地方都市の企業立病院

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宇部興産株式会社中央病院 院長 福本陽平

ふくもと・ようへい=1972 山口大学卒。山口県立中央病院研修医、山口大学医学部附属病院、1974 山口大学附属病院医員・内科学第一講座を経て1984 ロンドン大学キングスカレッジ肝臓病センターに留学。1990 山口大学医学部内科学第一講座助教授、1992 国立下関病院消化器科医長、1996 山口大学医学部総合診療部教授。2009 から宇部興産株式会社中央病院院長。

 宇部という地名を聞いた時、記者が真っ先に連想したのは「興産大橋」である。宇部興産専用道路の一部で宇部港に架かり、土木学会や日本鋼構造協会の賞を受賞した。今回取材したのは、その宇部興産の病院。市街ではなく海に面した場所にあり、一般病棟298床、回復期リハビリテーション病棟34床の規模だ。去年までは療養病床を持っていたが、地域に慢性期の病院が増えたこともあって、そちらと連携し、現在は休床している。

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「いい部屋は患者さんに提供しているので、この部屋は冬になると寒いんですよね」と院長室で

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病院は市街地にはなく、裏側は閑静な住宅街である。

 宇部興産中央病院と呼んでいますが、正式には株式会社が付きます。

 宇部市にはたくさんの炭坑がありましたが、その出資者が集まって宇部興産というケミカルの会社が出来ました。炭鉱の町ですから結核患者の多い町でした。そこで市街から離れた気候の良い場所に結核の療養所を作ったのが当院の前身です。企業立の病院で福利厚生施設だったのでしょうが、当初から市民には開放された病院でした。できた当初は抗結核薬が出るか出ないかという時期で、主にオゾン療法をやっていたようです。

 宇部興産自体はほかにもたくさん病院を作っています。そのうちの一つが宇部市にある山口大学医学部附属病院の前身にもなっています。山口医専が出来た時に、当時の社長が提供したんです。

 そういう経緯があって、宇部市は市立病院を持っていません。それで当院が今は市民病院の役割を担っています。

 以前は大学病院も市民病院の役目をはたして、私も大学で市民を多く診ていましたが、「一次二次の救急は市中の病院で」ということで、当院はより市民病院的な役割を強めました。大学病院には研究と教育という2つの役目もありますから、診療だけに力を入れられないわけです。私が大学にいた時も、病院長が市長に「一次二次の救急をあまり回さないで」と要望に行かれたほどでした。

 要望が多いのは救急です。市内に一般病床が150前後の病院が5つくらいありますが、そこから送られてくることもあります。二次医療圏は美祢市、山陽小野田市、宇部市の三つですが、現在この地域で心臓カテーテルと脳卒中の治療ができるのは、当院のほかは大学病院と、山陽小野田市にある労災病院だけです。大学病院を除いた二次医療圏の病院で当番日を決めてやっているのですが、当院は年間の3分の1の当番日があります。

 当院のモットーは「原則として救急を断らない」で、当番日以外にも救急車は来ます。多い時は救急車が3台くらい並んでいることもあります。年間2千100台以上受け入れています。

 歴代院長の中には京大出身で、脳外科の草分けのような院長がいました。その時この分野が特に強くなって、今も市民の方からは「脳卒中ならば中央病院」と信頼していただいています。またお年寄りの骨折も良く診ますから、転んで硬膜下血腫になった場合も当院は強いですね。整形外科と脳外科の連携がうまくいっています。

 外科に限らず大学と近いこともあって、優秀なドクターが多く、講師や助教授だった先生が多く働いています。私もこちらに来て、顔を見たことのある先生ばかりで、安心して任せられると思いました。大学病院とは張り合わず、求められる病院機能に適合した医療を提供しています。「ありふれた疾患から重症疾患まで診ましょう」というのが当院です。

 開業医の先生も、大学より頼みやすいようで、病診連携も良好です。大学病院は敷居が高く感じるのでしょうか。当院は気安さがあるのでしょう。

 当院の医師の数は55名ほどで、ご多分に漏れず苦しい状態です。総合病院としての機能は果たしていますが、現在は産科が出来なくなったり、皮膚科に常勤の先生がいなくなったりと、本当はもう少し先生にいてほしいなとは思います。救急の関係で、医師や看護師さんたちの疲弊も心配で、そこには気を配っています。

 私もまだ患者さんを診ています。もともと消化器を診ていたんですが、今はプライマリーケアの外来を週3回持っています。外来は好きで、本当は月・火・水・木・金と診たいのですが、経営管理の仕事が出来なくなってしまいますので、それ以上の診療は控えています。

 患者さんを治すのが好きで臨床を選んだわけですが、患者さんばかり診て経営の数字を見なかったら、結局は良い医療を提供できなくなってしまいます。しかし現場を見るということは、経営にも良いことだと考えています。院長室にずっと座っているだけでは経営は無理でしょうね。入院患者はさすがに持てませんが、回診もやっています。

 大学にいるとき医学教育センターのセンター長をやっていたので、若い医者を指導するのは好きです。大学のカリキュラムを作ったりしていたんですよ。研修医の獲得競争が激しいですが、私の講義を聴いた学生さんもまだいますので、何とか来てくれます。定員5名ですが、毎年フルマッチでやる気ある人が来て「当直は月に4回でいいよ」と言うのに、中には8回も当直に入る猛者もいます。救急の現場では、やる気ある研修医たちが重宝されていて、3か月もすれば充分な戦力として数えられるように成長します。そのころには当直の先生方の、心身の負担が減らせますね。先生方からは、「院長、研修医は必ず掻き集めてきて下さい」と、毎年期待されています。

 山口大学医学部医学科の同窓会会長を4年ほど前からやっています。学祭にも時々顔を出しますよ。霜仁会というのですが、宇部にある霜降山から取っています。中世にお城もあった山です。会員は5千500人くらいですね。第二次世界大戦時の医専が基盤ですから、卒業生は少なくないです。

 しかし山口大学に学生はあまり残らないんです。東京や北陸、中部などからも来ますし、女性が4割くらいですから、帰ってしまいます。そういう遠方の後輩にも愛校心を持って欲しいと思います。大学に残って、大学の医学部発展のために力を尽くしてよと、声を枯らして言っています。医師免許取得のための教習所ではありませんから。皮肉混じりに「自動車学校に同窓会はないよな」なんて言うことも。だから、残ってくれた後輩の話を聞くと、うれしくなります。


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