核兵器は廃絶できると信じます

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日本赤十字社 長崎原爆病院 院長 朝長 万左男

ともなが まさお=1943 長崎市生まれ。1968 長崎大学医学部卒、同原研内科に在籍する傍ら、原爆傷害調査委員会(ABCC) 研究員、文部省在外研究員( カリフォルニア大学ロスアンゼルス校血液腫瘍内科)、長﨑大学医学部附属病院副院長、卒後臨床研修委員会委員長 長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設長、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長などを歴任。2009 日本赤十字社長﨑原爆病院院長就任。
【主要学会】日本内科学会評議員、日本血液学会理事、日本臨床血液学会代表幹事、 日本網内系学会評議員、日本検査血液学会評議員、日本癌学会、日本癌治療学会臨床腫瘍データベース委員会専門委員、日本臨床腫瘍学会評議員、国際血液学会、国際実験血液学会、米国血液学会<ASH>、米国臨床腫瘍学会<ASCO>
【主要な学術活動】2003 年度日本臨床血液学会会長 1987 ~ 2006Japan Adult Leukemia Study Group(JALSG) 運営委員会副委員長 Lymphoma Study Group(LSG) 班員:ATL 研究代表者 2007 ~ 2008 年度厚生省癌助成金:白血病班長 厚生省特定疾患/特発性造血障害調査分科会班員( 再生不良性貧血・MDS担当) 第8 回国際MDS シンポジウム(Nagasaki2005)会長  1995 ~ 2005 原子力安全委員会専門委員
■核戦争防止国際医師会議(IPPNW)国際副会長、長崎市長平和推進専門会議委員、長﨑平和推進協会副理事長、核廃絶ナガサキ市民集会副委員長、如己の会理事長。

 長崎大学にある原爆の研究所で、僕は内科の教授をしていたんです。定年でここにきて5年目に入りました。今、新しい病院を建てる計画があり、被爆者にがんが多いので、がんに重点をおく病院にして、ホスピスも併設しようかとも考えています。

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―いま被爆者の状況は

 うちの病院の入院患者のだいたい3割から4割は原爆被爆者ですよね。その人たちのまた3割から4割ががんです。特に爆心から2・5キロ以内で被爆した近距離被爆者にがんが多いですよね。それから、1回姿を消していた白血病も高齢化に伴ってまた出てきました。白血病については、初期の山と後期の山と、2つ山があります。そして途中からいろんな臓器のがんが出てきます。

 がんは被爆から15年、20年くらいしてから出てくるんですよ。白血病は原爆の数年後から出てきて、それが終わったかなと思ったら今度は固形がんと呼ばれる、肺がんとか大腸がんとか乳がんとかがずっと増えてきたんですけど、それが今だに続いていますね。

 最近の特徴として、そのうちの10人に1人ぐらいは、最初とは違う2つ目、3つ目のがん、多重がんとになる人が原爆被爆者のがん患者の7%から10%くらいいます。

 1945年8月9日に放射線を浴びた人がなぜ68年も経って、未だに白血病になったり、がんになったりするのかという根本的なクエスチョンがあるわけですよ。たとえば10歳の子供を考えると、被爆した時は小学校5、6年生です。その子供の体で原爆の放射線は68年間、一体何をしてきたかということになります。

 その時に、我々の体の中で68年ものあいだ原爆の記憶を持っている細胞は幹細胞以外に考えられないわけですよ。その幹細胞の遺伝子が放射線で傷つけられている、それが今の考え方です。それだとぴたっと説明出来るし、ある程度証明されつつありますね。

 白血病は幹細胞の病気ということは20年ぐらい前からわかってるし、他のがんもそうだということが最近わかってきました。だから1回放射線を大量に浴びるとその健康影響は生涯続く、そういう考え方がはっきりしてきています。

―福島はどうでしょう。

 原爆の影響を見てきた我々としては、被爆線量が違いますからそれほど大きな影響が出てくることは考えにくいわけですよ。でも福島は人数が多い。子供も30万人くらい被爆してるでしょ。低線量被爆で遺伝子が傷ついてないかを長期戦でずっと検診でみていかないといけないです。

 福島の子供たちに精密な検査をすると、甲状腺がんが18人見つかっているんです。子供たちの甲状腺がんが2年で18人出るというのは、長崎や広島、チェルノブイリの経験からいうと非常に考えにくいことなんですよ。

 線量が非常に低い部分については原爆被爆者の研究でもよくわかっていないんです。放射線で起こるがんが特別なタイプだったらいいけど、一般の日本人がなってるものと変わらないわけですから、そこが放射線による発がんの研究の一番難しいところです。原爆病院はそういう被爆者のがんの診療をするのが重要な任務で、原爆の影響がいまだに続いてることの研究もやっています。

 放射能の監視も、国際的な共同研究チームでしたほうがいいと思います。国連やWHO、IAEAなどの人体影響の専門家も入れ、そういう共同研究グループが確認して一定の見解を出していけば信頼が増すと思いますが、その体制がちょっと弱いですね。

―エネルギーと放射能がごちゃまぜになって、うんざりした気分があります。

 正しい知識がないためにそうなるんです。日本人のあまり良くない性質として、ある程度のところで考えるのをやめて、もうどうでもいいやという感じになるところがありますよね。今度の問題は国民1人1人が核エネルギーをどう使うかを考えないと、日本の将来が決まらないと思います。それは教育の問題ですから、中高生に対する教育も大事だし、教育を終えた大人の、放射線や核に関する知識も必要です。原子力発電所を減らして、一番安全なやつだけを残し、太陽光などとバランスをとるのがいいと僕は思ってるんですけどね。

 もう1つは核兵器の問題があります。我々は今、北朝鮮をはじめいろんな国の核の脅威を受けており、じゃあ日本も対抗して持てばいいという考え方もあるようですが、原爆を体験した国民として核は絶対だめだという世論が依然として強いです。ではどうやって核兵器保有国に手放させるかです。地雷や化学兵器は、赤十字が作った人道法で国際的に禁止されていますが、核兵器に関しては超大国が法律化しようとしていません。でもそれじゃだめで、核兵器は非人道的兵器だという考え方が世界の流れとして強くなっています。

 日本に赤十字病院が92あり、世界で180か国くらいの国が赤十字連盟を作っています。スイスに本部があり、3年前に赤十字国際委員会の会長が、核兵器は1回爆発すると、医者も看護師も死ぬから、傷ついた人たちを救援出来ず、都市の破壊によって民間人も学校も病院も破壊されるから、非人道兵器だと声明を出し、赤十字は救護活動が専門の組織だが、それが出来ないと発表したんですよ。もう核廃絶しかないと。それをやりましょうと言いだして、今は世界中の核兵器を持たない国が一致団結して核兵器を非人道兵器にしようという動きが去年から急速に起こっています。僕も今年の3月、ノルウェーのオスロであった国際会議に行きました。

―日本人はどうすればいいでしょう。

 まず日本の現状を認識することです。日米安保条約に日本は米国の核兵器に頼るということが明記されていますから、準核兵器国なんです。核兵器は非人道的兵器だと思うなら、アメリカの核の傘に入ってる状況を克服して、そこから出るためにどうするかを考えなければいけないです。

 今、アメリカやロシアが核兵器を減らしており、究極的には核廃絶までいこうとオバマ大統領も言いますが、その速度が彼らの頭の中では何十年もかかるわけですから、それを速くしなければいけないです。その過程でいろんな難しい問題があるでしょうが、基本的には、人類は原爆の体験から、この兵器だけは手放したほうがいいと結論を出すことです。

 アメリカの南北戦争で奴隷制度が廃止されるまで200年かかっているんですよ。それと同じように核兵器も徐々に減らし、局地的な紛争はあったにしても、世界の平和は通常兵器で保つような仕組みを国連を中心に作らなければならない。核兵器は非人道兵器だということは、広島長崎であますところなく証明されていますから。

 今、国際赤十字連盟の会長は近衛忠煇さんという日本人です。彼も去年、ジュネーブでの総会で核兵器の廃絶を目指そうと言っています。

 考えてもみてください。長崎に原爆が落とされた時、地上にいた人の6割は女性でした。その時に10歳で被爆した人たちの平均年齢が78歳になってきているわけです。

 68年前に一瞬にして浴びた放射線の影響を、長崎広島の原爆被爆者たちはいまだに受け続けていることを、ノルウェーで、130か国の人たちに話してきました。

―世界の受け止め方はどうでしたか?

 みんな受け止めてくれます。問題は核兵器国です。将来的には絶滅させたいと言って国連の総会でも決議しているんですが、世界が平和じゃないから核で安全を維持しなければと考えるわけです。でも私は、時間はかかっても人類は核兵器を必ず廃絶するだろうと信じながら、今は原発の方の勉強をかなりやっています。核技術、核分裂のコントロールという意味では核兵器も原発と一緒ですからね。(聞き手と写真=川本)


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