建築士になる英才教育を受けた黒野祐一教授

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鹿児島大学大学院医歯学総合研究科

「子供のころ身に付けたものは、意外なところで役に立つものですね」と、黒野教授は父上の話を懐かしそうにした。今回大会長を務める「第23回日本頭頸部外科学会総会ならびに学術講演会」の準備中ということで、取材は30分に満たなかったが、思い出話などを語っていただいた。

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【Profile】
■1980 鹿児島大学医学部を卒業し、同耳鼻咽喉科学教室入局
■1982 大分医科大学医学部耳鼻咽喉科学教室助手
■1989 から1991 までオハイオ州立大学耳鼻科学研究室留学
■1993 大分医科大学耳鼻咽喉科学教室講師
■1995 アラバマ州立大学ワクチンセンター留学
■1996 大分医科大学耳鼻咽喉科学教室教授
■1997 アラバマ州立大学ワクチンセンター留学
■1997 鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科学教室教授
■2003 同大学院医歯学総合研究科先進治療学専攻耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授
■2005~2007 鹿児島大学医学部・歯学部附属病院長補佐。現在に至る。

医師国家試験出題委員、鹿児島県公害健康被害認定審査会委員

私は臨床では頭頸部外科を専門とし、頭頸部癌を中心に手術しています。また、研究としては、アレルギー性鼻炎、上気道感染症粘膜免疫をテーマにしています。今は大学病院が完全紹介制になって、通常疾患や急性期がほとんど見れなくなってきましたが、大分にいた時は急性期の疾患を多く診ていました。

「耳や鼻が専門だ」と言ったとしても、大学病院に入院する患者さんの多くは癌ですから、癌をやらざるをえないのが地方の大学病院の実情です。頭頸部癌を専門にやっている教授は少なくて、今九州ではほんの数名だけなんですよ。

鹿児島大学を卒業して、2年はこちらにいたんですけど、医者が足りないということで、附属病院を開院して半年ほどの大分医科大学(現大分大学医学部)に着任しました。恩師の茂木五郎先生(前大分大病院院長)の専門が頭頸部癌で、研究では粘膜免疫。それで私も必然的に、頭頸部癌を臨床でやるようになりました。

茂木先生は大分医科大学の初代教授で、日本で有数の頭頸部癌の専門家でしたから、良い先生にめぐり会いました。癌は取り除くことが主な治療法ですが、舌癌とか上顎癌とか、単に取りっ放しだと、日常生活ができなくなります。そこで再建外科というのが重要になるのですが、茂木先生はその先駆者で、当時最新の技術であった有茎弁の手術などを間近で学ぶことができて面白かったですね。茂木先生にお会いするまで頭頸部癌にあまり興味がなかったのですが、鹿児島での恩師大山勝先生が薦めてくれたのも有り難かったですね。当時大分の父も体を悪くしていましたし、15年間大分に在住できたことも有り難かったです。

私の専門は目に見える部分を切ったり縫ったりするわけで、頭頸部外科の進歩には形成外科が発展してきたことが大きいんですが、大分大学も鹿児島大学も、実は形成外科がないんですよ。そのため、再建手術もやっているんですが、手術時間が長く負担がとても大きい。形成外科を設置してほしいと要請はしたのですが、なかなかむつかしいみたいです。

―ご出身は大分ですね。

大野郡大野町(現豊後大野市)の出身です。父親は設計士だったんですけど、父は私を一級建築士にするつもりだったので、小学校のころから英才教育ですよ(笑)。CADなんかない時代で、鉛筆の削り方や線の引き方、基礎的な大工仕事なんかを仕込まれましたね。中学生になるころには技術科の教師より私の方が図面を引くのが巧くって、代わりに書かされたこともありました(笑)。しかし無医村に近い町で、高校の時に友人たちと話をして「町に医者がいないのは困るから誰かが医者になっては」ということで、私が医学部に入学することにしました。それで建築家にはならなかったんです。弟も土木の分野に進んで、跡継ぎがいなくなって自分の代で終わるということで、後々まで父は寂しい思いをしたようですけれどね。

しかし今それが活きていて、図面を引いていた経験が血管を扱う再建手術なんかで有利なんですよね。自分で皮弁のデザインをして、キチっと合わせ、傷が目立たないようにしなきゃならない。デッサン力が問われるんですが、ここで図面を引いていた経験が活きてくるわけです。また、耳の手術や、顔面骨など骨を削っていく手術でノミや槌を使うこともありますが、大工仕事をした経験、図面を引いた経験があるので得意です。頭頸部外科は特に繊細な技術が必要なんですが、緻密なことを好きになったこと自体がとても良かったことですね。父からもらった大きな財産の一つです。

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―学会総会のメインは。

再建手術という話をしましたが、器械の進歩で医学の流れは保存的な治療、いわゆるミニマムインベーシブサージェリー(低侵襲手術)に移りつつあり、頭頸部の分野でも経口的に癌を取り除くような手術も行なわれるようになりました。鹿児島大学も九州で先駆けて導入をしたんですよね。だから、そういうものをテーマに掲げてシンポジウムを組みます。鹿児島は離島もあるし、九州の中でも特に超高齢化社会です。我々は他の地域の医者よりも、高齢者の手術経験は豊富ですから、これをテーマに問題点等をディスカッションしていくことにもしています。

癌治療では化学療法や放射線治療も随分進化しましたが、これによって手術そのものが廃れていく危険性があります。特殊な技術や特殊な能力を持った人を養成していくのは今後大事なことです。化学療法や放射線治療が失敗したあとに手術をするとなると、非常に難しいんです。今後外科医には逆に、より高度な技術が要求されると思います。なので「匠の技」をキーワードに、どう手術の技を伝えていくか、優れた腕を持つ先生たちに講演してもらおうと思っています。若い先生には手術の醍醐味を伝えられるものにしたいですね。
(写真と取材=平増)


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