから「ひいお爺ちゃん、お爺ちゃん、お父さん、みんな知っているよ」と言われたこともあります。地域の住民に支えられていると感じていますので、少しでも、貢献していきたいと思っています。
―地域住民の信頼感も強いでしょう。
子供のころから診てもらっているという安心感はあると思います。私たちも長い期間、診ているので、身体の変化が分かります。
大きな病院では、時間と人員の問題もあって、病気だけ、臓器だけを診るスタンスになりがちです。私たちは地域の「かかりつけ医」として最良の医療が提供出来ると考えています。
高校・大学と柔道をしていて、3段です。今は膝を悪くしてできませんが、子供が柔道を始めたのをきっかけに、地域で、指導者、審判、コーチ、監督などをやっています。
自分の子供に柔道を教えられたことは貴重な経験でしたが、指導者という立場上、父親として接することができず、逆に厳しく接したので、子供たちは少しつらかったかもしれません。現在は市の柔道連盟の理事をしているので、今後も柔道に携わっていきたいと思っています。
体を動かすのが大好きで、現在はスポーツクラブでボクササイズをしています。有酸素運動の効果が高く、体も引き締まります。運動中は無心になれるので、ストレス発散にもなり、精神面でもプラスになっていますね。