【所属学会】日本医学放射線学会 日本放射線腫瘍学会 日本頭頚部腫瘍学会 医学物理連絡協議会 放射線治療品質管理機構 日本癌治療学会 日本緩和医療学会 日本食道学会 悪性リンパ腫治療研究会 日本放射線腫瘍学研究グループ
無事に定年を迎えられました。まったく病気にならなかったわけではありませんが、それでみなさんに迷惑をかけなくて良かったです。本当に楽しかった。
21年6か月の間、臨床、研究、教育など、久留米大学では思ったとおりのことをやらせていただきました。楽しく、ありがたかったという気持ちでいっぱいです。
佐賀医科大学に勤めていた時は放射線科にベッドがなかったので、他科から依頼を受けて治療をしていました。あちらでは治療の前後に患者さんに係われなかったので、こちらに来る時はベッドが有るということが嬉しかった。今は共同ベッドを入れて30床くらいありますし、こちらでは自分が思った治療ができました。患者さんが望む場合は、治療をしないという選択もできました。
研究では臨床の疑問点を解き明かすというスタンスでやりました。「基礎的に素晴らしい成果を出せた」というわけではありませんが、多少の研究は出来たかなと思っています。
また医局には「放射線にはあまり興味がなかったが、学生時代の講義で興味を持った」という先生もいて、そういう先生たちに放射線の魅力を伝えることが出来たということを、うれしく感じています。そして、たくさんの医師を育てる機会を与えていただき、ありがたかったですね。私が放射線科に来て10人の教授を育てることが出来ました。後任の安陪教授が10人目です。
放射線治療は日々進歩しており、ここ10年でも大きく変わりました。しかし若い先生がたくさん増えまして、そういう先生たちが積極的に勉強で留学して持ち帰ってきてくれましたから、大変ではありませんでした。
機材購入の際は現場に任せ、私は一切出ないようにしました。私が良いと思っても、実際に使う人々は別ですから。医師だけでなく、診療放射線技師や医学物理士、放射線治療品質管理士といったみなさんたちの意見を特に聞きました。医療は医師だけが行うものではなく、チームでやるものですから。
私自身が若いころ任せてもらったとこともありますし、そうでなかったこともあります。だから仕事を任せた方が人は伸びることを知っていました。私は滅多なことでは口出しをせず、本人のやり方を尊重しました。
未来の医局のことは新しい教授が決めることで、要望はありません。強いて言えば、今後男性に増えて欲しいと思います。女性の社会進出が増え、私は女性が働きやすい環境を目指しました。医局には女医が多かったので、それは成功したと思っていますが、もっと男の人にも来てほしいですね。
後任は安部等思教授
平成25年4月1日付で久留米大学医学部放射線医学講座の教授を拝命いたしました安陪等思と申します。久留米大学を昭和59年に卒業しております。専門は画像診断で、特に神経放射線学を勉強してまいりました。放射線医学は画像診断、放射線治療、インターベンショナルラジオロジーなどの広い範囲を担当しています。麻酔学、病理学とともに病院の縁の下の力持ちとして威力を発揮する領域です。院内で麻放病が発生すると全体の機能に悪影響をおよぼします。久留米大学では病院の機能を向上させるために新しいCT、MRIを導入し、患者さんにさらに高度で優しく、より安全な医療を提供いたします。先頭に立ち努力いたしますので、どうぞよろしくお願いします。
また、教室の若手、学生の教育にも頑張りたいと思います。近隣諸施設との関係も深化させたいと考えておりますので、前任の早渕尚文名誉教授同様にお引き立てのほどお願いいたします。
- 【記者の目】
- 早渕教授から退職記念誌をいただいた。雑誌などに投稿された随筆とたくさんの祝辞、記念写真などで構成され、200ページを超える。教授の文章のうまさと共に、多くの人に慕われていることが良く分かる。記念誌にも書かれているが、先々代の学長だった平野実名誉教授が、頭頚部腫瘍診療チームの専門家を集めていた際、放射線治療の専門家を必要として久留米大学に呼ばれたらしい。当時遅れていた久留米大学の放射線科を整備したのが早渕教授であると聞く。今後は、医療法人社団高邦会の高木病院と福岡山王病院で、放射線治療を担当されるそうだ。「これからは患者さんにもっと力を注げます」とのこと。(平増)