医療法人 みなみ 粕屋南病院 院長・理事長 玉井 収
―病院の特徴は。
全206床の医療療養型病院で、慢性期の患者さんを受け入れています。特色としては、私が大学で循環器と腎臓内科を学んでいましたので、腎臓病や血液透析の患者さんが多いです。
リハビリ部門も充実させていまして、理学療法、作業療法、言語聴覚療法という3つの体制で、脳卒中後のリハビリや、長期透析が必要で入院が必要な患者さんなどを主に診ています。
―透析室に工夫をこらしているそうですね。
透析に限らず長く入院される方が多いので、自宅のように居心地のいい病院でありたいと思い、この10年で3、4回改修を重ねてきて、充実してきたと感じています。
―広報誌「みなみ」を拝見しました。懇親会の様子なども掲載され、チームワークがよさそうな印象を受けました。
すべて職員が原稿を書いて写真を撮り、編集までしています。よそにはない広報誌だと思います。
チームワークの向上には、仕事場以外での職員同士の交流も必要だと思っていますので、懇親会の際には病院から補助をしています。
またメンタルストレスを軽減するために、産業カウンセラーに入ってもらい、定期的に各職員にカウンセリングを受けてもらっています。カウンセラーは外部の方なので、院内のしがらみなどに関係なく話してもらって、少しでもストレスの軽減をしてもらえればと思っています。
―地域との連携について。
地元の患者さんを受け入れることを特に大事にしています。老人クラブや民生委員の方々とのお付き合いも大切にしていますし、ボランティアの方々の受け入れもスムーズにできています。食事教室も定期的に行なっています。地元の患者さんを中心に診させていただき、ずっとこの場所でやってきた病院ですので、なるべく受け入れがスムーズにできるようにしています。
―病院の将来構想は。
ある患者さんから「よその病院からここに戻ってきたら、家に帰ってきたみたいでホッとした」と言われたことが、ずっと頭に残っています。在宅での看取りを国が進めている部分もありますが、やはり、なかなか自宅で介護や看護をされるのは難しいと思います。当院のような長期療養型病院では、居心地の良さが必要ですし、看取る際も家にいるような気持ちで、最期を迎えられるような環境に少しでも近づけたいと思っています。
常に「自分が患者だったらどんな病院に入院したいか」を考えています。環境が良くないといけないし、病室もきれいでないといけません。食事もおいしくないと困る。
治療食はおいしくないというイメージがありますが、栄養士、調理師が誇りをもって、外来に食事のディスプレイをしています。それによって提供する側にも緊張感が出ますし、食事の内容をみて感想などをもらえることもあるので、その取り組みを10年ほど前から続けています。少しでも心地よく治療をうけてもらえるような病院を今後も目指していきます。
―在宅ケアをされているそうですが。
在宅部門には訪問介護、看護、リハビリと3種類あります。介護保険の改正などで経営が苦しくなり、多くの施設が閉鎖になりましたが、当院としましては、患者さんからのニーズがありますので、採算度外視で在宅ケアを続けています。今後は、例えば腹膜透析の在宅ケアなども考えています。
―若い医師の方々へのメッセージを。
多角的な視点で医学に取り組んでほしいと思います。いろいろな施設で働いて、そこで先輩たちを見て、学問面や臨床面を学び、視野を広げてほしい。チャンスがあれば海外に留学するのもいいと思います。
忘れてほしくないのは、患者さんの立場に立つことの大切さです。認知症の方がつじつまの合わない話をした時も、それは病気の一症状なので決して笑ってはいけません。常に患者さんに敬意を持って接してほしい思っています。