福岡市医師会長の江頭でございます。年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
さて、今年は干支の折り返しで、物事が始まる年でもある31番目の甲午のうま年です。昔からうま年は世の中が大きく動くとも言われています。
今年の日本は国際関係や経済などで大きな変化があるかもしれませんが、医療界も間違いなくこの動きに巻き込まれることになると思います。
昨年7月の参院選では、与党の自民党と公明党が大勝して衆参のねじれが解消したため、安倍政権は特定秘密保護法案の強制採決に見られたように、今後ますます強気の政策を推し進めてくるものと思われます。
この流れは医療政策にも及ぶことが容易に予想され、経済財政諮問会議の復活や、医療関連産業を成長牽引産業と位置付けた日本再興戦略の策定など、医療の産業化、規制緩和に向けた動きが強まっております。
しかしながら、昨年秋にアメリカにおいて医療保険改革法、いわゆるオバマケアを争点とした国の暫定予算と債務上限問題をめぐる与野党の強硬な対立により、政府機関の一部が閉鎖され、債務不履行の危機に晒される一連の混乱を見れば分かるように、一旦、市場原理に支配されたアメリカのような非効率的な医療システムには様々な利害関係がはびこっているため、そこから脱却することは極めて困難となります。
私たち医療従事者は、アメリカが辿った医療改革の失敗の歴史に学び、「国民皆保険制度」を揺るがすような改革や政策に対してしっかりと監視し、行き過ぎた規制改革とならないように歯止めをかけることが必要であると思います。
最後になりますが、我が国は高齢者人口が25%を超え、かつてどの国も経験したことのない超高齢社会が到来しています。何もせず、伯楽の出現を待つ時間はありません。本年が、私たちの団結協力を基盤とした力強い社会的共通資本としての活動により、明るく活気のある社会を創る年になることを願いますとともに、皆様方にとりましても幸多き年でありますよう心より祈念申し上げます。