第83回九州眼科学会=記念対談
5月31日から6月2日にわたって熊本市内で開かれた九州眼科学会に際し、会長を務めた谷原秀信熊本大学眼科学分野教授(写真左)と、副会長の日隈陸太郎熊本県眼科医会会長(同右)を熊本大学に訪ね、同学会の意義や現状を聞いた。
(聞き手と写真=須原)
―九州眼科学会の意義をお聞かせください
日隈 地方の眼科学会としては、現在一つだけが残っている状態です。九州と付いていますが、演題は全国から募集しています。新入医局員の登竜門的な位置づけで、この学会で発表することに慣れ、それから臨床眼科学会や日本眼科学会という大きな学会で演題を発表してきました。もう一つ、各大学の親睦を兼ねていまして、以前は学会の前日に大学対抗のソフトボール大会も開いていました。ソフトボール大会はなくなりましたが、今も親睦の意味合いは強いと思います。運動不足の先生も多く怪我人が続出でしたから、それが中止になった原因かも知れません(笑)。
谷原 伝統もあり、九州内の大学の持ち回りで開いていますから、フォーマットが定まった学会です。今は交通の便が良くなり、全国規模の学会にも参加しやすくなりました。ですからこの学会がいつまで続くかは分かりませんが、今は次世代を担う九州内の若い先生方のお披露目の場として、大きく機能していると思います。
―眼科医を志す人が年々減っているそうですね。
谷原 白内障手術が全国に広まったころは志望者が多かったのですが、平成13年にピークを迎え、その後平成16年に始まった卒後研修の必修化以降、急速に眼科医志望者が減少しています。以後、眼科学会の新規会員数は、以前の半分以下になりました。熊本県を含めて、地方の大学の人材供給機能が低下し、病院によっては眼科を縮小せざるを得ない状況になっています。眼科学会としては、医学部生に出来るだけ眼科を志望してもらえるように、プロモーション活動をやったり、DVDを作ったり、合宿をやって眼科の素晴らしさを知る機会を設けたりしています。それでもまだまだ、下げ止まっていません。眼科の診療は、高齢者のQOLを維持することがすごく大事で、眼科学会と眼科医会が協力して、その意義を伝えていきたいですね。
日隈 日本眼科学会で去年から、サマーキャンプを8月に始めています。昨年は箱根のホテルで行なっています。旅費は自己負担ですが、宿泊費は1万円くらいで、2泊3日です。まだ進路を決めていない学生を集めて、眼科の魅力を先生たちが語ります。参加した学生には評判が良かったようで、日本眼科学会としてはこれからもやっていきたいということです。眼科医会としても、眼科になりたいという学生さんがいれば援助したいと考えています。
谷原 今年のサマーキャンプは参加希望者が多くて、キャンセル待ちだと学生が言っていました。
―医師にとって眼は大事だと思いますが、眼を大切にするにはどうすれば良いでしょう。
日隈 加齢黄班変成症は網膜が痛んでくる病気ですが、その引き金になるのが喫煙。この病気の予防には禁煙が有効です。
谷原 糖尿病網膜症になるので、メタボリックシンドロームへの配慮を考えて下さい。白内障や緑内障は、片眼が悪くても気付けない、気にしないということがありますが、見えにくくなったら出来るだけ早いうちに、専門医の診療を受けることをお勧めします。
―眼科を志したきっかけを教えてください。
日隈 父が眼科医でしたから、宿命的に考えていました。医学部生になって他科の魅力を知っても、迷いはなかったですね。
谷原 日隈家といったら、熊本の眼科では知られた名家なんですよ。
日隈 代々続いているんです。小学生のころは、そんなこと考えませんでしたけどね。
谷原 私は、狭い専門性の中で、自分のやりたいことを自由にやらせてくれる科を探して眼科に。眼科は高い専門性が問われる領域なんですよ。