高島宗一郎福岡市長も涙したHIKOBAE
満席に近い観客のほとんどが、温かい涙をこぼした。4月12日と13日、福岡銀行本店大ホールで演じられた舞台劇、HIKOBAE(ひこばえ)でのこと。
2日目には高島宗一郎福岡市長が、監督の塩屋俊さんに壇上で花束を贈呈し、感動の涙とともに観賞したと、礼を述べた。
2011年3月11日に東日本一帯を襲った大震災で、福島県相馬市の病院を舞台に、医療現場で働く人々の葛藤や希望、命を賭して住民救出に当たった消防士と消防団員の死を通して、家族のあり方や故郷との関わり、人としての生き方を鋭く問いかける。
地震、津波、放射漏れ、外部との情報遮断、国への不信の中で住民の心は揺れ動く。
セリフは洗練されて無駄がない。舞台装置も最小限に絞り込まれ、照明とスクリーン映像が効果的に使われた。
重苦しいはずのテーマを、随所に仕掛けられた笑いと、篠笛、和太鼓、ピアノの演奏で、娯楽と和的芸術性の高い作品に仕上げ、2時間半は長くなかった。子役の大半は、大分や福岡の子供が演じたという。
劇の最終盤で、住民救出のさなかに津波で帰らぬ人となった相馬市の消防隊員と消防団員10人がスクリーンに映し出され、名前が読み上げられたのは、今回の福岡公演が初めて。
昨年3月に、ニューヨークや国連本部、東京、相馬市で初演を迎え、今年も日米7都市で上演される。 塩屋監督は、「利他的行為の認識と継承が本作の目的。時代や国を越えて上演され、未来への遺産になればいい」と訴えた。
大手製薬メーカーをはじめ国内25の企業やや団体が上演をサポート、後援団体の中には、日本医師会、日本看護協会、福岡県、福岡商工会議所も名を連ねている。(川本)