3月は大腸がん啓発月間|食生活と生活習慣の改善を

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熊本大学医学部附属病院副病院長 消化器外科学教授 馬場秀夫

1984 熊本大学医学部卒業、国立別府病院外科臨床研修医、1985 九州大学医学部附属病院医員(第二外科)、1988 米国テキサス大学医学部内科腫瘍学講座へ留学、1990 国立大分病院勤務、1992 同病院助手、1994 同病院講師、国立病院九州がんセンター消化器外科、九州大学医学部非常勤講師、1998 国立病院九州がんセンター消化器外科医長、2003 九州大学大学院医学研究院臓器機能医学部門外科学講座消化器・総合外科学分野講師、外科学講座消化器・総合外科学分野助教授、2005 熊本大学大学院医学薬学研究部先端生命医療科学部門成育再建・移植医学講座消化器外科分野教授、2010 同大学院生命科学研究部先端生命医療科学部門成育再建・移植医学講座消化器外科分野教授(副研究部長、副病院長、総合臨床研修センター長、地域医療支援センター長、発生医学研究所付属臓器再建研究センター教員、臨床研究支援センター副センター長を兼務)。■資格=日本ハイパーサミア学会認定医、日本外科学会専門医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本がん治療認定医、日本消化管学会胃腸科認定医、日本食道学会食道外科専門医、日本気管食道科学会認定気管食道科学会認定気管食道科専門医、日本消化管学会胃腸科専門医など。■評議員等=日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会、日本消化管学会、日本胃癌学会、日本食道学会、日本消化器癌発生学会など。

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「趣味はアウトドアと音楽鑑賞。でも忙しくてなかなかやれません」と話す。

―印象派の絵画をたくさん飾っていますね。

 病院は患者さんにとって、必ずしも居心地のいい場所とは言いがたいところがあります。個室もありますが、4人部屋にはいろんな人が雑居することになり、自分の望む環境になっていないことがあります。いろんなストレスのかかるスペースですが、なるべくリラックスできる空間を提供したいとの思いで絵を飾っています。

―教室の特徴は。

 熊大の消化器外科は、消化管、肝胆膵領域のほとんどの悪性疾患を扱っていますから、食道がん、胃がん、大腸がん、それから肝臓、胆のう、膵臓のがんをおもに扱っています。大学病院として症例数は比較的多く、食道がん、と肝臓がんの手術症例は、おそらく九州で一番多いでしょう。

―若手に積極的に経験を積ませているそうですね。

 一度に難しい手術じゃなく、段階的に経験を積ませて、難易度の高い手術も経験出来るようにしています。最終的には消化器外科の専門医になってもらうことが必要だと思っていますし、臨床だけでなく研究、あるいは海外留学も積極的に推奨しています。

―日本の消化器外科が世界のトップである要因、理由はどこにあるのでしょう。

 日本人は何ごとに対しても細かく分析し、アプローチしますので、がんを徹底的に手術で治したいという気持ちが強く、結果として治療成績が非常にいいわけです。

 また、外科医がみずから技術を磨いてきたのと、踏み込んだ手術をしたことで、解剖学的に、いわゆるがんの局所の解剖を非常に詳しく学んだこと、もともと日本人が器用だということ、最後に、日本人の体型が欧米人と比べるとスリムなので、手術もしやすいと、もろもろの要因があると思います。やはり日本人の手術に対するこだわり、そしてこれまでの先達の努力が実を結んでいると考えていいと思います。

―3月は大腸がん啓発月間です。予防法と外科的治療法について教えてください。

 リスクファクターとしては食生活の欧米化があります。肉類や油物を多くとったり、運動や野菜の不足という、最近の日本人にありがちな生活習慣そのものがリスク要因となっていると思います。予防に関しては日ごろの食生活や生活習慣の改善が必要です。

 大腸がんは、がんの中で死因としては、男性で3位、女性で1位で、合計しますと2位ぐらいです。でも、ほかのがんに比べると比較的予後がよく、きちんと治療すれば長期生存が望めます。ですから、早期発見、早期治療が大事になります。

 早期発見のためには、今は便潜血による検診が行なわれています。ただ、便潜血ですべてが見つかるわけではなく、便潜血で陽性になった方は大腸の内視鏡検査をすることになります。最近はCTコロノグラフィーと言って、大腸の中を大腸内視鏡で見たような像をつくることが出来ます。

 いずれにしても、便に血がついた、あるいは出血したような場合は、詳しい検査を受け、陽性であればきちんとした検査を受けて早くがんを見つけることが重要です。早く見つかった場合には、内視鏡だけで局所を切除することが出来ます。それから今は、大腸がんの手術に関してはほとんどが腹腔鏡でできる時代ですから、体に負担のないかたちで手術をすることが出来ます。

 大腸がんの場合、進行して肝臓などに転移することがあります。以前はよく効く薬がなく、遠隔臓器に転移すると極めて予後が悪いという状況でしたが、今は手術不能ながんも抗がん剤などで小さくして、手術が出来る時代になってきました。

 したがって、大腸がんの治療成績そのものは改善していると思います。いずれにしましても、早期発見、早期治療、さらには食生活、運動を含めた生活習慣の改善が望まれると思います。

―一般にもわかる兆候はありますか?

 大腸のどこに出来るかで若干症状が違います。上行結腸とか横行結腸の真ん中ぐらいまでですと、比較的便が通りにくい症状が出にくくなります。そういう場合には出血や貧血で気づくことがあります。

 一方、横行結腸から下行結腸、S状結腸、直腸のあたりにできると、がんによって便が通りにくく、便秘気味になるとか、下痢を交互に繰り返す、便が出るのに時間がかかる、便に血が付着するというようなことがあります。そんな症状が出た場合は詳しい検査をしていただくというのが大事ですが、症状が出やすい部位と出にくい所がありますので、検診を定期的に受けていただくことが一番だと思います。

―遺伝の要素はありますか。

 大腸がんでも遺伝的に起こるものが2つあります。家族性の大腸がんと言われ、1つは大腸にポリープがたくさん出来てがん化する、もう1つは、HNPCCと言われる大腸がんで、家族内や親族内に大腸がんの方が比較的多い場合は、気をつけられたほうがいいかもしれませんね。

―消化器外科を目指す医師の卵にメッセージを。

 年間35万人強の方が、がんで亡くなっています。2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代で、内訳を見ると、男性も女性も5割が消化器のがんです。

 消化器外科医のニーズは今後も続きます。血液がんなどは薬で治せるようになりましたが、固形がんで唯一、治癒に至らしめることができるのは、臓器によって違いますが、少なくとも消化器外科の場合は手術だという状況です。まだまだ消化器外科のニーズは高いと思いますので、ぜひ学生の皆さんには消化器外科を目指していただければと思います。


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