小林市立病院 事業管理者 坪内 斉志
入院の必要がない患者は逆紹介する
宮崎県小林市は熊本県と鹿児島県との県境を持ち、また宮崎市からは遠く離れている。人口は5万人と少なくはないが、高齢化が進んでいる。人材の流出も著しく、看護師の確保も難しい。
147床の小林市立病院は、そんな場所で地域医療支援病院の認可を受けた。救急に力を入れている。今年の6月から回復期リハビリテーション病棟も設けた。西諸医療圏(小林市・えびの市・西諸県郡高原町)では最も大きな病院だ。
脳外科や循環器外科はありませんが、小さな病院にしては手術が多い病院です。外科は私を含め常勤5名、非常勤3名の体制です。整形、泌尿器科は常勤で2人ずついます。整形の大きな単科病院が近隣にありますが、合併症の患者さんは当院に来ます。泌尿器科も周りに手術出来る病院がありませんので、充実しています。
当院は鹿児島大学の関連病院ですが、県外ですので、診療科目によっては手薄になってしまうこともあります。3年前に4人いた内科医が、野本浩一先生を除きみんな鹿児島に帰ってしまいました。3か月で逆紹介を千500件ほどやったようです。
野本先生は当時、当院の事業管理者だったのですが、1人で内科を切り盛りするには負担が大きいというわけで、副院長だった私が事業管理者になりました。兼務で7代目の院長になります。現在も定年を延長していただいて、内科は野本先生お1人にお任せしている状態です。消化器に関しては、我々消化器外科が診ることで対応しています。外科も鹿児島大学からは、今は私と徳田浩喜副院長の2人だけになってしまいました。産婦人科はなくしましたし、小児科は宮崎大学から非常勤で来てもらっている状態です。
鹿児島大学から派遣してもらっている先生もまだ多いですが、西諸出身の先生も増えてきました。麻酔科の窪田悦二先生は、九州大学や県立宮崎病院、県立延岡病院などに勤められていましたが、最後は故郷に恩返しがしたいということで、帰ってこられたんですよ。5月に着任してもらった救急科の先生は、この地域で開業される鹿大の先輩の息子さんですが、小林に帰って地域貢献がしたいということでした。昼間の救急車は全部受けてもらっており、非常に助かっています。また、外科にも小林で開業される先生の息子さんがいます。小林市役所には健康推進課地域医療対策室という部署があり、医師集めにはそこが協力してくれてもいます。
医師不足も深刻ですが、看護師集めが特に大変ですね。当院の隣に西諸医師会の准看護学校がありますが、それとは別に今度小林に看護学校が出来るので、これに期待しています(学校法人宮崎総合学院は今年1月、看護師を養成する小林看護医療専門学校〈仮称〉の設置を決め、2015年の開校を目指している)
新卒者で小林に就職というのはほとんどいません。当院に来て13年ですが、その間に採用した新卒の正看護師は2人だけです。電子カルテの導入もあり、高齢の看護師には難しい仕事も増えました。若い人に増えて欲しいと考えています。今は看護師不足で休床もありますが、130床くらいに回復させたいですね。
多い日は1日400件ほど外来のある日もあります。出来るだけたくさんのスタッフを病棟に配置したいので、入院の必要がない方はなるべく逆紹介をして、地域の先生方に助けてもらおうと考えています。競合するのは意味がなく、地域を守るためには協働が必要です。外科に関しては、70〜80%逆紹介をしています。もちろん開業の先生に出来ないことは我々がやります。それが当院の存在理由ですからね。
病院建て替えは平成21年。私が事業管理者になる直前ですね。地方公営企業法の全適になったのも21年ですから、私から見れば「最悪のタイミング」ですよ(笑)。大変でした。
平成23年に地域医療支援病院になり、入院と救急に力をいれています。
人吉市など熊本県から来ることはあまりありませんが、都城市や湧水町(鹿児島県姶良郡)からの救急もあります。湧水町は峠の関係で、鹿児島の病院より近いんです。当院では受けいれられない救急もありますが、開業医の先生から相談されて、受け入れ先を探すこともあります。宮崎市郡医師会病院のモービルCCUは何度か利用しましたが、当直医を乗せる必要もないし、大変助かりました。
ヘリポートは今年の3月末に県と市の補助で作りました。病院建て替えの際、屋上に作る案もありましたが、予算の都合で実現しませんでした。建物の補強や、エレベーターを屋上まで上げたりと、億単位のコストが上乗せされるので、当時は不要だと判断したんです。まだドクターヘリが飛ぶようなことは考えられませんでした。しかし昨年の4月に宮崎大学附属病院に救命救急センターが出来、ドクターヘリの運航も始まりました。それで駐車場の一部を潰して、ヘリポートにしたんです。出来る以前に、市内の運動場をヘリポートにして搬送したことがありましたが、ランデブーの時間調整など準備が大変でした。今は簡単で良いですね。コールして20分かからずに飛んできてくれます。先日宮崎大学の落合秀信教授の講演を聴いたのですが、コールから最短3分で出ると言っていました。大学病院が救急に力を入れてくれたのは、本当にありがたいです。
実はテストフライトをする前に搬送する事案が出来まして、早く出来ていてよかったです。その後、テストフライトをしました。当院だけでなく、地域の先生方が搬送する時も使いますし、当院以外の病院も使います。そういう意味では屋上よりも使い勝手が良かったかも知れません。使って良く分かりましたが、宮崎や鹿児島は島や僻地も多いので、ヘリは有用な手段だと思います。
鹿児島と比べて宮崎は市民活動の活発な土地です。西諸にも4年前、延岡の「県北の地域医療を守る会」を参考に「地域医療を考える会」が出来ました。協力していただき非常に助かっています。