若いうちから「がん教育」を

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熊本大学大学院生命科学研究部 産科婦人科学 教授 片渕秀隆

1982 熊本大学医学部専門課程卒業 同大学医学部附属病院産科婦人科研修医 1983 九州厚生年金病院産婦人科新生児科研修医 1984 熊本大学大学院医学研究科博士課程 1989 同大学医学部附属病院産科婦人科助手 1993Johns Hopkins 大学医学部病理学(R.J.Kurman 教授)研究員 1997 熊本大学医学部附属病院産科婦人科講師 2003 熊本大学医学部産科婦人科学講座助教授 2004 熊本大学大学院医学薬学研究部婦人科学分野教授 2006 熊本大学医学部附属病院地域医療連携センター長 2009 同大学医学部附属病院副病院長 同総合臨床研修センター長 同地域医療支援センター長 2010 改組により同大学大学院生命科学研究部産科婦人科学分野教授 熊本県「私のカルテ」がん連携センター長 2012 熊本大学医学部附属病院成育医療部門長。■所属学会=日本産科婦人科学会理事 日本癌治療学会理事 日本婦人科腫瘍学会常務理事 婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構JGOG理事 日本婦人科がん検診学会常務理事 日本婦人科病理学会理事 日本胎盤学会理事 日本生殖免疫学会理事 日本妊娠高血圧学会理事 日本癌学会評議員 日本がん検診学会評議員など。

 熊本大学医学部産科婦人科学教室は、1896年(明治29年)に創設され、118年の歴史がある。2004年に9代目教授として就任した片渕教授は、熊本大学出身者としては初。婦人科腫瘍学で日本をリードする存在で、婦人科病理診断学のエキスパートとしても、子宮頸癌、卵巣癌などの名医である。

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熊本大学大学院生命科学研究部 産科婦人科学 教授 片渕秀隆

誰もが産婦人科に行ったことがある

 高校で50回ほどがん教育を行なっていますが、まず生徒たちに「あなたたちは産婦人科に行ったことがありますか」と問います。でも手を挙げる生徒はほとんどおりません。しかしその生徒たちが生まれた場所は産婦人科なんです。現在99%以上の赤ちゃんは産婦人科で産まれています。

 ですから、現在30以上の診療科がある中で、産婦人科に行ったことがない人はいません。

4つの科が人類を存在、存続させた

 地球の歴史は46億年、人類は700万年です。46億年前の1個の細胞から700万年前の人類に至って我々が存在するのは4つの科があったからです。それは産婦人科、小児科、内科、外科です。この4つの学問は、私が学生のころはメジャーと呼ばれていました。

 人類をつないでいくには、基本的にこの世に生まれないといけません。その役割を担うのが産婦人科です。

 人間は他の動物たちと違い、生まれてすぐには自分でエサを取ることが出来ず、自分で生きていくことができません。生まれた子どもが健康に成長するためには小児科が必要です。

 人類の病気との闘いは感染症です。今でこそ抗生物質や抗ウイルス薬がありますが、太古の人類と比較したら、体力も上がって感染に対して抵抗力があるかもしれませんが、昔はそういう薬もありませんし、今の人間と違って感染症は脅威でした。その中で内科学というものが確立しました。

 人類の歴史は悲しいかな戦争の歴史でもあります。怪我をした人を治療するために外科学が確立しました。

 すなわち産婦人科、小児科、内科、外科という4つの科が昔から医学として確立していなければ、我々はこの世の中に存在していなかったわけです。

 産婦人科の仕事は「産科」=妊婦さんの診察とお産。「不妊」=赤ちゃんが出来ない女性の治療。「婦人科癌」=女性特有の癌の治療。「更年期」=中高年の病気の治療。そして「老年期」=高齢者の病気の治療です。女性が生まれる時から亡くなるまで、すべてのトータルケアをしているのが産婦人科です。

理解されない女性の病気と産婦人科

 日本産科婦人科学会(日産婦)で男女共同参画・女性の健康週間委員会の委員長をしており、先日「女性の健康週間2014」のプレスセミナーを行ないました。

 何の活動かというと、世の中では産婦人科に対する認識が極めて低く、特殊な科としてしか認識されていないので、女性の病気と産婦人科を正しく理解しましょうというもので、数年前から活動しています。それにも関わらず、なかなか一般には産婦人科というものが正しく認識されていない。それが日産婦の悩みの種で、小西郁生理事長はじめ、世間一般にもう少し産婦人科を認識してもらうために、どうにかしなければとの思いがあります。産婦人科の全体像が分かって初めて、産婦人科の疾患が理解出来ると思っています。

 昨年産婦人科で話題になったことが5つあります。「風疹の流行」、「卵子の老化」、「出生前診断」、「HPVワクチン」、「乳癌を含めた女性の遺伝性がん」です。この5つに共通するのは、20代から40代の女性に当てはまることです。

 その話題の中から先日のプレスセミナーで3つ、「風疹の流行」、「卵子の老化」、「出生前診断」を取り上げました。

 「卵子の老化」と「出生前診断」は、日本人女性の社会進出に伴うキャリアアップによる高齢出産の増加が大きく関係しており、日本社会の変化といえます。それを国が十分にフォローできていないわけで、そこが問題です。だから日産婦がそれを世間に正しく認識してもらおうという努力をしています。

 昨年、風しんが大流行しました。今回の流行の特徴は、従来のワクチン政策によって接種する機会に恵まれなかった成人男性を中心に起こり、その男性を通じて妊婦さんに感染して、先天性風しん症候群という奇形の赤ちゃんが産まれてくる原因となっています。これは厚生労働省の過去の施策の結果です。

 「HPVワクチン」については、ワクチンを接種した若い女性が原因不明の疼痛や運動障害を訴えるケースが報告され、厚生労働省は全国の自治体に対しワクチンの接種勧奨の一時中止勧告を出しました。

 一方、海外では子宮頸癌予防のためにワクチン接種が進行している中で、日本の現状は例外的で、将来的には日本だけが罹患率の高い国になるのではないかと危惧しており、早期の解決を希望します。

若いうちから「がん教育」を

 「乳癌を含めた遺伝性がん」の話題についてですが、がんは5%〜10%くらいが遺伝性がんと言われています。

 がんになる遺伝子が分かっているがんは、産婦人科でいえば卵巣癌、子宮体癌、そして乳癌などの一部です。しかし裏返して言えば、残りの人は生活習慣などでがんになると言えます。10代から40代くらいまでにどういう生活を送ってきたかで、がんになるかどうか、なるとすればどんながんかが決まります。

 しかし「がん教育」というものはあまりされていないのが現状です。市民公開講座などをしますと、来られるのはほとんど中高年の方です。

 中高年がどんながんになるかは、それまでの生活習慣によってほとんど決まってしまいますので、若いうちにがんにつながる生活習慣に気が付くことが出来るかどうかが重要です。

 一つ例を挙げますと、子宮頸癌になる要因というのがあります。早くから性交渉を始めた女性、性交渉のパートナーが何人もいた女性はリスク因子のひとつであることが指摘されています。若いころはあまり気にしないかもしれませんが、将来、妊娠や出産を考えた時に、もしかしたら子宮頸癌にかかって子宮が無くなるかもしれないということを皆さんあまり認識されていません。

 2008年から高校に出向いて、10代のうちからの「がん教育」につとめておりまして、多くのがんが若いうちの生活習慣や生活環境に起因することなどを説明しています。若いうちからいかにがんについての教育をしていくかが重要だと考えています。

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 私は日本婦人科腫瘍学会の中で、治療ガイドラインを作る委員長として、日本の婦人科のがんの治療指針を決める立場にいます。婦人科のがんの場合、今どういうことが話題かと言いますと、子宮や卵巣を可能な限り温存出来ないかということです。

 多くのがんの治療の場合、腹腔鏡手術が用いられています。ロボットを使った手術も最近行われていますが、残念なことに、産婦人科のがんの手術で腹腔鏡手術は良性疾患だけ保険適応、ロボット手術は保険の適応外になっています。我々は出来るだけ早く保険の適用がなされるように訴えています。

生命の誕生に立ち会う仕事

 人の身体を直接診て、生命に関わることが出来るのは、医療関係の仕事だけだと思います。

 現在の医療は医師だけが中心ではなく、看護師、薬剤師、ケースワーカーなど周囲のスタッフとのコミュニケーションを取りながら、最終的には患者さんの気持ちに立つ治療に当たらなければなりません。

 我々は赤ちゃんとお母さんという二つの生命を助けなくてはなりませんので、とても大変な科だと言えます。大変なエネルギーを要しますし、過酷な労働条件かもしれません。しかし生命の誕生に立ち会うことが出来る仕事で、唯一「おめでとう」と言える科です。

 私は32年間産婦人科にいますが、大変やりがいのある仕事で、生まれ変わっても産婦人科の医師になりたいと思っています。


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