リンパ球バンク㈱ 藤井真則社長に聞く
1984 三菱商事入社。バイオ医薬品部門において欧米のバイオベンチャー2000 社以上と接触、医薬品メーカー、大学、政府研究機関等とも共同で新薬、ワクチン、診断薬などを開発。エビデンスを構築し、日本の医薬品メーカー等へのライセンス販売を行う業務などに従事。「薬でがんは治らない」現実に直面し、2004 三菱商事企業投資部門時代に「細胞医療によりがんから生還を目指す」リンパ球バンク株式会社に投資、同社社外取締役に就任。2007 同社代表取締役社長。現在に至る。著書に「がん治療の主役をになう免疫細胞」現代書林刊行1,365 円(税込)がある。
がん免疫細胞療法セミナーが8月31日、北九州市小倉北区のリーガロイヤルホテル小倉であった。台風15号の接近でJRが30分以上遅れるなどしたが、予定時刻に30人以上が集まった。会場受付の看板を見て急きょ参加を申し込んだ夫婦もいた。
講師でリンパ球バンク㈱の藤井真則社長は、標準治療の限界と免疫細胞療法の特徴について、およそ2時間話した。また、ANK療法に力を入れている、ひわき医院(北九州市戸畑区)の樋脇一久院長が症例を発表し、参加者の質問にも答えた。
講演終了後、藤井社長と当紙との一問一答は次の通り。
―講演で多い質問の順に3つあげてください。
①他の免疫細胞療法との違い、②なぜ健康保険が使えないのか、③標準治療のお医者さんにどう説明すればいいのかの3つです。
①は治療強度がまるで違います。ANKはがんを殺す細胞を大量にそろえ、強い免疫刺激によって高熱も発します。他の免疫細胞療法は多少なりともQOLの改善や延命を目的とするもので、実施しても、ほとんど免疫副反応がみられません。
②を一言でいえば医療制度上の問題で、効果のあるなしは関係ありません。本人の細胞を培養後に本人に戻す医療行為は、工場で量産する医薬品とは別物で、新薬のような薬事法に基く健康保険適用を申請することが認められないのです。
③については、一概には言えないものの、治療設計は患者さんごとにまるで違うので、まずANK担当医と面談し、自分の場合はどういう治療プランが提案されるのか、具体的な話を聞いてから考える方が現実的です。
一般に免疫細胞療法は、安全なものの治療強度が弱すぎると思われていますが、京都大学で開発されたANKは全く違うものです。また、ANK担当医は患者さんに、標準治療のスケジュールの邪魔をするようなことはありませんと説明をされているようです。
ANKに関心が高まる中で、培養センターの能力は十分ですか。
培養センターそのものは、十分な検証を経た市販の装置類を組み合わせれば増設可能です。細胞培養のハードウェアは世界標準が確立しているのです。技術者の育成は時間がかかりますが、能力を増強していくシステムはできています。
ANK療法を考える上で何が大切でしょうか。
標準治療を実施しておられる医師の皆様には、混合診療規制などの制度の壁を乗り越え、患者さんの命を救うという目的のため、協力体制を求めたいのです。患者さまは自由診療の医師と保険診療の医師との協調を望んでいます。患者さまに対しては、とにかく早い段階から、ANK療法実施医療機関にご相談されることを願います。相談するのに何も標準治療を断る必要はありません。