臨床心理士の想い17 坂梨 圭

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患者になる③

 2年前、2011年11月3日の午後のことである。仕事がたまって徹夜の日が続き、やっと休めた11月3日。晴天だった。

 気分転換に久しぶりに、ビッグスクーターに乗り、山に出かけた。秋の紅葉と山のひんやりした空気は気持ちを癒してくれた。久しぶりのツーリングで、スピードを出した時の風の心地よさは最高だった。

 帰り道、買いたい本があるのを思い出した。本屋に寄るか、このまま帰るか、少々迷った。しかし、思いついた時に買っておかないと忘れてしまう。そう思い直した。

 本屋を出る時、右左を確認して左にハンドルを切った。その時、歩道の段差にハンドルをとられてしまい、反対車線に飛び出してしまった。気づいた時には軽自動車が近づいていた。

 「あっ」。そう思った瞬間、私はスクーターから飛んでいたようだ。ようだというのは、そのあと歩道に座るまでの記憶が全くないのである。

 前を見るとスクーターの前の部分が大きく変形し、衝突した車が止まっていた。運転手が「大丈夫ですか」と声をかけた。

 けがは右足のすり傷だけで、痛みはそれほどなかった。普通なら左足を骨折してもおかしくないほどの事故なのに、右足のすり傷だけだった。空中を飛んだらしいが、その時の記憶がない。

 不幸中の幸いで、消防署の前だったため、署員と救急隊がすぐにきてくれた。消防隊員はさすがである。ほかの車を停めてバイクのかけらを集めるよう指示し、バイクもすぐに歩道の横に寄せた。救急隊員は私の意識を確かめ、救急車で運ぶかどうか尋ねてきた。私は大丈夫だろうと断った。

 こんな時に限って携帯電話も名刺もない。救急隊員と自動車の運転手に携帯を借り、自宅と保険会社とバイク店に連絡した。意外と冷静だった。

 念のため近くの整形外科まで歩いて行った。

 事故現場から徒歩で来た傷だらけの中年男を見た理学療法士が、「大丈夫ですか。すぐに看護師と担当の医師を呼びますので、このソファーでしばらくお待ちください」と優しく声をかけてくれた。その一言で、傷ついた心が随分癒された。

 傷を応急処置してレントゲンを撮り、足に裂傷以外の傷はないことがわかった。首のレントゲンは、「専門ではないので、今日撮っても、また撮り直すことになります。放射線の問題もあるので今日はやめておきましょう」と医師は判断し、次の日、その病院で専門医に診てもらったが、異常がないことがわかり心底ほっとした。そのまま北海道に出張に行くことができた。

 消防士の的確・迅速な指示、病院の丁寧な受付と診察。どんよりした心の中で専門職の人たちに救われる思いをした事故だった。人生何があるかわからない。そんな時、専門職の親切な対応は心を癒してくれる。それに気づかされた体験だった。


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