尾道市立市民病院 院長 宮田 明
1998 ~ 2000・2002 ~ 2004 福山医師会理事 2004 ~ 2010・2013 ~岡山大学医学部非常勤講師 2006 ~ 2010 岡山大学医学部臨床教授 2005 ~社会保険診療報酬支払基金広島支部審査委員
尾道市立市民病院では昭和44年の救急告示以降、救急医療に力を入れている。昭和58年に移転した現病院は、救急車の動線に配慮した設計がなされている。平成17年3月にはICU4床、HCU25床などを備えた救急棟を建てた。
病院では昨年9月1日からCCUを廃止し、ICUを8床へと増床した。人口減少のため近隣の病院で医師が減少し、近年救急を受け入れる件数が大きく増えたことによって、ICUの必要性も高まったためだ。平成24年度には2千958台の救急車を受け入れており、ICUの平均稼働率は94・4%だった。特に心筋梗塞や脳卒中を救急で受け入れることのできる病院が、市内にはほかにJA尾道総合病院1施設しかないため、14万5千人の人口を擁する尾道市には不足しており、公立病院のICU強化は待ち望まれたことだった。今回体制が整い、増床が可能になったという。
一般病床330 床は7対1看護。緩和ケアや化学療法の認定看護師が計9名おり、看護部長は副院長を兼ねている。「チーム医療の要は看護師の質です。当院の看護部は優秀で、助けられています」と院長。また「院内で最も多い看護師をコントロールする看護部長が、経営に深く関わることはメリットが大きい」とも。
以後はこれまでCCUで診ていた患者もICUで見ることになった。特定集中治療室管理料の加算が増え、病院の経営改善に寄与していると宮田院長は言う。
併設する尾道市立夜間診療所は、今年4月から3kmほど離れた尾道市総合福祉センター敷地内に移転させる。病院では今後、夜間の二次救急患者への対応に力を注ぐ。
しかし病院では、救急医療だけに力を注いでいるわけではない。平成22年にはリニアックを更新し、翌年には集学的がん治療センターを開設している。「今後はさらに質の高い癌の診断・治療ができることを目標にしています。昨年3月に最新鋭の320列CTを導入しました」と院長は話す。
院長になった初年度は、病院を広島県指定がん診療連携拠点病院として認めさせることに奔走した。院長自身、血液癌に長年携わってきたため、癌治療には特別の思いもある。「癌を診るために大事なことは、医師の確保です」と院長は言う。
平成24年には血管外科および形成外科を開設し、標榜科目を25科に増やすなど、癌治療に限らず医師の補強には熱心だ。尾道医療圏に血液内科を診れる病院は現在ない。院長の専門でもあることから、将来的にはぜひ作りたいと意欲を燃やす。
病院は岡山大学の関連病院で、現在所属する医師のほとんどは同大の出身。
医局に人員の増強を頼みに行く際は、市長もすすんで同行するという。(取材=平増)