福岡歯科大学医科歯科総合病院 病院長 小島 寛
福岡市早良区にある医科歯科総合病院は、歯科主体の病院でありながら日本医療機能評価機構の認定を受けている。審査基準は医科を想定してされるため、歯科を中心とする病院がパスするケースはほかに数例しかないという。つまり医科の病院と同等の機能を持っており、また歯科自体も、感染症対策などが高いレベルで行なわれていることを意味する。総病床数50床。歯科13の診療科に加え、内科、外科、心療内科、耳鼻咽喉科、形成外科、美容外科、 眼科、麻酔科、放射線診断科、小児科、整形外科の11診療科が開設されている。
―医科と歯科が連携している病院だそうですね。
私立歯科大学の付属病院で、内科外科、眼科と幅広く医科の診療をやっている病院は他にないと思います。
当大学は「口腔医学」をスローガンにしています。平成20年から文部科学省の大学間の連携事業として助成金をいただき、カリキュラム作成などについて全国の歯科系6大学と、福岡大学医学部と連携をしています。
4月に小児科と整形外科を開設した理由
―今年4月から小児科と整形外科を開設されていますね。
小児科は治療上、連携が必要な場合があるんで治医科大学にいた時、歯茎の出血が止まらない子供がいて、歯科に助けてもらった、という話をされました。
医科側から見ると、治療する上で感染があっては困る状況がありますよね。例えば骨髄移植でリンパ球がほとんどなくなる時や、心臓の手術後に血中に菌が入っては困る、など。体内へ菌が入る経路を考えますと、歯科の領域から、という場合も少なくはありません。血小板がない紫斑病の子供や、血友病でもそうだし、再生不良性貧血の子供もいます。乳歯が抜けそうという時に、そういう病気の場合は歯科で準備を整えて処置することになります。
小児科を設置すれば、よそでは出来ないような総合的な医療が可能になるだろうなと思います。小児科に限らず歯科医は充分な医科の知識を持っていた方が良いんです。
もう1つの整形外科は、時々投書箱に要望が入って、患者さんからの期待がありました。
―歯科衛生士の確保は。
当大学と同じ福岡学園の中に福岡医療短期大学があり、そこで歯科衛生士を育てています。看護師は普通に募集し、ドクターは福岡大学と九州大学の診療科と提携して来てもらってます。福岡歯科大学の医科の教授の指導のもとで診療していただく形です。
―北大小児歯科にいた時は、小児科医が教授だったそうですね。
不思議な教室でした。北海道大学に小児歯科が設置された時の初代の教授は小児科の先生した。突拍子もないことなので、随分と議論がされたようです。歯科は技術教育が多くの時間を占めていますが、小児科医にはそれが指導できませんから。結局、その教授の下に、東京医科歯科大学から来た小児歯科の先生が付きました。
教授は当然医学部の先生とのつながりがあったので、基礎研究を医学部でやるチャンスをもらいました。病理なんですけど、医学部の大学院生に混じって一緒に仕事していたんです。今この大学では、歯科中心だと言いながら、医科の診療科がいっぱいある。私は大学院のころから医学部で仕事をしていたので、それが「垣根がない」という考えの原点になっているのかなと思います。
―何を目指しますか。
今まで子供の話ばかりしてきましたが、特に高齢の方はいろいろな基礎疾患をかかえ、加えて歯を治したいということで来院します。その疾患を治療するわけじゃないですが、対応する歯科医が疾患のことを充分わかっていることが望ましい。主事医の医科の先生との対診をきちんととって、もれなく情報交換出来るということがあって初めて良い歯科治療が出来る。当院は歯学部の付属病院という関係で、96人の学生を立派な歯科医師の卵として育てていかなきゃならない。
―趣味は何でしょう。
ゴルフを少し。北海道のゴルフは夏も爽やかにできますから。こちらに来た時、「まずは医局を整えよう」と考え、ゴルフバックは北海道に置いてきましたが、「みんなと仲良くなるのが先だ」と言われました。それで急きょバックを送ってもらったんです。もう25年も使っているゴルフ道具が、今は福岡の家にありますよ。(取材と写真=平増)