社会医療法人敬和会 大分岡病院 院長 森 照明
医療の質に向上 | 経営基盤の確率 | 地域への貢献 | 職員の人材育成 |
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森院長はインタビュー当日が誕生日。国立西別府病院院長、湯布院厚生年金病院院長を経て2013年7月1日に大分岡病院の院長に着任した。
当院は「地域医療支援病院」として、大分市東部地区を中心に、約170( 歯科を含む) の地域医療機関とネットワークを結び、紹介患者を受け入れ、治療後、地域にお戻しする役割を担っています。
特徴として、循環器内科と心臓血管外科の緊密なチームで診療する「心血管センター」、糖尿病や閉塞性動脈硬化症に伴う足病変を治療し、完全治癒率80%以上の成績を収める「創傷ケアセンター」、頭部から体幹部のがん治療を行う「サイバーナイフがん治療センター」を中心に、整形外科領域でも先進的かつ安全安心の医療を提供しております。
また、二次救急指定病院として、年間2千台を超える救急車の受け入れを行っています。これは、大分県内の民間病院で最も多い搬入台数であり、地域医療に貢献しております。
さて、当院は急性期の病院ですが、社会医療法人敬和会の法人内には大分東部病院、介護老人保健施設大分豊寿苑があり、急性期から在宅までのシームレスの理想的な医療を目指しており、さらに4月からは東部病院に回復期リハ病棟を開設しますので、リハビリテーションにおいても充実した診療が実施できると考えています。
敬和会3施設の統括院長も拝命しておりますので、東部地区における地域包括ケアシステムの構築をさらに推進し、患者さんと地域に貢献することが私の使命と考えています。
―院長に着任して約半年。今後のビジョンを聞かせて下さい。
まず、当院の理念「国際標準の医療を提供し、患者さんの健康寿命を延ばすことに貢献」を実行するため、現状の病院システムの改善、効率化と各センターの充実、情報公開と情報共有に努めたいと考えています。
さらに敬和会3施設の交流も進めたいと考えています。3施設間に定期シャトルバスを巡回し、人事交流、業務提携も進めます。当院には東部病院と提携した「消化器病センター(仮称)」を4月から開設予定です。また4月からは東部病院に総合リハビリテーション・ケアセンター(仮称)が開設される予定ですので、同時に3施設間に共通の「摂食・咀嚼・嚥下支援センター(仮称)」、「排尿リハビリテーション・ケア支援センター(仮称)」も開設したいと考えています。
さらに、病院の医療安全管理は私の専門分野の一つであり、10年来の模擬患者養成や、「大分県医療コンフリクトマネジメント研究会」も軌道に乗ってきています。昨年12月に立ちあげた「日本医療メディエーター協会大分部会」の活動も注目されており、今後さらに推進したいと考えています。
一方、大分県スポーツ学会理事長として、大分県看護協会と共催で今までに約400人のスポーツ救護ナース・救護員を養成し、スポーツ現場に派遣してきました。今後さらにスポーツ歯科の先生と協力し「大分県スポーツ医科歯科研究会(仮称)」を立ち上げたいと考えています。大分県には大分トリニータをはじめ、サッカーやバスケット、バレーボールなどのプロクラブもあり、スポーツに特化した医科歯科連携は日本初の面白い取り組みになるのではないかと考えています。
さらに、当院では1年前より、病院活性化のために、全職員に「フィッシュ哲学」を必修研修として行なっています。
「遊ぶ」「楽しませる」「注意を向ける」「態度を選ぶ」という四つのマインドをもって仕事を行ない、組織を活き活きと元気で笑顔の多い場にしようという取り組みです。この活動を異業種の方々にも拡げ「おおいたフィッシュ哲学学会(仮称)」を立ち上げ、地域の活性化につなげたいと考えています。
以上、いろいろな方のご指導、ご協力をいただきながら、さまざまな取り組みを実現してまいります。
―病院づくりに4つのキーワードを掲げていますね。
私の病院運営の基本方針に「医療の質の向上」、「経営基盤の確立」、「地域への貢献」、「職員の人材育成」の4つを掲げています。これらは同時並行、総合的に向上を目指すことが大切だと考えています。
医療の質に関しては、当院はJHQC( 日本版医療MB 賞クオリティクラブ) からAクラス認証を受け、 日本医療機能評価機構の「病院機能評価ver.6.0」の認定も取得しました。今後はさらにJCI=Joint CommissionInternational 認定に向けて取り組んで行きたいと考えています。おかげさまで、当院は今年5月に創設60周年を迎えます。地域の皆さまに育てていただき、見守っていただき、歩んでこられた60年。これからは、地域に恩返しができるように、職員一人ひとりが日々精進を心がけて、信頼していただける医療を提供してまいります。
―先生はナショナルチームドクターとして、卓球の世界選手権に同行されたり、ご自身も卓球が脳に及ぼす効果を研究されています。
1999年から最近まで日本卓球協会のスポーツ医学委員長とナショナルチームドクターを務めていました。2013年5月には、福原愛選手らとともに、パリで開催された世界卓球選手権にスポーツドクターとして同行しました。
私自身も50歳の時に大分県代表として国体に出場し、現在は医師の九州山口大会で5連覇を達成しています。
以前に卓球と脳の関係について、約2千人を対象に「仮名拾いテスト」を実施し、卓球競技者は対照群に比べ成績良好で、卓球が認知症予防に役に立つという内容を日本臨床スポーツ医学会で発表しました。また、卓球運動時の脳血流やPET検査から、脳幹部や小脳の血流が増えることや、上手な選手は帯状回が活発に活動している事等もわかりました。
今後も、「スポーツと脳」に関する講演も、精力的に行なっていこうと思っています。