自分に何が足りないかを知る立場

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社会医療法人敬和会 大分東部病院 院長 下田勝広

【Profile】しもだ かつひろ
1957 大分市生まれ 1982 熊本大学を卒業し大分医科大学(現大分大学医学部)第一外科入局 1996~1998 マサチューセッツメディカルセンター(ボストン)消化器部門客員講師 2006 社会医療法人敬和会大分東部病院院長。

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 JR大分駅から4つ目の、大在駅で降りた。

 うだるような暑さとはこの日のことだった。

 ここから大分東部病院まで約2キロ。25分ほど歩くことになる。今日に限って鞄には重いノートパソコンがある。

 駅近くの大きな雑貨店で道を聞いた。

 「病院まで歩くんですか?」、「ええ。途中で倒れても救急車で早く行けますから」。そう店員を笑わせて店を出た。

 すると店の前にいた中年の男性が、病院まで車で送ると言う。店員との会話が聞こえたそうだ。

 病院関係者でも通院でもなく、「たまにはいいこともしておこうと思って」。そう話した。おかげですぐに病院に着いた。大分の人はやさしいと思った。車中では景気の話を聞いた。大分の建設業はあまり芳しくないらしい。(取材と写真=川本)

 毎月九州医事新報を楽しみに読んでいます。以前面識のあった先生方の近況を知ったり、記事の中で勉強させられることも多いです。小規模病院の大分東部病院にお見えいただいて正直びっくりしました。

地域医療とは

 「物質的に単に地域に存在する病院」ということではなく、病院が院外の社会と密接につながっている、関わっていることが大切です。病院外で地域の方々や行政、異業種団体の方と出会う機会をなるべく持つように心がけています。小さな公民館や福祉団体で健康講話をさせていただくことが多く、年10回程度は行ないます。その中で医療啓発はもちろんのこと、自分たちの病院が目指している医療を少しでも地域の方々に理解していただきながら、地域の要望も汲み取り、頑張っていこうと思っています。

院長になって

 外科医として大学病院にいた時は、手術症例数も多く、やりがいはとてもあったのですが、こちらに来て院長になってみますと、経営や労務、人事などいろいろな問題点を突きつけられて、自分の力のなさ、自分に何が足りないかを気づかされたことは大きな収穫でした。大学では全く気づかなかった。まあ、若かったせいもあるけれど、人生勉強も足りず、患者さんの本心が見えにくかった。ここでは患者さんが直接、気づいたことや思いを私に伝えてくれます。

 もちろん労務管理にも苦労しますが、職員の顔を見て、思いを汲んで配慮して、ひとつのチームにまとめていく能力が求められます。私も50歳を越えたころから、もっと若い時から人間力をつけるための勉強をしておけばよかったなと思うことが多々あります。技術や知識はもちろんですが、ベースには人情味や人間性が問われてきます。

 医療はいろいろな職種で成り立ち、それぞれの立場で病院を支えてくれているということは常々感じていましたが、さらに院長になって多くの優秀なスタッフに支えられていることを実感します。特に佐藤事務長と森看護部長(下の写真)は病院開設以来、私の最大の理解者、支援者、そして戦友だと思っています。

院長職というポストについて

 これは院長になってみなければわかりませんし、個人個人で価値観は全く異なると思います。私の場合は、病院経営や運営を通じて自分自身を見つめなおす修行のようなポストです。悩みながらも自分のいいところを見失わないようにしつつ何が足りないのか、足りないところをどうするのか考える、いろいろなことをトータルで学ばせていただく貴重なポストでしょうね。

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庶務課の後藤奈津実さん撮影

油絵を月に一枚

 以前は山登りが好きでした。自然の中に入ると景色、音、薫り、風、すべてが非日常でリフレッシュできます。3年前、下山途中に油断して転倒、左手の甲を骨折しました。以来季節の良い時だけハイキング程度で楽しんでいます。最近は時間もあまり取れないので、もっぱら油絵を描いています。ほぼ毎日30分程度、月一枚のペースで季節にあったものを描き、厚かましくも診察室に飾っています。職員の皆さんにずいぶん気を遣っていただいて講評をいただくのがささやかな楽しみです。

やってみたいこと

 何をやってもいいと言われても、やっぱり医療がしたいです。出来れば自分の体力、身の丈に応じた、ゆっくり話の出来る小さな診療所がいいですね。次の患者さんの時間を気にするのではなく、自分が必要とされる場所で、必要とされる自分であればいいかなと思っています。私の診察室では患者さんが症状以外の相談や悩み、愚痴を話すことが多いとよく看護師さんに言われます。待ち時間が長くなって大変申し訳ないんですが、いろいろな人間模様が好きなんですね。勉強になります。

それは自分自身に問うこと

 職員がもっとやる気になってほしいとか、モチベーションをあげるためにはどうしたらよいかなどと考えたこともありましたが、実は自分自身、院長自身が本当にやる気になっているか?「これは自分自身のことじゃないのか?」と問うことが最も重要なことではないかと最近思います。医療の原点を厳しく突き詰めれば、黙っていても院長としての圧倒的な存在感が生じ、現場は活性化すると信じています。しかしそのハードルはとても高く、私にとって永遠のテーマかもしれません。


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