精神科医の松木邦裕氏が記念講演
NPO九州大学こころとそだちの相談室が11月23日、6周年記念特別講演会を、福岡市早良区の九州大学西新プラザで行なった。
共催は九州大学大学院人間環境学府附属総合臨床センター、九州大学人間環境学府臨床心理学同窓会。後援は九州大学大学院人間環境学研究院、福岡県臨床心理士会。
参加対象は対人援助職(心理職、医師、看護士、教師、福祉職など)と、それを目指す学生で、参加数は200人ほどだった。
講師は京都大学大学院教育学研究科臨床心理実践学講座教授で精神分析家の松木邦裕精神科医。司会は久留米大学の徳田智代教授が務めた。
松木医師は、心と脳は異なるという見解を示し「私たちは、私たち自身の心を知っている範囲でしか、相手の心を知ることができない」と、自身の心を見つめる重要性を述べたうえで、他者の心を理解するための方法と注意点を説明し、「心を知ることは情緒体験だから、自身の精神衛生には悪い仕事」としつつ、健康な心とは「喜びや楽しみを体験できると同時に、心の痛み(悲哀・罪悪感・怖さ・無力感)も感じられる心」のことで、モーニングワーク(喪失体験を受け容れようとする心の作業、痛みを見つめて生きること)が、心の健康につながると説いた。
講演後に次の質疑応答があった。
質問者「自閉症でうそがつけない生徒がいたが、その生徒が母親をだまして学校をサボった。私はよろこんだが、母親には何と言うべきだったか」=高校教師の男性。
松木氏「うそは成長。立体的な心を持った証で、よろこぶべきことだが、母親に伝える場合は、母親の性格を考慮すべきだ。困った子供になったと考えるかも知れないし、傷ついてがっかりするかも知れない。『自分を大事にすることができるようになった』など、達成している事実にどう評価の言葉を当てはめるべきかを考えるのも、対人援助職の仕事のうちだ」。