臨床心理士の想い8 【坂梨圭】

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

社会のニーズの変容(2)

日進月歩の情報化社会である。情報ツールは進化し、もはやついていけないが、Windows8の機種が発売されると買ってみたくなる。Facebookも便利だと思う。電子新聞や電子書籍も便利だが、アナログの世界で育った私には、やはり紙媒体で読まないと落ち着かない。

さて、私はずっと朝日新聞の購読者であり、朝日ジャーナルは、定期購読者だった。朝日ジャーナルはジャーナリズムの神髄が垣間見られ、社会の深層をえぐり出す記事もあった。しかし社会のニーズに合わなくなったのか、ずいぶん昔に廃刊になった。社会のニーズに合わないものは淘汰される宿命なのだ。

マスコミが社会のニーズを創り出す場合もあるが、これだけ情報が氾濫すると何が本当かも分らなくなる。社会のニーズ、提供する側からすれば、売れるか売れないかがその判断基準になる。テレビの視聴率もそうだ。

週刊朝日10月26日号の橋本徹大阪市長の記事には強い不快感と憤りを覚えた。橋本市長のやり方は賛否両論あってよい。

「強力なリーダーシップ」か「独裁者」かの二元論も含めて、彼のやり方を自由に批判できるのが民主主義の根幹だ。そして編集部の考え方を掲載することも自由である。しかしそこには「人権を守る」という最低限のルールが必要なはずである。

真実を暴くのと「人権を守る」のとは、紙一重の部分もあるが、著名なノンフィクション作家と取材班の記事は、明らかに人権意識に欠けたタイトル・記事の内容だった。抗議を受けるとすぐに11月2日号に、通り一遍の謝罪文を載せただけで終わっている。

しかしマスコミやネットで流された記事は消えない。それを読んだ人々の心の中に残ってしまう。どのような経緯でこの連載が組まれたのか、編集部の人権教育はどのようにされていたのか、作家や記者の人権感覚はどのようなものか、記者会見で明らかにしてもらいたいが、テレビで若干報道されただけで記者会見を要求するような報道もなかったように思う。

事件が起こるたびに記者会見やしつこい取材で心に傷を負う人たちは多い。中には会見の心労で自殺する人もいる。危機管理の講座の中には記者会見の開き方まであるほどだ。

危機管理で見事だったのは、個人情報漏洩事件を起こしたジャパネットたかたである。すぐに社長が会見を開き、事実が明らかになるまで営業をストップすると明言し、半年以上、営業活動をしなかった。それが信頼を得て、その後の業績はご承知の通りである。

ジャーナリズムは人権、最終的には人々の命を守るためにあると思う。私たち臨床心理士は心を守るためにカウンセリングを行なうが、これも「生命を守る」ことが究極の目的だ。自殺の報道がされるたび、私たち臨床心理士のところに自殺の相談が来ることもある。

自殺を予防する自殺事例報道のあり方についてWHOは①写真や遺書を公表しない②使用された自殺手段の詳細を報道しない③自殺の理由を単純化して報道しない④自殺の代わり(alternative)を強調する⑤ヘルプラインや地域の支援機関を紹介することを勧告している。しかし日本は自殺の方法まで報道するため、同様の方法で自殺する人が続出する。マスコミの責任は大きいと思うが、「それは、事実を知りたいという社会のニーズがあるから」という答えがおうむ返しに返ってきそうだ。結局は、ジャーナリストの人権意識のあり方をもう一度問い直すことが必要であろう。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る