医療生活協同組合健文会 宇部協立病院 院長 松永 信
JR宇部駅から宇部線に乗り換え、宇部岬駅で降りると、病院まで徒歩10分。病院の前は片側一車線と特別大きな道路ではないが、宇部空港や宇部港に近く、交通量は多い。救急車が通るにも充分な広さがあり、年間900件の救急車を受け入れている。病院の向かいには、同法人内の在宅支援センターもある。
院長の趣味は体を動かすこと。学生時代から空手をやっており、今も山口大学医学部で空手部の監督を務めている。酒は嫌いではなく、病院の職員から誘われたら、出来るだけ断らないようにしているそうだ。山口県にはおいしいお酒が多いらしい。
―ここは組合員が利用する病院ですよね。
いいえ。生協ですが、特に組合員だけとは限っていません。
国の指導では外来8割、入院10割と以前は定められていましたが、最近ゆるくなりました。組合員の受診率が8割くらいですけどね。組合員優先の医療をしているわけではなくて、必要な方はどなたでも利用していただけます。
入院された方には一応「組合員になりませんか」とお勧めしていますが、強制ではありません。最近では在院日数も短いので、組合員は8割いませんね。特に、当院の入院経路の3分の1は救急車です。年間4千人の救急患者を受け入れています。救急は組合員に限って相手にすることが出来ませんから、当然入院には、非組合員の患者さんも増えます。
療養病棟の方では、98%ぐらいの患者さんが入会されています。
―病床数を教えてください。
一般病床が105 、療養病床が54の計159床です。
ケアミックス病院の形態をとっていることは、本院の大きな特徴です。
宇部市内は専門分化している土地柄です。厚労省も自分の専門分野に絞って医療活動を行なうことを推奨しています。
その中にあって当院は逆行するようですが、救急から療養、訪問診療まで、地域のさまざまな要求に出来るだけ応える、オールラウンドの病院であろうと努力しています。何かに特化をしないところが特徴だと考えています。
当院は2次救急をやっていますが、脳外や循環器の治療が出来る施設がありませんので、高次の医療は他院にお願いすることも多いですね。
―今年電子カルテを導入されたそうですね。
病院の外壁には、医療生協のマークが描かれている。病院は昭和57 年6月に50 床の内科単科の病院として開設された。現在は厚生労働省指定臨床研修病院(管理型)、日本医療機能評価機構認定病院、救急告示病院。
9月から開始の予定だったのですが、難しかったので10月から、電子カルテを導入しました。準備は数年前から進めていたのですが、導入が決まったのは去年10月の管理会議です。だから短期間で入れた印象が職員にはあるかも知れません。診療部門には反対する医師もあり、なかなか導入が決まらなかったといういきさつがあります。私自身、他院の支援に行った際に電子カルテを触ったことがありましたので、電子カルテの操作が容易ではないことは理解していました。
ベンダーさんが言われるには、当院はスムーズに運用している方だそうですが、みんな初めての経験ですからなかなか大変です。紙カルテの方が便利なところもありますから、診療部は特に手間取っていますが、事務や技術部では能率が格段に上がっています。看護師も最近は書くことが増えましたし、若い人が多いので、うまく対応して能率を上げています。
当初はオーダリングシステムと看護支援システムを入れようという計画だったのですが、2つ入れるならば電子カルテを導入する方が費用の面でも、安全性を向上させる上でも良いだろうということになりました。
1か月使ってみた感想として、一つの入力に対して2回も3回も確認を求めてくるので、これに慣れるのに時間がかかりそうです。安全性のために必要なことですけどね。患者さんの相手をしながら入力するのには慣れが必要です。圧倒的に医者の作業が増えています。
私もそうですが、当院は生え抜きの医師が多いので、他院で電子カルテを扱ったことのある医師が殆んどいません。以前は院内のイントラネットで情報共有をしており、コンピュータの操作にはある程度なれていますが、電子カルテは別物です。診療部の習熟が今後の課題です。
現在は代行入力の方を4人雇って、外から手伝いに来ていただいている年配の先生や、外来患者の多い先生などをサポートしてもらっています。
外来がもっと混乱するだろうと思って「ご迷惑をおかけします」という案内を出していましたが、何とかトラブルなくやれています。1か月導入を延期した成果が出ているのかなと思っています。
―外来はどのぐらいの医師が配置されていますか。
内科が5診。整形外科2診、外科が1診、精神科が1診です。整形外科が2診やるのは、週に2回です。
―代行入力が付かない先生の方が多いですね。
まだ苦手な人もいますが、「電子カルテが絶対嫌だ」という医師はいませんから、4人で大丈夫そうです。
今後は電子カルテのシステムをうまく利用して、地域との情報共有を出来ればいいなと考えていますが、今はまだ課題というところです。
―他に今後の展望として何かありますか。
電子カルテ導入が一つの区切りだったわけですが、あとは2025年問題に向けてどうポジショニングをとるかということがあります。
超高齢化社会に向けて、病院の体制をどう作っていくかということを考えています。
今一般病棟は10対1看護ですが、来年診療報酬改定でその在院日数も短くなるかも知れません。在院日数の問題で、10対1看護を今後も維持出来るかどうか、という課題も当院にはあります。