中規模の公的病院を立て直す

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公立玉名中央病院 企業長 中野哲雄

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【Profile】
1977 熊本大学医学部 卒業
1977 熊本大学医学部整形外科入局
1979 熊本市立熊本市民病院勤務
1980 水俣市立湯の児病院勤務
1981 福岡整形外科病院研修
1981 熊本中央病院勤務
1983 公立玉名中央病院勤務
2004 公立玉名中央病院副院長就任
2009 公立玉名中央病院病院長就任
2011 公立玉名中央病院企業長就任

公立玉名中央病院は、地方の中核的病院だ。病床数302に対し、医師の数は36。地方にある病院としては、標準的な中規模病院だ。過剰な規模でもなく、特に特化した診療科目もなく、特別なことは何もない。それが最も適しており、求められているからだ。しかし標準的な病院だからこそ、運営手腕で損益に大きな差が出るという。

―企業長というのはどういう意味ですか?

自治体病院にも経営形態がいくつかありまして、この病院も以前は地方公営企業法の部分適用でした。決済の権利や権限が玉名市長にあったわけです。しかし平成23年から俗に云う全適(全部適用)になり、病院の内部に決定権を持った者を置き、直接的に病院を経営・運営できるようになりました。公立病院ではありますが民間の病院のような経営ができるようになったわけです。

このような全適の自治体病院のうち、単独の自治体が作っている場合の経営責任者を事業管理者と呼びます。独立行政法人でいうところの理事長に相当する役職ですね。当院近隣で言えば、荒尾市民病院や山鹿市民医療センターなどがこれに当たります。そして当院のように、複数の自治体で作っている場合、責任者を企業長と呼ぶわけです。事業管理者も企業長も、地方公務員の「特別職の職員」になるらしいです。

―ということは、玉名市立ではないんですね。

以前は玉名市と4つの町で作っていたのですが、平成17年に3町が玉名市に合併しましたので、今は玉名市と玉名郡玉東町で作っている病院です。名称も玉名市外四ケ町病院組合公立玉名中央病院から、玉名市玉東町病院組合公立玉名中央病院に改めました。現在は全適を受け、公立玉名中央病院企業団公立玉名中央病院です。熊本県内に企業長と呼ばれる病院の責任者は、私を含めて2人しかいません。

責任者といっても縛りは多く、重要案件は1市1町の議員で構成された病院議会に諮らねばならないのですが、これは当然批判的な目で審議されるべきですから、私が好き勝手にやれるわけではありません。市民から見れば、批判的な目を持たない議員では困りますから、仕方のないことです。理事会は審議する人々自体が経営の責任者で、良い意見は通り易い傾向にあると思います。民間ほど自由に采配を振るうことは出来ませんし、ひと手間多い感じです。

企業長には病院長を任命する権限があるわけですが、現在は私が兼務しておりますので、辞令は書いておりません(笑)。

院内では何と呼ばれていますか。

事務方は企業長と呼びますが、院長と呼ばれることが多いです。若い先生の中には、当院に勤務してはおっても、企業長という存在や意味を知らない先生もいると思います。書類では全て企業長ですけど。

以前からいた医師たちには中野先生と呼ばれます。院長になる前は同僚だったわけですし、まだ現役で診察をしていますからね。もっとも、私の専門分野の整形外科には腕の立つ先生が揃っているので、最近は出番が少なくなってきています。

やっと2年前から黒字に

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昭和56年の開設。JR玉名駅や国道208号線にも近く、交通アクセスは良い。駐車場から撮影。正面玄関は左の棟の向こう側にある。

―医師集めはどこの病院でも課題ですね。

地方の同規模の病院はどこも苦労されていると思います。当院は熊大から来ていただくことが多いのですが、私も東奔西走しましたよ(笑)。医師の定数には余裕がありますが、予算は限られていますし、整形外科に力を入れているわけではありません。整形外科に良い先生が揃ったのは意図したわけではないんですよ。一つの診療科目に特化できる余裕がありませんし、どんな科でも受診できる病院を目指しています。

私が院長になるまでは、実は大赤字の病院でした。年商が40億ちょっとだったんですが、行政からの補助を4億ほどもらった上で、7億近い赤字が出ていました。それまでは内部保留のお金、つまり預金で何とかなっていたんですが、2年ほどで一気に食い潰してしまい、きびしい状態で引き継いだわけです。一気に解決は出来ませんでしたが、やっと2年ほど前から黒字に転じました。

医師やコ・メディカルの確保も重要ですが、病院を経営する時、職員の士気は重要な要素です。当院の職員は医師も含め、臨時の方以外はみんな地方公務員になるわけですが、公務員には悪平等な構造的欠陥があります。民間とは違い、真面目に働く人も怠ける人も同じように扱い、また怠けている人を注意しない。当院でも以前はそうでしたが、私が院長になった際、このことをまず改めました。頑張った人には+αを賃金に乗せるようにしましたし、酷い勤務態度の者には指導をしても良いと管理職に言いました。当院にとって救急は重要なことですから、当直料も少し高めに設定しています。

また以前は交流が少なかったのですが、玉名郡市医師会には院長になってすぐに挨拶に行って、地域の医師との関係を良好にするように努めました。今は紹介率が60%以上、逆紹介率が80%以上と、連携は上手くいっています。

―先生はスキーが趣味らしいですね。

こちらは雪がないのであまり得意ではありませんが、好きですね。私は熊本の出身ですが、阿蘇もほとんど雪はないですからね。他に趣味はないので仕事に熱中できます。手術の腕を磨くことを目標に、励んできました。

私は関節を専門にする整形外科医になりたかったのですが、当院には骨折の患者さんが多かったので、骨折治療が専門になってしまいました。そうして骨折治療の手術を研究していると、手術の技だけでは治療できない骨粗鬆症に悩まされてしまい、今では骨粗鬆症が専門です。


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