臨床心理士の想い18 坂梨 圭

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患者になる⑤

 「痛み」がでると病院に行くことを考える。

 痛みの中でも耐えられないのは歯の痛みである。クリニックの中でも、歯医者をどこにするのかは、すごく迷う。

 福岡市のある区では、歯科クリニックはコンビニよりも多いという。今では24時間開院しているところもある。昔の歯医者さんのイメージと様変わりである。

 私の子どものころは、歯医者さんは怖いというイメージが強かった。歯を削る「キーン」という音、そしてちょっと怖い感じの先生から、もっと口を開けて」と叱るような感じで言われる度に、恐怖感が植え付けられた。

 小学校5年生の秋のことである。虫歯の治療途中であった。午後4時に歯医者に行く予定だった。何回かの治療で、痛みは治まっていた。学校から帰ってテレビをつけると、プロ野球の日本シリーズが白熱していた。当時、ジャイアンツファンだった私は思わず見入ってしまった。

 試合が終わったのは午後5時ごろ。気づいた時には、歯科医の予約時間はとっくに過ぎていた。今でもその時のことは強く印象に残っている。

 「遅れて行ったら怒られるだろうな。いやだな。痛みがないからやめておこう」と思い、歯医者に行くのをやめてしまった。結局、次に痛み出したのは中学校1年生の時だった。時すでに遅し。その歯は抜くことになった。

それから今になるまで、何度となく歯医者に行ったが、いつもどの歯医者に行くのかを迷う。必要以上に削りすぎではないかと思ったり、すぐに抜かれたり、どの治療法がよいのか、素人にはよく分らない。困ったことに、抜いた歯は、二度と元には戻らない。

 今、通院している歯医者さんは、非常にていねいである。そして治療する前に、いろいろな可能性を話してくれる。予約して行けなくなっても、別に何も言われることなく、いつものように治療を続けてくれる。

 一度、予約を忘れて行けなくなったあとは、罪悪感が先に立ち、ますます行けなくなってしまうのである。その意味では、「来なかったことに触れられないこと」は救われる。

 「心の痛み」を救うことが、私たち臨床心理士の役割である。予約して、連絡もなく休まれたときには、きっと私が感じた気持ちなのと同じだと思う。今の歯科医から学ぶことは多い。

 いつの間にか師走も終わり、あと10日で新しい年。きれいな歯で新年を迎えたい。


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