カナダから日本を読む
オンタリオ州在住 成澤三成
1947 年生まれ。1974 年カナダに移住。62 歳で早期退職するまでの35 年間、中継用の送受信装置や軍事用ミサイルの送信装置の電気検査業務に携わる。近々バンクーバーの小さな島で暮らす予定。
「20 歳の時に博多から自転車で日南海岸を経て九州を一周しました。太宰府のよさこい祭りをもう一度見たい」とのこと。
「日本の反対側で暮らしている者ですが」と、カナダからメールが届いて随分たつ。ネットで健康について検索していたら当紙に行き当たったという。何度かやり取りする中で、海上自衛隊に配備されているシースパローやイージス艦ミサイルの送信装置など、最新鋭の米国製兵器をカナダで検査する職業に就いていた人だと判った。そこで、カナダから日本をどう見ているかについて寄稿を依頼したところ、「これを読んでいただいた方々が、それぞれにこれからの日本を考えていただければ幸いです」との書き出しで、長い文章が送られてきた。（文責＝編集部）
自衛隊の防衛能力
実戦経験のない自衛隊員が本当に戦争に立ち向かえるかというと、いささか疑問です。アメリカ軍には指揮官も隊員も、経験豊富な連中ばかりです。２００９年に北朝鮮がミサイル発射を予告した時、千葉の自衛隊基地のレーダーが発射の誤報を出しました。私は軍事用レーダー製造検査に長年携わりましたが、まずあり得ないことです。ミサイルはものすごく大きく、発射時のスピードは遅く、ほぼ垂直に上昇するので、機影がモニター上で戦闘機などよりも何倍も大きく縦長に表示されます。青森県の西海岸に、一応「秘密裏」に設置されている米軍のＸバンドレーダーも監視していたと思いますが、見間違えることはなかったと思います。いかに実戦の経験がないかを証明しているようなものです。米軍が１９４５年以来、日本に駐留していることも併せて日本の平和を考える必要があるのではないでしょうか。
私は三沢基地に２回行きましたが、弾薬庫にはせいぜい２日分の弾しかないと自衛隊員が教えてくれました。昭和47年ごろのことですが、これでは自国防衛なんてほど遠いと思いました。
ステルス機の機体表面を覆っているフェライトコアはＴＤＫ製で、レーダー電波のほとんどを吸収しますので、遠距離地点ではレーダーモニター上に機影が写らず、近距離まで来ないと察知できない構造です。「軍事用途の製品輸出だ」と日本でも物議をかもしましたが、結局何かの名目をつけて輸出をしたいきさつがあります。素材は日本製ですが、ステルスは基本的には攻撃用です。自衛隊には不必要でしょう。
カナダの韓国人
同僚がジョークで作ったというお祝いの記念品「リタイアメント・タイムス」。
韓国人を理解するには、宗教の違いと、過去２千年のあいだに約960回の侵攻を受けたことを知る必要があります。それと韓国語が日本語やモンゴル語に似て、中国語には似ていないことです。しぐさも似ているので、会話が不明瞭に聞こえる時は、日本人なのか韓国人なのか解かりません。ただし女性は、化粧の著しい違いですぐに解かります。
韓国人の民族意識や団結力が強いのは、侵略された長い歴史の中で、結びつきを強めるしか身を守る方法がなかったからでしょう。すぐにホットになる国民性は、激辛の食事から来るようにも思えます。ただし激辛は半島南部で、北に行くほどゆるやかになりますから、北方の出身者は激辛料理を食べられないそうです。
韓国社会では皆の前で謝罪させる習慣があります。韓国の元大統領が蟄居したことがありますが、たとえ大統領であれ大会社の社長であれ、国会議員であれ、謝罪の行動を見せなければ許さないように感じます。韓国政府が「天皇が韓国に来て謝罪をしろ」と言っているのも、何となく理解できます。でも、本人または身内が日本の統治中に被害を受けた場合、その怨念が消えることは永遠になさそうです。
戦後は日韓閣僚会議が長いあいだ毎年開かれていて、日本から多額の円借款が続いていましたが、このことは韓国国内で一切報道されていません。だから韓国人は、戦後の経済復興は自分らでやったと自負しています。
切り札を隠す中国人
カナダで韓国人と付き合っている日本人は多いですが、中国人はフィーリングがまったく違うため、付き合う人は少ないようです。中国人同士でも100％信用しあうことはないそうです。彼らは絶対に切り札を他人に明かしません。自分の知っていることを決して全部は見せないようです。
私は何人もの中国人大学生を下宿人にしましたが、中国食しか食べません。中国系の学生は数が非常に多いためか、英語を話さないので、留学生は一向に英語が上達しませんでした。特に50歳以上は英語を話そうとしません。日本人は郷に入れば郷に従えの諺どおりに、老いも若きも英語を話そうと努力しますが、中国人にそんな気配はありません。韓国人の一部にもこんな感じを受けます。
でも台湾人は日本贔屓の国民性があります。
私には言語の違いが国民性に及ぼす影響も大きいと思います。
インドネシアの事実
インドネシアの独立戦争に日本軍捕虜が加わって、独立後は国立墓地に埋葬をされていることも、日本人は知っておくべきでしょう。オランダ軍は奴隷のようにインドネシア人を酷使しました。米の耕作をさせず、欧州で金になる物を作らせたそうです。日本軍は白人からの解放をうたっていましたから、そういった面では大いに貢献をしたことになります。インドネシアが好日国であることの大きな要素は、この辺にあるのではないでしょうか。日本人はもっと歴史を学ばなければならないと思います。
戦争（統治）の歴史を正視して、せめてこれからは個人ベースで、アジア諸国の人たちと仲良くして行きたいと思っています。大戦中の日本軍に対する感情はそれぞれによって違うので、我々は国別の歴史を勉強する必要があると思います。
