みゆきの里会長/医療法人博光会理事長 社会福祉法人健成会副理事長 富島 三貴
みゆきの里グループは医療法人博光会、社会福祉法人健成会、株式会社笑健からなり、同一敷地内7施設で医療と福祉を提供する。中核の御幸病院は緩和ケア病棟20床、一般病棟30床、回復期リハビリ病棟85床、医療療養病棟51床の186床。急性期病院からの受け入れ先としても機能している
先代である父が、熊本県庁を定年退職したあと、この場所に病院を作りました。それから介護施設を順次整備して参りましたが、介護施設は病院に隣接している、つまり面的に整備するという考え方でした。
父は医者ではなく、県の衛生部と福祉生活部という部署で部長を務めながら、医療と介護が連携している「里」を作りたいと考えておりました。母が父に協力して探してきた場所がここでした。シラサギが飛んで来る自然があり、療養に適した良い環境です。近年は道路が整備され、連携できる病院も近隣に多く、地の利があります。保健・医療・福祉の有機的な連携で健康長寿のまちづくりをするのが、私たちの大きなミッションでもあります。
病院のあと、軽費老人ホームと特別養護老人ホームを作りました、そのあと認知症専門棟20床を含む100床の老人保健施設を計画。最初に作った御幸病院の開院から10年ほどあとになります。私は一般企業でマネジメントなどを勉強していたのですが、このころ帰郷して法人経営に加わりました。
平成元年に、WAC法(民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律)が出来ました。在宅サービス支援センターと有料老人ホーム、老人福祉センターと疾病予防運動センター。この4つの施設をこの地に整備しようという構想に当時の熊本市長が共感し、熊本市南部の拠点としてみゆきの里が認定されました。
有料老人ホームは高額で、入居者が集まらず倒産する事例が当時多く、熊本のような地方都市に馴染みやすいケアハウスを作りました。
在宅サービス支援センターは、熊本市が在宅介護支援センター事業を当法人に委託していたので、それを代用しました。残る老人福祉センターと疾病予防運動センターは、第3セクターで作ることになったのですが、市長の交代などもあって実現は難航し、結局は老人福祉センター、温泉利用型プログラム運動施設として社会福祉法人で整備しました。現在みゆきの里には、小規模多機能ホームとグループホームが一緒になった施設を加え、全部で7施設があります。また、今度少し離れた場所にサービス付高齢者向け住宅を作る予定です。
昨年父が亡くなり、私がみゆきの里の会長に就任しました。95歳ですが仕事をしていましたから大往生だと思うのですけれども、本当に100歳まで現役でやってもらいたいと思っていました。「健康長寿のまちづくり」を目指していますから、ずっと元気で長生きの手本になってもらいたかった。現在、社会福祉法人健成会の理事長は母が継いでいます。
みゆきの里は、医療法人、社会福祉法人、株式会社の3つの法人格が協力し合って、保健・医療・福祉を提供しています。
株式会社は、医療法人や社会福祉法人が出来ないヘルスケアサービスをやりたいために設立しました。統合医療の観点から食に関する分野を重視していますので、今は施設の自然食レストランの運営を受託したり、市内中心街でレストランを経営したりしています。
統合医療として西洋医学がベースですが、漢方や鍼が合う方もいますので、中国出身の漢方研究員が、漢方相談をしています。彼は代々続く漢方医の家庭に生まれ、河北省中医薬大学出身の中国では漢方医です 熊本市民病院の長尾和治元院長も、外科医ですが中国伝統医学を長く学ばれており、定年される時にぜひにと、御幸病院の名誉院長としてお迎えしました。今は院内に統合医療センターという鍼灸室があり、長尾名誉院長のほか鍼灸師が2名と漢方研究員が活躍してくれています。慢性疾患を癒すという視点からアロマセラピーも取り入れて、看護部の200名近くが勉強しています。
より健康でいる基本は食事と運動だと思うんですね。栄養科が取り組んでいるのが、薬膳やマクロビオティック、スープ食です。末期の方や高齢期の方に食べていただくことを考えた時、スープが一番食べやすく、滋養性も高い。それで月に1回、料理研究家の辰巳芳子先生の勉強会に鎌倉まで通って貰っています。もう5年になりますね。
3年前から認知症対策室を設置しました。認知症対策室長は年間200回くらい講演にでかけます。対象は自治体や一般の地域住民、ケアマネージャーや介護職、社会福祉協議会などです。県の認知症対策マニュアルも室長が作りました。認知症予防の取組みという意味では熊本でもナンバーワンに入るかなと思っています。認知症サポーターの証としてオレンジリングというものがあり、これを今期中に職員全員で取ろうと計画しています。