- 飯塚から博多に引っ越してきて2年になる
- 隣人は、夫が脳溢血で倒れて赤坂あたりの高級マンションから越してきた50代の夫婦や、早朝からバスでプールに出かける85歳の女性、深夜に出勤する外国人などさまざまで、夏には公民館の祭りでオヤジバンドがエレキギターをテケテケテケと鳴らす土地柄だ
- 斜め向かいのアパートで一人暮らしをしている65歳の男性と知り合った。佐賀の出身で、「節約すれば年金でどうにか生活できる」と言い、今は亡き父親を、「思い出したくもない」と言って涙を浮かべた
- 偲んでのことではなく、幼少のころ父にからかわれたひと言が今も心の傷になっていた。「同じ墓には絶対に入りたくない」と顔をゆがめた
- 人はどれほど経験を重ねても、叩けばすぐに壊れるガラス玉だ
- そのあと彼は子供のように笑い、「元気な時に気が短かったやつは、歳を取ってから泣き虫になる」と言った。いたずらっ子のようなその顔を見て、彼はこんな子供だったのだと理解した。「三つ子の魂百まで」とはこれを言うのだろう。