人材育成の視点を深めて

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済生会福岡総合病院 院長 岡留 健一郎

おかどめ けんいちろう=1971 九州大学医学部卒、1978「血管壁の線溶に関する研究」でベルツ賞受賞(九州大学大学院)、1980 同医学部第二外科助手、1985同講師、1991 同助教授、1993 文部省在外研究員としてシカゴ大学外科留学(Visiting Professor)を経て、同1993 済生会福岡総合病院副院長。1998 同院長に就任。現在に至る。2009 から全国済生会病院長会会長。

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済生会福岡総合病院 院長 岡留 健一郎

 病院長のほかに全国済生会病院長会会長、日本病院会副会長、全国公私病院連盟副会長、そして社会福祉法人恩賜財団済生会理事として、月の半分は東京にいる。

 好きな言葉に、西郷隆盛の精神の拠り所となった、江戸時代末期の儒学者佐藤一斎の「少にして学べば、則ち壮にして為すことあり。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。 老いて学べば、則ち死して朽ちず」がある。「医者は一生が勉強なのです」と訴える。

―目の前がアクロス福岡ですね。

 福岡でもっともアクセスの良い都市型病院です。平成22年(2010)に福岡県から『地域医療支援病院』に承認され、地域の医療機関と協力して、役割を分担しながら、より質の高い医療を患者さんへ提供するよう努めてきました。

 昨年度は「職員満足度の向上」を病院の方針に掲げ、表彰制度の開始、院内病児保育施設の設置など、WLBや職員の声に耳を傾けた施策をとってきました。

 私たちは患者中心で働いていますが、職員の満足も得ないと、やり甲斐や達成感にあふれる病院になりません。患者の満足度の前に職員の満足があるんです。職員が満足していなくて患者が満足するはずがありませんからね。その結果、職員の満足度は高く、定着率も高い水準にあります。

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毎週月曜の朝に開かれる幹部会議。さまざまな角度から真剣な論議が行なわれる。

 今年度はそれをさらに一歩すすめ「職員一人ひとりが責任をもって行動する」としました。

―医療のこれまでを見据え、「これから」をどう見ますか。

 今までいろんなインタビューや講演で、「これからのキーワードは人材育成だ」と話しています。「患者中心」、「チーム医療」、「安全な医療」、「情報開示」は無論ですが、病院経営やマネジメントを人材育成の観点で見ることが一番大事です。

 高齢社会の到来を背景に、特定看護師制度が試験的に始まるなど、医療環境が大きく変わる中で、財務、地域、顧客、学習・成長の視点で自分たちの強みと弱みを分析しない病院は淘汰されるでしょうね。

 なかでも学習・成長の視点は重要です。人的な投資を怠ると病院は後退するでしょう。設備機能はもちろん大切ですが、サウスウエスト航空のCEOは、「競争相手に模倣されない強みは、目に見えない資産であり、社員の団結心、我が社ならではの文化・心意気が薄れていくことを何よりも恐れる」と明確に述べています。人材育成を忘れ、自分たちの利益しか追求しない病院は衰退していきます。

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2009 年、敷地内に設置された、創立90 周年記念モニュメント「希望の鳥」。命の輝きと無限の可能性を表わし、病院に来る人と巣立っていく人を見つめている。(後ろは同院)

 平成5年(1993)にシカゴ大学から帰国し、副院長としてこの病院に赴任した時、典型的な官僚型、公務員体質の病院でした。それでボストンのマサチューセッツ総合病院=MGHのスタイルを見習って、患者の視線に立たない医師にはどんどん辞めてもらうなど、大きな改善を図りました。当時は患者を立たせたまま、受付が平然と座って話を聞いていましたからね。患者に対しては立って対応すべきです。

 MGHは当院と同じく都市の中心で機能するタイプの病院で、とても参考になりました。

 これからの病院は、医者も看護師もコ・メディカルの諸君も大事だけど、事務方ですよ。DPCもそうだし、レセプトデータも入ってきますから、データ分析のできる、ITに強い事務方が育っていかないと病院経営はうまくいかないです。

 生きたデータ、なまのデータを扱える事務職員がこれから求められます。それで当院は、SEのほか複数の若い職員を九大の大学院など外にどんどん出して、医療全般に渡る経営学、経済学を勉強してきてくれと言っているんです。だから昔流の、叩き上げの人たちは、おそらく壁にぶち当たると思います。

 いくらデータが集まっても、それを生き物として使えなければ意味がありません。私も東京の会議で、これからの医療のあり方について、病院団体としての意見を求められることがよくあり、福岡の経験が役に立つことは多いです。

―今の若い医師について。

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 社会人教育がされていない人がたくさんいますね。基本を忘れていると思います。一番いけないのは卒前教育、人間教育をしていないことです。知識ばっかり詰め込んで、患者さんときちんと向きあうことが出来ない人もいるようです。そう感じている院長は多いのではないでしょうか。

 私は、卒前教育、初期臨床教育、そしてこれから始まる専門医制度が一連の流れにならなければ、良い医療は展開できないだろうと思います。どこかで切れちゃう。

 人間教育が不足しているのにプライドだけは高いから、それを壊すために、誰も手をつけられなかった医者の人事考課=パフォーマンスレビューを考えたんですよ。年俸制度を採っている部長クラス以上が対象で、当時評判になって、一般企業から講演依頼が来たこともあります。

―紙面を通じて訴えたいことは。

 当院は「最高の病院をめざそう」というビジョンを掲げています。

 職員がやりがいを持って働くことで、「患者は素晴らしい医療を受けているのだ」と医療者が信じ、患者も「自分が受けている医療は素晴らしい」と感じている病院になることです。


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