医療は国際的な視野で

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困っている人に国境を作らない 杉岡記念病院 長嶺隆二院長

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▲サウジアラビアではお酒がなくてがっかりしたそうだ
▼杉岡記念病院のむこうに増築のクレーンが頭を見せている。(昨年11/15)

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【Profile】
1987 九州大学医学部卒
1990 米国留学
■福岡整形外科病院整形外科医師、 済生会八幡病院整形外科医師、JR 九州病院整形外科医長、九州大学医学部附属病院整形外科助手、九州労災病院整形外科部長、片井整形外科病院院長、吉塚林病院医師を経て、2009 から杉岡記念病院院長。
■英文論文や国際学会発表は110 を超える。

博多湾香椎パークポートに浮かぶ巨大な人工島には、高層マンションが建ち並び、大きな街が形成されている。福岡アイランドシティ。広大な公園を持ち、住人が潮風をあびてウォーキングを愉しむことも都市計画の重要なコンセプトだ。

杉岡記念病院は、健康・医療・福祉の充実をうたう健康未来都市の中核的医療施設の1つだが、この病院は「福岡アイランドシティの整形外科病院」という枠に納まってはいなかった。柔和な笑顔の長嶺院長は、世界レベルの知識と技術を持つ、膝関節のスペシャリストだった。

―まず、ご専門について教えてください。

私は膝関節が専門です。アメリカの学会には毎年行きますし、韓国、中国、マレーシア、インド、シンガポールと、いろんなところで講演しています。遠いところではドバイやリヤドまで行きました。

各国で講演していると、アジアは近い国だな、ということが分かります。みんなよく似ています。

それは性格的なものだけではなく、膝の関節にも言えることです。私は1990年、アメリカに留学していましたが、その時に見たのは、アメリカ人がアメリカ人のために作った人工関節を、アメリカ式で手術しているものでした。

それは優れたものでしたが、しかしそれをそのまま日本で使えるわけではないんです。日本では、日本人の膝にあった手術法を採る必要がある。人工関節のデザインにしても、サイズが違うだけではありません。日本人はO脚で、欧米人のすらっとした足とは違う。生活様式も違うので、ベットではなく床で生活できるようにする必要があるわけです。欧米人よりも、もっと曲がる膝にしてあげる必要がある。そうして日本人の膝を研究していると、アジア人の膝は良く似ていることに気付けますね。

外来で来られる中には、石垣島の方もいますし、門司の方もいます。大分や山口から通院される方もいるし、東京からも来られます。入院患者には上海の方も、台湾の患者さんもいます。

では、石垣島と上海のどちらが遠いかというと、明らかに石垣島の方が遠く、上海は近いんです。ただ、言葉やお金が違い、国境が違うだけです。

ローカルな地域医療に貢献することは当然ですが、治してほしい人が来ればだれでも診るのが医者として当たり前のことです。日本の保険が利くか利かないかの差はありますが、我々の目的は、来られる方に最も適した医療を提供することです。また、外国の医師がこの病院で研修を積む時に必要な資格も、我々は持っているんですよ。

―考え方やとらえ方が、いわゆる国際人であるように思えます。

私の生まれ故郷は沖縄県石垣島なんです。生まれたころは復帰前で、まだドルを使っていましたし、車は右を走っていました。そのころの日本はものすごく遠くて、どちらかというとアメリカのほうが近かったんです。小さいころから英語に接する機会も多く、英語に違和感がなかったですね。

外国の医師団に私の手術を見てもらう機会も多いのですが、その時必要なのは、それに足る手技はもちろん、質疑応答ができる語学の力なんですよね。そういう面では幸いな環境でした。

―なぜ医者になろうと?

小学4年生の時「九大に入って医者になります」と書いたことを覚えています。というのも石垣島には医者が少なかったんです。親父が喘息で死にかけて、良い医療の重要性を知りました。家業は薬局でしたが、学費を出せたのは儲かっていたからです。それぐらい石垣島には医者が少なかった。私の自慢は「親父の薬局は、日本最西南端の薬局だ」ということです(笑)。

元九州大学総長で、病院名の由来でもある杉岡洋一先生(前院長=故人)が「アメリカに行け」と言ってくれたのが、卒業4年目で何も分からない27歳の時。そして留学して感動したのは、世界でも有名な先生がカンファレンスの時に「リュウジどう思う?」と聞いてくることです。新しい意見をざっくばらんに聞こうとする態度に柔軟性を感じたことで価値観が変わりました。

そして日本に戻ってくると、医療や病院の制度が画一的に見えました。たとえば海外の学会に行きたいと願い出たとしても、「年間研究費が限られているからダメ」と言われる。そうすると情熱がなくなってしまうんですね。

医学では何が大事かと言うと、エビデンス、つまり証拠を持っているかどうか、ということなんです。今から行なう医療行為に対して「これが最も良い方法だ」という確固たる証拠を持っていることが大事なんですね。そのためには国際学会にデータを出して、発表して、同意を得る。これが証拠になるわけです。でも、今までの日本のシステムではなかなかできない。私にはそういうことがショックでしたね。

「医療費が安い」など、日本の医療にも良い部分はもちろんあるんですが、「このままでは日本の医療は海外のレベルに達しない」と、強い危機感を持って杉岡先生に相談しました。そうして「だったら作ろう」と出来たのが、この病院なんです。

―この病院について教えてください。

65才以上の方の4人に1人は膝が痛いんですね。でも膝が悪いままだと、運動不足になり、生活習慣病などにつながって、それが動脈硬化を引き起こし、心臓病・高血圧・脳卒中・痴呆...と、病気がどんどん増えてしまう。膝の病気は老化を早めるんです。

我々が関節外科の専門病院を立ち上げたのは、膝や股の疾患に対して国際水準の医療を提供できる病院を、という理由でした。教育的なことも含めて、これが主旨です。

いま病院を増築中で、50床から80床に増床することになります。「100床以下で経営は成り立たない」と経営コンサルタントは言うし、「急患はとらず、膝などの関節しか手術しない」というと、全国的にも珍しいケースとして注目されていたようです。何でも食べさせるレストランではなく、北京ダックの専門店みたいな病院が成り立つのか、とね。軌道に乗るまで2年かかりましたが、うまくいくことが証明できたと思っています。手術件数に関しても、全国的に遜色はありません。

近い将来、アイランドシティ内に高度多機能型リハビリテーション施設も開業予定です。今後この地域は大きく発展すると思います。我々相生会はアジアを見据えて病院経営を考えているので、アイランドシティに作るわけです。

―若い医師への教育にも熱心だそうですね。

整形外科教育協会というものを作って、私も世話人の1人なのですが、若者向けに膝の勉強会をやっています。

今までは大学の縁が強くて、いろいろな先生から学びにくかった。もし未熟なまま患者さんを診てしまったら、これほど不幸なことはないんです。それで大学とは一切関係なく、来る人を拒まずに勉強会を開くことにしました。これが日本の医療にとって、今1番大切なことだと思っています。

医者としての目標は、「人をどれだけ助けられるか」ということだと思います。若い人には「人助けのためにはどんな医者になればよいか」を考える医師であってほしいですね。


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