新春特別インタビュー がんと闘う

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乳がん患者の支えになりたい

黒木クリニック 黒木祥司院長

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黒木クリニック 黒木祥司院長

―九大の講師を辞めた理由を教えてください。

乳がんの治療は長期にわたるので、術後の補助療法や再発の治療も含めて気長に診ていくことになります。そうすると診る患者さんの数がどんどん増えて、九大で週に2日だけでは診れなくなくなりました。地域に乳がん専門のクリニックがあれば、そちらにお願いできるのですが、そんな専門医はいませんでしたから、私が九大病院の近くに新しいタイプの乳腺専門クリニックを作ったのです。現在は月曜から土曜まで外来診療ができます。完全予約制にして待ち時間を短くし、患者さんの負担を少なくするようにしています。

―なぜ黒木先生が?

この20数年で乳がんの治療は様変わりしました。以前は乳がんの診断がついたら、乳房と大小胸筋とリンパ節を全部取って終わりでした。現在では乳がん患者さんの約7割は乳房温存手術で、乳房切除が必要な場合でも術前から乳房再建を考慮します。センチネルリンパ節生検が標準的治療になり、患者さんの約8割は腋下リンパ節郭清をしないで済むようになりました。薬物療法も大きく変わり、乳がんのサブタイプ別に治療戦略を立てることで、患者さんごとの個別化治療が一般的となりました。新規抗癌剤や分子標的治療薬、アロマターゼ阻害剤などの登場により、治療の選択肢がどんどん増えています。

この変化に地域のかかりつけ医が対応するには、高度な知識と経験が必要です。しかし乳腺専門医の数はまだ少なく、九州内では福岡県を除けば各県に数人ずつしかいない状況です。当院のように乳腺専門で診断と治療ができるクリニックは、関西や東京にはかなりありますが、福岡にはほとんどないんですよ。最近は私の教え子だった先生達が活躍し始めて、非常に頼もしく思っています。

こまめな検診で乳がんを早期発見し早期治療するのが鉄則です。どんなにたちの悪い乳がんでも超早期に見つければ確実に治せるのですから。

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―手術はどこの病院でされているんですか?

当院には入院・手術設備がありませんので、開放型病院に紹介して入院していただき、私が手術しています。乳腺専門の平尾の及川病院で手術することが多いですが、他にも患者さんのご希望により九大病院、原三信病院、浜の町病院、千早病院、木村病院などでも手術しています。

―いろんな人が来られるでしょう?

一般検診で来られる方、しこりに気がついて飛び込んでこられる方、他施設で告知を受けられた方、再発・転移治療のセカンド・オピニオンなど様々です。大事なのは患者さんと向き合って話すことだと考えていまので、電子カルテへの入力は医療秘書が行ない、私は常に患者さんと対面するようにしています。乳がんの告知の後は、乳がん認定看護師はもちろん他のスタッフにもフォローしてもらっています。患者さんの心理については、九州がんセンターの大島先生たちとサイコ・オンコロジー研究会を作っています。ロール・プレイで私が患者役になってがんの告知を受けると、かなりショックを受けます。

―患者会の活動を応援されていますね。

あけぼの会からの依頼で、北九州市立医療センター院長の光山昌珠先生と社会保険久留米第一病院院長の田中真紀先生と私が顧問医になっています。医師1人に出来ることは限られているので、患者会のようなピア・サポート活動は重要です。乳がんは患者さんごとに治療方針が違うので、あけぼの会のようにしっかり勉強することが必要でしょうね。ただ集まって自分のことを話すだけでは混乱を生じかねません。

―気分転換の趣味は?

医者が落ち込むわけにはいかないのでいつも明るくしています。ストレス解消といえば、妻と2人でドライブがてら、日帰りで温泉に行きます。よく行くのは若宮の脇田温泉ですね。糸島には弘法大師ゆかりのまむし温泉がありますし、あとは嬉野や湯布院、九重あたりとか。いつも動いていないと落ちつかない性格なので、温泉に浸かって何もできないのはいいですね。

お酒ですか? 宮崎出身ですから焼酎です(笑)。

第四の癌治療 研究やり甲斐がある

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九州大学先端医療イノベーションセンター 外来医長、先進細胞治療学研究部門准教授
高石繁生

一昨年の7月に完成したこのビル(九州大学先端医療イノベーションセンター)で癌免疫細胞療法を10月から始めて、ようやく1年と少し経ちました。ここにはダ・ヴィンチなど面白いものがたくさんあるんですよ。私は内科なので扱ったことはありませんが(笑)

この建物内の細胞調製センターは医薬品GMP準拠の、細胞加工が可能な施設で、患者さんから採取した血液から免疫細胞を抽出し、株式会社メディネットの技術を用いて増殖・活性化させています。活性化自己リンパ球と呼びますが、これを患者さんに点滴で投与して癌をやっつけるわけです。

免疫細胞療法は第4の癌治療と言われ、副作用が少ないという利点があります。アメリカ国立癌研究所のローゼンバーグ博士のメラノーマに関する報告で知られるように、末期の方が1か月で完治される例もありますが、残念ながらそういう患者さん・そういう癌ばかりではありません。まだまだ研究を進めなければならない分野で、それだけにやり甲斐がありますね。

攻撃する側のリンパ球を強くする研究をしているわけですが、制御性Tリンパ球を抑える研究とうまく噛み合えば、もっと成果が出ると思います。

Tリンパ球は癌を攻撃する際に目印を目当てにするんですが、この目印を我々は腫瘍抗原と呼んでいます。その代表例であるmart―1を発見した、慶應の先端医科学研究所で所長をされている河上裕教授は、九大の神庭重信教授(=昨年3月20日号に特集記事)のテニス仲間という話ですが、河上教授と私は高校の同級生なんですよ。

私は消化器内科の医者で、ここに来るまではピロリ菌や胃癌・大腸癌の研究などをしていました。当初、癌幹細胞には懐疑的だったのですが、アメリカに留学して胃癌を研究していたある日、癌幹細胞を確信するできごとに出会います。ちょっとした培養細胞なんですけど、癌細胞がグループに分かれたんです。抗癌剤を入れたら明らかな差が出たので、それはもう、衝撃的でしたね。幹細胞じゃない方はどんどん死んでいくのに、同じ量でも効かないグループがいる。白血病の世界ではもう不動の地位にありそうだとは考えていましたが、どうやら胃癌にもありそうだぞ、と震えました。

第1内科の教授である赤司浩一先生が癌幹細胞の研究の第一人者であり、私はそれで2年半前に九大に来ました。

研究者は一般的に、自分の手で研究してみないと信用しない方が多くて、今でももちろん癌幹細胞に懐疑的な方はたくさんいらっしゃいますが、最近ではコンセンサスになりつつありますね。

今後は免疫細胞を使って癌幹細胞を治療する研究に取り組みたいです。

私は37歳で医者になりました。数学が得意で東大の数学科に行きましたが、数学者になる夢に挫折し、卒業後は保険統計の仕事をしていたのです。でも数学があまり関係ないので仕事にはあまり興味が持てなかったです。そのころ利根川進さんのノーベル賞受賞があって、生命科学や医学の研究に興味を持ちました。京大の数学者、望月新一教授のABC予想は興味深いですが、今では数学よりも医学研究の方が面白く感じます。混沌としていて、パラダイムシフトも体験できますから。

趣味はクラシックを聴くことです。昔ヴィオラを弾いてたことがあって、オーケストラが好きです。特にブラームスやワーグナー、マーラーなんかが好きですね。哲学があるというか、深くズッシリする感じがします。

神戸生まれの東京育ちですが福岡は食べ物がおいしくて、豚骨ラーメンが好きです。温泉めぐりも大好きで、原鶴や嬉野、別府などを訪れました。この点は黒木先生とご一緒ですね。


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